攻守におけるチームの要! 古田敦也・城島健司・阿部慎之助…21世紀最強捕手は誰だ?
2023年05月25日 07時00分WANI BOOKS NewsCrunch
捕手は野球というスポーツにおいて要となるポジションである。投手の投げたボールの捕球はもちろん、相手バッターとの駆け引きや味方へのサイン出し、審判とのコミュニケーションなど仕事は多岐にわたる。
もちろん、守備だけでなく、打者としての仕事もある。近年は分業制を採用するチームも多くなってきた捕手。それだけ負担の大きいポジションとも言える。今回はそんな過酷なポジションを長年務め、攻守ともに素晴らしい成績を収めた3選手をみていこう。
■1990年代からヤクルトを支えた「球界の頭脳」古田敦也
21世紀初頭までトップを走っていたのは、野村克也氏の愛弟子である古田敦也だ。古田に関しては、21世紀に留まらず、平成の捕手では誰しもが認めるナンバーワン捕手と言ってもいいだろう。
持ち前の野球脳の高さで、投手陣のリードはもちろんのこと、チーム状況によって打撃スタイルを変えていたのもわかる。そのため、30本塁打でキャリア最多の86打点を記録したシーズンもあれば、本塁打は1桁で終わったものの、同様に最多である86打点を記録したシーズンもあった。
打撃面では、セ・リーグ初の捕手として首位打者(打率.3398)を獲得し、通算打率.294を記録。守っても、盗塁阻止率は歴代最高の.462を記録しており、歴代的に見てもトップクラスなのがわかる。
21世紀に入る頃にはベテランの域に達していた。2001年はシーズン中に打球を追った際、フェンスにぶつかり、左膝後十字靭帯を損傷する全治3週間の重傷を負った。この状況のなかで、首位打者に輝いた松井秀喜とタイトル争いや巨人とのデットヒートを繰り広げた。
首位打者は松井に譲ったものの、巨人の追い上げがあったなかで、シーズン終盤に復帰した古田の存在感は大きく、見事にチームをリーグ優勝に導いた。また、このシーズン36歳という年齢ながら、衰え知らずの盗塁阻止率.488を記録した。
この古田のリードによって、藤井秀悟や入来智、前田浩継はキャリアハイの成績を記録。当時ウィークポイントであった先発陣に関しては、開幕前時点で石井一久以外は計算できない状態だったが、古田のリードによって、シーズン通してローテーションを守れるレベルにまで、底上げができたといっても過言ではない。
中継ぎ・抑えは枚数が豊富だった。リリーフの高津臣吾を中心に、五十嵐亮太や石井弘寿、移籍後に復活した島田直也、河端龍、山本樹、松田慎司と7人を揃えた。ブルペン陣が崩壊していた前年度王者・巨人との差を広げられた要因は、そこに大いにあったと考えられる。
日本シリーズで対戦した大阪近鉄バファローズの長距離砲であるタフィ・ローズや中村紀洋はもちろんのこと、得点圏打率がリーグ1位を記録した磯部公一や長打力がある吉岡雄二を徹底的にマークした。この古田の徹底したリードが、シリーズの勝敗を大きく左右することになった。
また、日本シリーズのMVPに輝いたのは古田。打撃面では、チームトップの打率.500、1本塁打、3打点を記録。
守備面でも、投手陣の力を最大化させるようなリードが冴えわたった。足の故障もありながら、文句なしの活躍を見せた。古田がリードをするヤクルト投手陣は、シリーズを通してローズにこそ打率.333、2本塁打、7打点と打たれたものの、中村紀を18打数2安打、磯部を16打数0安打、吉岡を15打数1安打に抑え込んだ。
ペナントレースの戦いは長丁場のため、猶予期間のような形で中心選手の調子が上がるまで待てたが、短期決戦は復調する前に終わってしまった。さらに、投手陣の力量の差も顕著にあらわれた。チーム防御率で見てもヤクルトは2.66を記録しており、対する近鉄は5.73。
ヤクルトは、石井一以外の先発投手を長いイニングを投げさせずに、小刻みな継投策でリリーフ陣に任せる形で勝利を重ねる。フルシーズンの活躍はなかったものの、ホッジスやニューマンといった外国人投手をうまく起用した点も非常に大きかった。
攻守にわたりチームを牽引した古田の活躍はもちろんのこと、短期決戦における投手陣の重要さがわかるシリーズだったのではないだろうか。このシーズンだけを見ても、長期的なリードが必要とされるペナントレースから、短期決戦の日本シリーズまでツボを抑えたリードができていることがわかる。
安定して結果を残せる打力はもちろんのこと、球界の頭脳と言われたリードや頭抜けているスローイングからフレーミング、ブロッキングなどを含めても、古田がこの時代の捕手として最高峰ではないだろうか。

▲安定した打力と守備力、頭脳を兼ね備えた捕手だった古田敦也 写真:井上博雅/アフロ
■メジャーでも活躍し日本を世界一に導いている城島健司
次は、メジャーリーグでもプレーし、2009年のWBCでは世界一に導いた城島健司だ。
城島の成長には、工藤公康は欠かせない存在だが、工藤が移籍したあとの城島はさらに成長を遂げた。
もともと打撃力と肩の強さには定評のある選手だったため、高卒3年目で打率3割を記録し、2002年には盗塁阻止率.508を記録した。高卒3年目で打率3割に関しては、城島以降は坂本勇人しか達成していない。盗塁阻止率に関しても、パ・リーグ歴代3位に入る記録だ。
工藤に鍛えられたリードを活かし、ホークス投手陣を引っ張った。その結果、日本一に輝いた2003年は打高のシーズンだったにも関わらず、リーグで唯一のチーム防御率3点台を記録。さらに、打撃面では個人タイトルこそは逃したものの、打率.330 34本塁打 119打点を記録し、シーズンMVPを獲得した。
