浦和レッズが3度目のACL王者に輝く! 選手の背中を押したのは5万人を越えるサポーター

■3度目のACL王者に輝いた浦和レッズ!

この優勝を物語にするなら、語り出しはどのシーンにすればいいのか。

契約満了になりながらも劇的なゴールで2021年天皇杯の優勝を勝ち取り、ACL出場権を残してくれた槙野智章選手と宇賀神友弥選手がトロフィーを掲げた歓喜の瞬間なのか。

それとも「ACLを獲りたい!」との想いで、まだまだ世界で闘える実力がありながら浦和レッズに来てくれた酒井宏樹選手の決意なのか。

興梠慎三選手がゴールに近づくことすらできず、西川周作選手が失点を喫し、関根貴大選手がカリージョ選手にこれでもかとボロボロにされたACL2019の決勝かもしれない。

大卒ルーキーやJ2所属だった選手たちを引き連れてリカルド・ロドリゲス監督が浦和に来た2021シーズンだって、この優勝の大きな伏線です。

それほどたくさんの人の想いが合わさって勝ち取った優勝だと思います。それはもちろんフロントも含めて。Jリーグで結果を残した選手ではなく、ヨーロッパで活躍する優秀な外国人選手たちを見つけて次々と補強。彼らの活躍なしでは絶対に優勝はありえませんでした。

アウェーでの第1戦を1-1で引き分け、ホーム埼玉スタジアム2002で行われる第2戦。0-0の引き分けでも優勝できるという展開になったとき

「油断してはいけない」

ということは誰もが言っていましたが、一方でアレクサンダー・ショルツ選手とマリウス・ホイブラーテン選手がゴール前に構えている状況で0-0でもいいなんて、これ以上ないアドバンテージであると僕は感じました。センターバックがこの2人なら安心して引いて守ってカウンターを狙える。

ただ、フロントに関しては思うところもありました。正直、僕はリカルド・ロドリゲス監督が好きだったし、リカさんが監督を続けていてもこの大会で優勝できたとは思っています。(昨シーズン終了後に浦和レッズはリカルド・ロドリゲス監督を契約解除、スコルジャ監督を招聘した)

しかし、リーグ戦で勝ち点を積み重ねながら、短時間でチームを掌握し、ACL優勝に導いたスコルジャ監督の手腕はすごいの一言です。

リーグ開幕戦のFC東京戦では、一体感のないハイプレス戦術でサポーターを不安にさせましたが、やりたいサッカーが短期間では仕上がらないと判断すると、即座にリカルド監督が積み上げたサッカーをベースに微調整を図る柔軟性。スコルジャ監督は名将です。

もちろん連れてきたフロントも素晴らしいし、それで勝てるようなサッカーを2年間で選手たちに根付かせていたリカルド監督の手腕もさすがでした。リカさん、第2戦の埼スタに来ていたそうですね。

おそらく、たくさんのサポーターから感謝の言葉を伝えられたんじゃないでしょうか。それほど魅力的な素晴らしいサッカーを見せてくれました。

■第1戦は700人のサポーターが現地で背中を押した

第1戦の会場はキング・ファハド国際スタジアム。

完全アウェーのように見えたスタジアム、試合終盤に響いていたのは満員のアル・ヒラルサポーターの声援ではなく、700人の浦和レッズサポーターの声でした。自分も一緒に現地で闘いたかったからこそ、ありがとうという気持ちで家で応援していました。

現地の700人のサポーターに後押しされたレッズは、アジア最強の名をほしいままにするアル・ヒラルに押し込まれる展開でしたが、どんなに押し込まれても雰囲気に飲まれなかった選手、サポーターはさすがでした。

なかでも4年前の決勝で同じくアル・ヒラルと対戦し、完敗を味わった選手たち……西川選手、関根選手、興梠選手の獅子奮迅の活躍ぶりは凄まじかったです。

『思う一念岩をも通す』

なんて「それだけで勝てたら苦労しないよ」とプロスポーツを見てればわかっているつもりですが、気持ちがプレーにもたらすもの、迷いのないプレーぶりは4年前のあの悔しさがあったからこそだと感じました。

また関根選手とともに中盤で奮闘した伊藤敦樹選手もまた、浦和レッズの下部組織出身であり、浦和サポーターでした。

途中出場の荻原拓也選手(レッズユース)や安居海渡選手(浦和学院出身)、早川隼平選手(レッズユース)も出色の出来でしたが、彼ら5人に共通して言えるのは、過去の決勝をサポーターとして見てきていたということ。

レッズサポーター・ファミリーにとって過去のACLの記憶というのは、本当に鮮明で心が熱くなるものなんです。

過去のコラムで、全北戦は浦和の街と歴史の勝利ということを書きましたが、彼らが浦和という街で育ったことも、この試合を引き分けることができた要因のひとつのように思えます。

再びアジア王者の栄光を…ACL決勝に臨む浦和レッズの歴史と文化の勝利を紐解く | カカロニ・すがやの“熱”Football Watch! | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ)( https://wanibooks-newscrunch.com/articles/-/4230 )

そして、興梠選手のプレーは36歳にして、未だ日本最高レベルのFWであることを見せつけました。あれ? でも、過去のアル・ヒラル戦ではCBに割と潰されていたよね……。「興梠でも収められないDFがアジアにいるんだ」って思ったんですよ、当時は。

そのサウジのCBコンビがW杯でボコボコにやられているのを見て「世界は広い……」と思った記憶が……。

興梠選手といえば、学生時代はやんちゃで「ろくに練習もせずに試合の日だけ来て出場していた時期もある」なんて本人も語っていましたが、シーズン前からこの試合に向けて本気で気合い入れたら、これくらいできちゃうってこと……?? 本当に底が知れない人です……。

