ハム中島、近藤、ホークス柳田…1打席あたりの被投球数でわかる打者の特性

ハム中島、近藤、ホークス柳田…1打席あたりの被投球数でわかる打者の特性

ソフトバンク・柳田悠岐、日本ハム・中島卓也、近藤健介(左から順)【写真:荒川祐史】

「ファウル打ちの達人」中島をP/PAで上回る角中と近藤

「P/PA」という指標がある。これは打者が1打席あたりに投じられる投球数の平均のことである。この数値の大小で打者のどのような性質が測れるのかについて、今季のデータを用いて考察を行ってみる。

「ファウル打ちの達人」と言えば、日本ハムの中島卓也を思い出すファンは多いだろう。実際2015年、2016年はNPBで最も多くのファウルを打っている。

2015年
ファウル599 1打席あたり0.97 P/PA 4.32
2016年
ファウル759 1打席あたり1.27 P/PA 4.54

 そして、1打席あたりの被投球数を示すP/PAの値もNPBトップであった。2017年は怪我や不調により出場試合数が減少し、規定打席数に到達しなかった中島であるが、ファウル打ちは健在で、1打席あたりのファウル数1.06、P/PA4.37は上位に匹敵する数値である。しかし、規定打席到達の打者でこのP/PAが中島を上回る打者が現れた。千葉ロッテの角中勝也である。そして規定打席には到達していないが、中島のP/PAを超えたのがチームメイトでもある近藤健介だ。

◯2017年
角中 452打席 P/PA 4.47
1打席あたりファウル数0.80

近藤 231打席 P/PA 4.84
1打席あたりファウル数0.66

中島 231打席 P/PA 4.37
1打席あたりファウル数1.06

柳田 551打席 P/PA 4.05
1打席あたりファウル数0.85

 なお、参考までに2017年のホークス柳田悠岐のP/PAは4.05である。

 角中や近藤のファウル数はNPBでも平均的な数であり、突出して多いわけではない。なので、ファウル数が投球数に影響している感じではなさそうだ。

ファウルの多さはP/PAの数値の高さとは無関係?

 では、2018年6月20日現在のP/PAのランキングを見てみよう。

◯P/PA の降順によるランキング (カッコ内の順位は規定打席到達者65名中の降順によるファウル数ランキング)

近藤健介(日)
4.90 1打席あたりファウル数0.78(26位)

西川遥輝(日)
4.58 1打席あたりファウル数0.76(37位)

山川穂高(西)
4.37 1打席あたりファウル数0.85(12位)

山田哲人(ヤ) 
4.32 1打席あたりファウル数0.60(62位)

バレンティン(ヤ)
4.30 1打席あたりファウル数0.78(26位)

糸原健斗(神)
4.27 1打席あたりファウル数0.67(57位)

中村晃(ソ)
4.26 1打席あたりファウル数0.77(33位)

田中広輔(広)
4.26 1打席あたりファウル数0.87(8位)

福留孝介(神)
4.24 1打席あたりファウル数0.71(45位)

◯P/PA の昇順によるランキング (カッコ内の順位は規定打席到達者65名中の降順によるファウル数ランキング)

宮崎俊郎(De)
3.31 1打席あたりファウル数0.59(63位)

京田陽太(中)
3.41 1打席あたりファウル数0.76(36位)

荻野貴司(ロ)
3.56 1打席あたりファウル数0.61(61位)

上林誠知(ソ)
3.59 1打席あたりファウル数0.89(6位)

中村悠平(ヤ)
3.61 1打席あたりファウル数0.70(51位)

安達了一(オ)
3.63 1打席あたりファウル数0.70(49位)

松山竜平(広)
3.68 1打席あたりファウル数0.69(52位)

柳田悠岐(ソ)
3.68 1打席あたりファウル数0.79(25位)

大和(De)
3.70 1打席あたりファウル数0.74(40位)

