ロッテの快進撃を支える吉井理人監督とパ・リーグ連覇のオリックス・中嶋聡監督の手腕

■世界一の「参謀役」とロッテの監督として手腕が光る吉井理人

まずは今シーズンから千葉ロッテマリーンズの監督を務めている吉井理人氏だ。WBCでは日本代表の参謀役としてチームを世界一に導いた。

1次ラウンドでは日本代表の投手陣を試しながら調子を吟味し、準々決勝以降は調子と実績のバランスを考えながら、投手をマネジメント。これは常に一歩先を考えながら、一発勝負のプレッシャーも考えたうえでの選択だろう。

▲2023WBCで投手コーチを務めた吉井理人氏 写真:西村尚己/アフロスポーツ

大会前には国際大会のリリーフの運用の難しさにも言及しており、準決勝は佐々木朗希と決勝の先発として予想されていた山本由伸を第二先発として登板させ、この2人で8回途中まで投げ、湯浅京己と大勢が残りのイニングを投げ切った。

決勝の先発は、この大会で初めて今永昇太を起用。今永と2番手の戸郷翔征が2イニングを投げ、その後は高橋宏斗や伊藤大海、大勢、ダルビッシュ有、大谷翔平を1イニングずつとブルペンデーのような形で総力戦を制した。

WBCでは、最強投手陣の上に立つ「参謀役」として、吉井氏の状況における最適な起用法のおかげで、優勝という最高の結果となった。

この吉井氏は、ペナントレース開幕後も、マネジメント力の高さを見せている。チーム防御率は、5月16日終了時点で12球団1位となる2.63を記録。

試合を締めるクローザーをメジャーリーグから復帰した澤村拓一や、もともとクローザーとして活躍していた益田直也を点差や試合の状況などを見ながら、起用法を分けている。「きょう打順を見て、どれが勝ちきれるパターンかなと見て、これがいいと思ってやりました」とコメントをしているぐらいだ。

WBCと同様にリリーフ陣のマネジメントのうまさも際立っている。

エースの佐々木は山本由伸に投げ勝つなど、開幕から伝説級の活躍を見せている。4年目ということもあり、今シーズンはフル回転での活躍も見られるだろう。

この佐々木に対しては、おそらくこれまで見たことがない素材の投手のため、吉井氏の起用法は慎重になりすぎるときもあるだろう。ただ、世界一に導いた投手のマネジメント術と佐々木を中心とした投手陣で、ロッテの快進撃に期待していきたい。

■両リーグ最速20勝到達の中嶋聡率いるオリックス

中嶋聡氏が率いるオリックスは、2021年と2022年のパ・リーグ連覇と悲願の日本一に輝いている。2021年に関しては、前年最下位からの逆襲だった。

中嶋氏については、投打に渡る運用からベンチワークまで素晴らしいものがある。

2020年時点で先手の継投策やベンチの雰囲気も良くなり、低迷機から抜け出す兆候は見られた。そのなかで、2021〜2022年はエース山本由伸と主軸の吉田正尚を中心としたチームビルディングでパ・リーグの覇権を握った。

さらに、2軍時代から見ていた杉本裕太郎の長打力を見抜いて中軸に抜擢して、遅咲きながらもブレイク。

宗佑磨に関しても、肩の強さや守備力の高さを評価して、監督代行だった2020年からは、外野手から三塁手として起用するなど、2軍時代の経験をうまく生かした。福田周平に関しては宗とは逆で、当初は内野手だったが、出場機会を求めて外野手へコンバート。

その結果、負担が重い二塁手時代よりも打率は平均して一分ほど上がった。さらに、福田をコンバートをしたことにより、内野手の起用法にも幅が広がった。紅林弘太郎や太田椋の出場機会が増え、大城滉二や安達了一、西野真弘らは二塁手として起用される機会が増えた。

この安達に関しても、年齢的な部分も考慮されて2021年に遊撃手から二塁手にコンバートされている。さらに、中川圭太も内外野をユーティリティに守りながら、出場機会を増やしていった。

また捕手に関しても、昨シーズンまでは投手との相性で若月健矢と伏見寅威を併用し、頓宮裕真は打撃を見ながら一塁で起用。

打線に関しては、シーズンを通して計算が見込める吉田正を中心に組み立て、打順は4番に置くときもあったが、3番に置いたほうがスムーズに得点できる場面が多々あった。

このように、現在の主力とも呼べる野手陣をコンバートや良いところを伸ばすようにやりくりしながら、レギュラークラスの底上げを図った。

2022年は外国人選手が不在や杉本が不調のなか、現有戦力の力を最大限に生かすかのように、レギュラーシーズン143試合で打順は141通り、日本シリーズでも7試合で6通りというバリエーション豊富な打線を築き日本一に。

投手陣では、2021年と2022年でリリーフ陣のなかで活躍した投手が異なるも、うまくやりくり。その状況で一貫していたのは、基本的には3連投をさせない方針。投手運用で騒がれている今だからこそ、このマネジメントが活きた。

先発陣は2021~2022と山本由伸を中心に宮城大弥や山崎福也、田嶋大樹、山岡泰輔を中心にローテーションを回した。

リリーフ陣を振り返ると、2021年はクローザーの平野佳寿を中心に、タイラー・ヒギンスや富山凌雅、山田修義、K-鈴木、漆原大晟、比嘉幹貴、能見篤史、吉田凌といった投手陣をうまくマネジメントしてまとめあげた。

2022年は、ベテランの平野と比嘉を中心に阿部翔太、ワゲスパック、山崎颯一郎、宇田川優希、近藤大亮、黒木優太、本田仁海、ジェシー・ビドルと前年とは異なるメンバーをまとめて連覇。

いずれも、シーズン終盤までもつれる優勝争いだったが、最後の最後にリーグ優勝を果たした。

今シーズンは、ここ2年と比較して投手陣が打ち込まれるなど苦しんでいるが、チーム打率と得点に関しては、5月16日終了時点で12球団1位を記録。吉田がメジャーリーグに移籍し、福田や紅林が出遅れているなかで、素晴らしい運用力を見せている。

粗さはあるものの、杉本はホームランがリーグトップクラスを記録。新加入の森友哉も怪我で離脱をしているものの、離脱前はリーグトップクラスの打率を残していた。

この森の加入により、レギュラー争いが激化した捕手陣だが、若月健矢は開幕から好調をキープ。

また、開幕から好調の茶野篤政の台頭もあり、好調のロッテやソフトバンクと対等に戦えている。

投手陣は、開幕投手を務めた山下舜平大が大活躍。現段階では新人王最有力候補と言ってもいいだろう。エース・山本由伸の勝利数がなかなか伸びない状況だが、この山下の活躍により、うまくカバーできている。

このように、WBCに出場した実績組の疲労も考えられたチーム構成が見受けられる。

WBCに選出された宇田川や新戦力の森が不在の状況で首位を走っているが、シーズンは長期戦のため、2021や2022年のように体制を整えながら戦っているのだろう。

ここ2年はシーズン終盤に追い上げて連覇を果たしていたが、今シーズンは序盤からペナントレースを優位にしている。

現在、パ・リーグ首位争いをしている中嶋オリックスに注目していきたい。

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まだ序盤戦ではあるが、白星を重ねている両チーム。今年の優勝争いはこの2チームが鍵を握りそうだ。

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