古巣カープに続け! 前田健太がドジャースで狙う「世界一の座」

古巣カープに続け! 前田健太がドジャースで狙う「世界一の座」

ワールドシリーズ進出のカギを握る前田健太(写真:Getty Images)

「良い緊張感の中でできています。特に1年目でそういう中で投げられているのはすごく幸せなこと。優勝できればこの緊張感が良い緊張感に変わると思うので、最後に良かったなと思えるように残りを頑張りたい」

 9月13日、ヤンキースタジアムのブルペンでの投球練習を終えた後、ドジャースの前田健太はいつも通りの爽やかな口調でそう語った。

 14日のヤンキース戦を終えた時点で、ドジャースは81勝63敗。地区2位のジャイアンツに4ゲーム差をつけ、地区優勝、プレーオフ進出を有力なものにしている。このままいけば、前田もメジャー1年目にしてポストシーズンのマウンドに立つ可能性はかなり高い。

 そんなドジャースも、すべてが順調にきたわけではない。シーズンを通じて故障者が続出し、特に前半戦終了間際には大エースのクレイトン・カーショーが故障者リスト入り。その時点で11勝2敗、防御率1.79と完璧だった最強左腕を失い、暗雲が漂った。

 しかし、カーショーが不在だった2カ月半の間、ドジャースは37勝24敗と大健闘。現時点で好位置にいることができるのは、チーム全体の頑張りがあったからこそだった。

「逆境を乗り越えることで評価は得られる。多くの故障者が出る中、それでも良い結果を出したことで、私たちはそんな言葉の意味がよく理解できたと思う」

 デイブ・ロバーツ監督はそう目を細めたが、実際に厳しい状況で投手陣では20歳のフリオ・ウリアス、26歳のロス・ストリップリングといった若手が台頭して急場をしのいできた。そして何より、28歳のオールドルーキー、前田のここまでの働きは素晴らしかった。

 ロサンゼルス出身ゆえにドジャースに精通し、現在はテレビ局「NY1」でスポーツレポーターを務めるザック・タワタリ氏はこう分析する。

「前田はドジャースのファン、関係者が考えていたよりも良いピッチャーだった。制球が優れているだけではなく、自分の持ち球を最大限に生かす方法を知っている。それゆえに、飛び抜けた威力の決め球がなくとも、安定して良い内容のピッチングができる。似ている投手?黒田博樹に共通点が多いと思うよ。かつての黒田同様、今季の前田も過小評価されているくらいだ」

 ここまでの前田は28試合を投げて14勝9敗、防御率3.28という堂々たる成績を残してきた。先発数、投球回数はルーキーの中で1位。7月23日以降全ての先発機会で自責点3以内に抑えている。

 何より、前記通りにけが人が多かったチーム内で、開幕からローテーションを守ってきたことは特筆に値する。前田の存在がなければ、ドジャースが今の位置にいることは難しかったといっても大げさではあるまい。

「嬉しい誤算、若い力の台頭が多かったこともあって、今季のドジャースには良好なケミストリーが生まれている。それこそがメジャー最高の金満チームのひとつであるドジャースに足りないものだった。今年は上位進出の大きなチャンスがあるかもしれない」

 タワタリ氏はそう語り、前田、同じく新人王候補のコーリー・シーガーといった新戦力のおかげもあって、チーム内に良い空気が生まれていると指摘する。

 ドジャースは過去3年連続地区制覇を飾っているが、プレーオフでは2013年のリーグ優勝決定シリーズ進出が最高。過去2年は地区シリーズで敗退しており、勝負弱さが目立っている感は否めない。

 しかし、今年のドジャースは、9月9日に復帰したカーショー、トレード期限に獲得したリッチ・ヒル(今季12勝3敗、防御率1.80)、前田という上質な3本柱をここに来て確立させた。それぞれ耐久力に不安があるが、3人ともが健康を保てば、どのチームにとっても厄介な先発陣と言えよう。それに加え、今季のチームにはケミストリーが宿っているとすれば…?

 タイプ的に似ていると評された黒田は、前田にとっての古巣でもある広島カープのエースとして、チームを25年ぶりのセ・リーグ優勝に導いたばかり。そんなカープの成功に、“マエケン”もアメリカで続くことができるか。

 タワタリ氏は“過小評価”という言葉を使ったが、現時点での前田の知名度は確かにまだ全国区とは言えないかもしれない。しかし、今秋――。ドジャースにとって1988年以来となるワールドシリーズ進出に貢献するようなことがあれば、それはすぐに変わっていくはずである。(文・杉浦大介)

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