そして、興梠選手と共に、局面勝負ではほぼほぼ勝利してくれていたのが、DFのショルツ選手と酒井宏樹選手。格上との戦いにおいて、局面でほぼ確実に勝てる場所があるということのどんなに助かることか。しかも三箇所も。

これがわかっただけでも第2戦、埼玉スタジアム2002なら勝てると思えた試合でした。

■スタジアム全体から降り注ぐ「ウィーアーレッズ!!」

そして迎えた第2戦。ホーム・埼玉スタジアム2002。

4年前に対戦したときほど強くない、というのがアル・ヒラルに対する率直な感想でしたが、それでも純粋に実力で言えば6:4でレッズより向こうが上でしょう。

しかし、それでも負ける気がしないのは埼スタでの一発勝負だからでしょうか。5万3000人を越えるサポーターの声が、手拍子が、スタジアムを飲み込んでいきます。

僕も子どもを実家に預けて、妻と2人でスタジアムに観戦に行きました。今季はアウェーユニフォームを購入した僕たちですが、打ち合わせすることもなく赤いユニフォームを着て、今季のユニフォームはバッグに。ミルクボーイさん的に言えば、スタジアムはなんぼ赤くてもいいですからね。

▲妻と一緒にスタジアムへ応援に行くすがや

▲ユニフォームを掲げる妻

試合前・ハーフタイムで2つも用意されていたカッコ良すぎるビジュアルサポート(Twitterでコレオって書いたら指摘がたくさんありました。優勝を勝ち取った夜くらいやめてよ笑)『歌え浦和を愛するなら』のチャントで縦揺れするスタジアム。

キックオフと同時にスタジアム全体から降り注ぐ「ウィーアーレッズ!!」コール。こんな雰囲気を作れるチームは、日本で浦和レッズだけと胸を張って言えます。

相手の狙いは、左サイドバックの明本考浩選手のところ。酒井選手もショルツ選手も欧州チャンピオンズリーグレベル。マリウス選手もアジアでは抜けている存在となると、まぁ消去法でそうなるよね、という感じ。明本選手もそれは折り込み済だったのでしょう。

4年前、カリージョに左サイドを蹂躙された関根選手とのコンビで、しっかりと跳ね返していきます。明本選手は熱くなってるように見えて、頭は冷静にプレーしているクレバーなところが大好きです。

一方で、審判へのアピールなど過剰に神経質になっているアル・ヒラルの選手たち。うまいのはアル・ヒラルだけど、心にゆとりがないのもアル・ヒラルという感じ。

浦和レッズのビッグチャンスは、酒井選手から興梠選手へのクロス。イブラヒモビッチのようなアクロバティックな体勢からのシュートはバー直撃。あれに足が伸びるってベテランの動きじゃないのよ。

ピッチ上で浦和が優位に立てている二箇所でチャンスを作ります。しかし、相手にも別格のプレーを見せる選手が。

僕「しかし、あのボランチうまいな。初戦はいなかったよね、あの19番」
妻「いや、カリージョじゃん」
僕「!!?」

年齢とともにポジションを下げて、それでもうまいライアン・ギグス(マンチェスター・ユナイテッドで活躍)タイプの選手かい!! カリージョ! 敵ながら好きな選手だぜ!!(余談ですが、僕はロシアW杯でペルー対フランスを生で見て、その夜、ペルー人7人と8人部屋で相部屋したこともあるのでペルーびいきである)

そんななか、とにかく耐える前半。技術が武器の小泉佳穂選手が守備に奔走します。小泉選手は、ああ見えてディフェンスの立ち位置やプレスの掛け方が抜群にうまい。なんというか前橋育英高校出身って感じ。

テクニックが売りのドリブラー・大久保智明選手も、自陣深くから敵陣ゴール前までボールに触れずとも走り回る。

向かい風でなかなかラインを上げられないなかで、それぞれの選手が仕事をこなして、後半へ。そして2000文字前後で、と言われているこのコラムも、ここにきて3400文字へ。

■そして歓喜の瞬間は訪れる

後半開始早々、歓喜の瞬間が訪れます。

岩尾憲選手のフリーキックからマリウス ホイブラーテン!!

結果はオウンゴールとなりましたが、ピンポイントのボールに完璧なヘディングでした。

その後は向かい風になった相手キーパーのキックが全然飛ばず

「ああ、前半の周作さん、めちゃくちゃすごかったんだな」

という呑気な感想と

「うわぁあ!!! ナイス周作!!!!!」

を繰り返し、終了間際にはスタジアム中からピッチを包むように

「ウィーアーレッズ!!」

を叫び、歓喜の時を迎えました。

この試合を物語にするなら、冒頭を何にするかの答えはまだ出ませんが、ラストシーンは酒井選手と西川選手が一緒にトロフィーを掲げたシーンでしょうか。

それとも4年前の悔しさを知る興梠選手、西川選手、関根選手、柴戸海選手、岩波拓也選手が笑顔でカメラに向かってトロフィーを掲げて言った

「リベンジ!!」

でしょうか。

興梠選手がインタビューで言った「このスタジアムで見てる、マキ(槙野)、阿部(勇樹)ちゃん。やったよ!」もよかったですね。

いや、やっぱり、過去にタイトルを取ったあと、サポーターと祝杯をあげて、締めに牛丼を食べにきて店内のお客さん全員の会計をご馳走したことがある興梠選手が、今回も

「今日は浦和の街で会いましょう!」

と言った結果、サポーターが殺到して米がなくなってしまい、緊急閉店した吉野家浦和仲町店ですかね。

そして、物語はクラブW杯へ続きます。浦和レッズの旅路はまだまだ終わりません。

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