中村俊輔が「海外の観客は目が肥えている」と語るワケ

昭和から現代までのサッカー用語や、サポーターから広まった用語などJリーグにまつわる750ワードを、Jリーグウォッチャー・平畠啓史がイラストを交えてわかりやすく説明した『平畠啓史の日本一わかりやすい Jリーグ語辞典』を上梓した。

発売を記念して、巻末に掲載されているJ1・横浜FCでプレーする中村俊輔選手との対談から、惜しくも書籍には載せきれなかった未公開部分をお届け! 中村選手が海外でのプレーで感じたことや、日本代表で長い間ともに戦った“あの選手”について語ってもらった。

■セルティックでは観客の目を感じながらプレーしていた

平畠 海外では、これまでセリエA(イタリア)のレッジーナ、スコティッシュ・プレミアリーグ(スコットランド)のセルティック、ラ・リーガ(スペイン)のエスパニョールでプレーされてきましたね。

中村 はい。どのチーム、どのリーグでも、思ったことはいろいろあるんですけど、セルティック在籍時に感じたことは、観客から「すごく見られているな」ということですね。股抜きをしただけでも盛り上がってくれるので、プレーしていて非常に気持ちよかった。カメラも、そういうところをちゃんと拾ってくれるんですよ。

平畠 逆に、沸かせるプレーをしても、日本だとそこまで盛り上がらないな、と感じることもあるんですか?

中村 そういうことが多いように思います。ただ、玉乃さん(玉乃淳)の解説では「そこで股抜きしますか!」とか拾ってくれてましたね。

平畠 玉乃さんもスペインでプレーしていたから、そういうところに目がいくのかもしれないですね。

▲日本と海外での観客の違いについて語る2人

中村 国によっていろんな見方があって、例えばスペインや日本では、ゴール前でいいパスを受けて切り返ししたところをディフェンスにクリアされても(プレーの意図を)わかってくれるんです。

だけど、イタリアでは「なんで、すぐ打たないんだよ!」っていう反応が返ってくる。僕がいたのは20年近く前なので古い情報ですけど、当時のイタリアでは、とにかくシュートを打て! と言われていました。

平畠 たしかに、イタリアのフォワードは点を取ることに集中しているイメージがありますよね。

中村 フォワードの一番の役目は点を取ることですから、自分にアシストしてくれる選手を必ずつかんでおきたいんでしょう。ゴールするための動きを繰り返しながら、周りへは自分の受けやすいところへパスしてほしい、と要求されることが多かったですね。

レアル・マドリードに在籍していた当時のクリスティアーノ・ロナウドは、相棒のエジルが退団するとき、会長に噛みついたじゃないですか。ディ・マリアが退団するときもそうでしたけど、その気持ちは理解できるというか。

平畠 いいパスをくれる選手が、自分にとってもいい選手だということだと。絶対的な自分の味方を手放したくなかった、ということですよね。

■ヤットの武器は目に見えないところにあった

平畠 いわゆる“削り”がいちばん強烈だったのは、どのリーグですか?

中村 イタリアですね。リーグによって、ファウルやイエローカードの基準は違いますけど、イタリアは飛び抜けて基準が甘い。だから、中盤での攻防は当たりがとても激しいんです。アウェイのペルージャ戦で後ろからバコーンと刈られたことがあったんですけど、イエローカードも注意も一切ありませんでした。

平畠 でも、めちゃくちゃ痛いんでしょう?

中村 足ごともっていかれたので、かなり痛かったですけど、すぐに立ってプレーを続けました。背負ってボールをもらうと潰されてしまうので、中盤では受けずにフォワードの近くにポジションを取ってこぼれ球を受けたり、トップ下のときはサイドに開いてポジション取りをしたりと、どういう現象が起きるのか考えたりとか、いろいろと試しました。

ヒデさん(中田英寿)はセリエAでプレーしていたとき、ディフェンダーを引きずりながら前へボールを運んでいたじゃないですか。経験したからこそ感じることですけど、すごいですね。

▲イタリアの“削り”の激しさを話す中村俊輔選手

平畠 なるほど。中田さんはイタリアで自分の色を出せていたということですね。

中村 そう思います。あと試合に出続けるためには、本当に理解してくれる仲間がいないとダメなんだと気づきました。

レッジーナでは、モーツァルトっていう左利きのブラジル人選手にいろいろと助けてもらいましたし、セルティックではペトロフっていうブルガリア代表の選手がすごくいい奴だったので助かりました。

平畠 試合に出続けるためには、チームメイトの信頼が不可欠だということですね。

中村 ヤット(遠藤保仁)が必要とされるのは、そういうところだと思います。トップ下だけじゃなく、サイドバックやサイドハーフ、ストッパーともいい関係を築けるからこそ、長く代表にいられたんです。

平畠 監督としても、選手のそういうところは見ていると。

中村 ザッケローニはイタリア人でしたし、そういうところもよく見ていたんじゃないかな。ヤットの武器は目に見えないところにもあると思います。

■いい選手だった人は監督になっても細かい指示をしない

平畠 今まで数々の監督の下でプレーされてきましたが、印象に残っている監督はいますか?

中村 セルティックの監督だったストラカンは、すごくいい人でしたね。選手によって違ったのかもしれないですけど、僕には「エンジョイフットボール!」とか「家族は元気?」と話しかけるだけで、プレーのことは何も言いませんでした。

平畠 一番いいパフォーマンスを引き出すには、どの選手にどういうことを言うといいのか、わかっているということですね。監督によっては、プレーについて細かく指示する人もいると思いますが。

中村 もちろん、それはそれで勉強になりますけど、外国人監督にそういうことを言われたことは一度もないですね。

僕は、試合が終わるとジムに行って、ちょっと負荷をかけるんですよ。海外では試合後に負荷をかけることは基本的にしないみたいで、びっくりされました。監督が「お前らがバーへ行っている間に、ナカは筋トレをやっている。これがプロフェッショナルだ!」みたいな話を、ほかの選手たちにしていたみたいですね。

いい選手だった人で、戦術云々みたいなことを言う人はいないんですよ。フリーキックに関しても(木村)和司さんは、僕に何も言いませんでした。

平畠 監督によって、選手へのアプローチの仕方が全然違うんですね。勉強になるなぁ。中村選手、今回は貴重なお話をありがとうございました!

中村 こちらこそ、ありがとうございました。

▲サッカー愛にあふれる対談となった

中村俊輔選手と平畠啓史氏がサッカー用語について語った対談は『平畠啓史の日本一わかりやすい Jリーグ語辞典』に収録されています。

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〈高本 亜紀〉

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