※参考
1打席あたりファール数降順ランキング
ロペス(De) 1.036
中島卓也(日)1.029
ゲレーロ(巨)0.976
松田宣浩(ソ)0.922
高橋周平(中)0.903

 P/PAが多いからといってファウル数が多いわけではなく、逆も然りであることがわかる。なお統計学で2つの指標の相関関係の度合いを示す相関係数を求めると0.078となり、ファウル数の多さがP/PAに大きな影響を及ぼしているわけではないようだ。

 ちなみにP/PAと最も強い相関を示したのは、四球率(PA/BB)やボール球であるが、それは当然と言えば当然のことであろう。2017年のパ・リーグの四球率を見ると、1位が柳田(6.8)であり、角中は3位(7.8)であった。また近藤は規定打席未到達ながら3.5という驚異の四球率であった。これが彼らのP/PAに大きく作用した。

 2018年のランキングで特筆すべきは、近藤が今年も降順ランキング1位であるのに対し、柳田は昇順ランキングに顔を出していることである。つまり、今季の柳田は1打席あたりの被投球数を減らしているのである。ファウル数は昨年とほとんど変わっていないが、四球率が6.8から9.5となりリーグ10位相当にランクダウンした。

早いカウントから積極的に打って出る柳田、2ストライク後の打撃が全体の3分の2を占める近藤

 そこでこのことを精査すべく、柳田の今季のカウント別打撃成績を見てみよう。Bはボール、Sはストライク。

B S 打率 出塁率
0 0 .348 .354
1 0 .357 .357
2 0 .429 .429
3 0  ―― 1.000
“0ストライク 31.5%”
打率.358 出塁率.391

0 1 .438 .438
1 1 .682 .652
2 1 .400 .364
3 1 .333 .800
“1ストライク 21.7%”
打率.529 出塁率.567

0 2 .286 .286
1 2 .222 .222
2 2 .281 .303
3 2 .241 .522
“2ストライク 46.7%”
打率.252 出塁率.357

 2017年の柳田のストライクカウント別バッティング確率は

0ストライク 25.9%
1ストライク 20.0%
2ストライク 54.0%

 だったので、今季は早いカウントでのバッティングを心がけている様子が伺える。

 それもそのはず、2017年の柳田の2ストライク後の打率は0.190で2割を切っている。追い込まれてプレッシャーのかかる状況を作る前に、積極的に打ちにいくことで結果を残している。

 では、P/PAが大きい近藤のカウント別打撃成績を見てみよう。

B S 打率 出塁率
0 0 .500 .714
1 0 .500 .500
2 0 .667 .667
3 0  ―― 1.000
“0ストライク 10.2%”
打率.539 出塁率.727

0 1 .143 .143
1 1 .360 .360
2 1 .600 .600
3 1 .667 .917
“1ストライク 22.8%”
打率.375 出塁率.490

0 2 .385 .385
1 2 .313 .333
2 2 .326 .326
3 2 .378 .582
“2ストライク 67.0%”
打率.344 出塁率.431

 0ストライクでのバッティングは1割しかないが、2ストライク後からのバッティングはなんと全体の3分の2を占める。しかも2ストライク後の平均的な打率は2割そこそこなのだが、近藤の場合はなんと.344。出塁率も.431と驚異的な数字である。

 なお、今季はまだ規定打席に達していないが、角中のP/PAは4.35.2ストライクからのバッティング確率55.9%で打率.276と平均より高い打率を残している。

 P/PAは、ファウルの数よりも、四球数の数、さらには追い込まれてからでも出塁する自信があるかどうかの意識や技量によって増減する指標であると考えることができるのではないだろうか。(鳥越規央 / Norio Torigoe)

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ(2012年、2013年)などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
千葉ロッテマリーンズ「データで楽しむ野球観戦」イベント開催中
トークイベント「セイバー語リクスナイト」7月19日開催

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