また、翌年のアテネ五輪では、負担が大きい捕手でありながら日本代表の4番に座り、銅メダル獲得に貢献。
メジャーリーグ移籍後も、打者が不利と言われているセーフコフィールド(現T―モバイルパーク)を本拠地としながら、ルーキーイヤーに19本塁打を記録。翌年は盗塁阻止率.465を記録。これは両リーグでトップとなる成績であった。
2009年WBCでは、日本代表の正捕手として連覇に貢献した。2次ラウンドのキューバ戦では、国際大会からメジャーリーグでプレーをした経験値の高さをうまく活かした。キューバは1回一死からミチェル・エンリケス、フレデリク・セペダの連打で松坂を攻め立てる。しかし、先発の松坂大輔が踏ん張り、後続を打ち取りピンチを凌ぐ。
ただ、この回から城島は異変に気づく。キューバのサイン盗みだ。相手がコースなどを伝達していることに気づくと、松坂は試合後に「2回から(捕手の)城島さんが構えたところと、わざと逆に投げた」とコメント。キューバのサイン盗みにも動じず、松坂・城島のバッテリーはキューバ打線を抑え込んだ。
世界トップクラスの日本人投手! 21世紀最強のエースは誰だ? | ゴジキの新・野球論 | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ)( https://wanibooks-newscrunch.com/articles/-/3786 )
古田のような圧倒的なディフェンス力や安定感はなかったものの、古田に勝るパワーや国際大会からメジャーリーグの経験を活かした城島は、間違いなく21世紀を代表する捕手の1人だろう。
■巨人軍歴代最高捕手・阿部慎之助
次は巨人軍を3度の日本一、8度のリーグ優勝に導いた阿部慎之助だ。
ルーキーイヤーに、山倉和博以来となる23年ぶりの快挙となる開幕スタメンマスクを被った。
2年目となる2002年のシーズンは、正捕手として127試合に出場。巨人軍の捕手としては、山倉和博以来の捕手による規定打席に到達し、3番を任されるなどで打率.298、18本塁打、73打点と大卒2年目としては、驚異的な打撃成績を記録。リーグ優勝と日本一に大きく貢献した。
2003年から2006年は故障や怪我に苦しんだが、6年目からは守備面が向上。リーグ最多の捕殺と盗塁阻止率を記録した。さらに、2003年から2005年は4点台だったチーム防御率も3点台に改善されて、リードの能力も向上の兆しが見えていた。
2007年からは主将となり、巨人軍第72代4番になったことや、2度目の30本塁打と自身初の100打点を達成。守備面でもリーグ2位の防御率3.58を記録するなど、前年よりもさらに投手陣のリードが良化され、リーグ優勝に大きく貢献。
その後、2009年から数年間は阿部のキャリアで全盛期を迎えていた時期だったのではないだろうか。2009年はリーグ2位の32本塁打とリーグ1位の長打率、OPSを記録して連覇に貢献した。さらに、巨人の捕手で史上初となる通算200本塁打を達成。
個人タイトルはなかったものの、投手陣を牽引して防御率2点台に引き上げて、トップクラスの打撃成績を残したため、MVPに相応しいものだったに違いない。
日本シリーズでも、第5戦で日本ハムファイターズの武田久からサヨナラ本塁打を放ち、第6戦では武田勝から決勝打を記録。日本一に大きく貢献し、文句なしのシリーズMVPを獲得した。
2010年は10年連続二桁本塁打を達成し、野村克也や田淵幸一に次ぐ歴代捕手では3人目のシーズン40本塁打(44本)も達成。シーズンを通して、打率.281、44本、92打点、OPS.976の成績を残した。
個人的に印象深い場面は、広島戦の40号となる本塁打を放ったシーン。また、守備面では守備率.999、盗塁阻止率は.371の成績を残し、セ・リーグ1位を記録した。
2012年はキャリアハイを記録したシーズンであった。月間MVPは6月、8月、9月の3度獲得。打率は統一球でありながら捕手としてシーズン歴代最高打率(.3404)を記録し、文句なしの首位打者を獲得。打点もキャリア最高となる104打点を記録し、打点王を獲得して二冠を達成した。
リード面でも投手陣を支えて、チーム防御率2.16を記録した。原辰徳監督の「(阿部)慎之助のチーム」のコメント通り、攻守にわたり大きく貢献し、交流戦優勝をはじめ、リーグ優勝と日本一、クライマックスシリーズ制覇、アジアシリーズ制覇の5冠に導いた。
打撃型捕手のイメージが先行していたこともあり、リード面で過小評価されていたが、巨人軍歴代最高捕手、そして日本を代表する選手だったのは間違いない。
MLBで本塁打争いや4番起用された打者も! 21世紀最強のスラッガーは誰だ? | ゴジキの新・野球論 | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ)( https://wanibooks-newscrunch.com/articles/-/3806 )
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21世紀を代表する捕手を3人紹介してきた。それぞれ特徴があり甲乙つけがたいが、守備面を含めて総合的に判断すると、「球界の頭脳」と呼ばれた古田敦也が捕手として一歩リードといったところだろうか。
とはいえ、城島健司、阿部慎之助の打撃力は捕手のレベルを超え、凄まじいものがあった。
今後、とてつもなく高い壁ではあるが、この3人を越えるくらい攻守ともに優れた能力を持つ捕手の台頭・出現があれば、日本球界はさらに盛り上がることだろう。
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