伝説の「平成・春のセンバツ対決」早実・清宮幸太郎が存在感で勝利を導いた!

伝説の「平成・春のセンバツ対決」早実・清宮幸太郎が存在感で勝利を導いた!

伝説の「平成・春のセンバツ対決」早実・清宮幸太郎が存在感で勝利を導いた!

 2017年の第89回春の選抜大会。高校野球ファンは1人の怪物スラッガーの登場に沸いていた。東の名門・早稲田実(東京)の不動の3番・清宮幸太郎(北海道日本ハム)である。

 清宮は高校入学直後から打線の主軸を任され、この選抜までに80本近くの本塁打を積み重ねていた。それだけに稀代のスラッガーが本番の甲子園でどれほどホームランを量産するのか。その活躍にファンが期待するのも当然だったのである。

 注目の初戦の相手は明徳義塾(高知)と決まり、ファンはさらにざわついた。というのも、同校はかつて星稜(石川)時代の松井秀喜(元・読売など)を5打席連続敬遠したことで知られる知将・馬淵史郎監督が率いているからだ。はたしてあの時の再現があるのか。試合前から明徳義塾の“清宮対策”に注目が集まっていた。

 試合は早実の先攻で始まった。話題の清宮に対して明徳義塾のエース左腕・北本祐斗は予想に反して真っ向勝負を選択。中前打を喫したが無得点に抑え、上々の立ち上がりを見せる。すると打線がその裏に早実の先発・池田徹を攻め、2死満塁のチャンスを作ると6番・今井涼介と7番・近本攻生が連続適時し、3点を先制。投げては北本が2回表と7回表に1点ずつを返されたものの、注目の清宮に対しては外角に徹底してボールを集めて第2打席から第4打席まではノーヒットに抑えていた。

 一方,明徳打線は初回の3点以降、早実の2番手投手・服部雅生に手を焼き、沈黙。それでも8回裏に4番・谷合悠斗がソロアーチを放ち、2‐4。ようやく突き放すことに成功する。あとはエース・北本が9回表を抑えるだけだった。

 だが、ここで早実打線が意地を見せる。7番から始まる下位打線だったが「なんとか清宮に回そう」という思いでつなぐ攻撃に徹し、1点を返したのだ。状況は3‐4と変わって二死一塁。バッターは2番の横山優斗。次の打者はあの清宮だった。当然、勝負の場面である。その横山の当たりはやや強い投ゴロとなって北本の前へ。ファンブルしたものの、足下のボールを落ち着いて拾えば確実に打者走者をアウトにできるタイミングだった。ところがここで“まさか”が起きる。次打者の清宮を意識し過ぎたのか、北本の左手からボールがこぼれ、横山を出塁させてしまったのだ。これで動揺した北本はそこから清宮ばかりか4番の野村大樹にも連続四球を与えて、ついに早実が4‐4の同点としたのである。

 こうなれば勢いは完全に追いついた早実へと傾く。延長10回表に1死から7番・橘内俊治が二塁打で出塁すると、この試合3打点を挙げていた9番・野田優人が中前適時打を放ち、5‐4。この試合、早実が初めて勝ち越したのである。その裏、明徳は2死二塁としたが、早実は9回から登板した3番手の2年生左腕・石井豪がピンチをしのぎ、初戦突破を果たしたのだった。

 この試合、注目の清宮は4打数1安打で打点0ながらもその存在感でチームの勝利に貢献したのである。対して無念にも敗れた敵将は試合後にこんな言葉を残して甲子園を去っている。「ついとるわ、早実には。野球の神様が」。そこにはこの試合のすべてが凝縮されていた。

(高校野球評論家・上杉純也)=文中敬称略=

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