MLB通ドラマー、オカモト“MOBY”タクヤの記者体験リポート(エンゼルス編)

MLB通ドラマー、オカモト“MOBY”タクヤの記者体験リポート(エンゼルス編)

エンゼルスタジアムの前に立つオカモト“MOBY”タクヤ氏【写真:オカモト“MOBY”タクヤ】

6月1日から4泊6日の強行軍にチャレンジ

 前半戦が佳境に差し掛かってきたメジャーリーグ。各地で熱戦が繰り広げられる一方で、日本人選手が次々と故障者リスト(DL)入りして、9日現在メジャー登録25人枠に入るのはダイヤモンドバックス平野佳寿投手のみとなった。そんな“異常事態”を迎える直前の6月1日から4日間、Full-Countでは特別リポーターを迎えて、現地取材を敢行した。

 今季からコラボするFMおだわらで放送中の野球と音楽をつなげるラジオ「NO BASEBALL, NO LIFE.」でメインMCを務める、ロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネージャー、オカモト“MOBY”タクヤ氏が記者体験。カブスの大ファンでもあり、昨季は動画配信サービス「DAZN」のメジャー中継で解説を務めたメジャー通が、自分の目で見て、耳で聞いて、口で話して、肌で感じたメジャーとは……。渾身の体験リポートを4回にわたってお届けする。

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「MOBYさん、一緒にアメリカにメジャー取材に行きませんか?」という、MLB好き、そして野球好きの人々を全て敵に回してしまいそうな夢のようなオファーをFull-Countさんから頂きまして、4泊6日で3球場4試合を現地で取材する強行日程でアメリカに行ってきました。普段、記者の皆さんがどのようにして、我々が読んでいるMLBに関する記事を書いているのか、そして記者の皆さんがどのようにして情報を仕入れているのか、私MOBYが身を以て体験してきたことも踏まえ、1日ごとにご紹介できればと思います。

 6月1日(金)夕方、羽田を発ち10時間半のフライトでロサンゼルスへ。時差の関係で到着したのが同日の午前10時過ぎ。興奮なのか緊張なのか(あるいは飛行機の中で映画を観すぎたのか)機内では1時間ほどしか睡眠できず……。別の便で現地入りしたFull-Countの記者さんと待ち合わせて、まずはレンタカーでホテルへ移動しました。

 身支度を調え(最低限のドレスコードがあり、Tシャツ・短パン・サンダルはNG)、アナハイムにあるロサンゼルス・エンゼルスの本拠地エンゼルスタジアムに到着したのが、試合開始前およそ4時間前の現地15時。この時間に球場入りするのには、もちろん理由があります。試合前に取材をするからです。

「Press Box」と呼ばれる記者席に荷物を置き、ボクは見習い記者として他の日本メディアの方々にご挨拶を済ませると、向かった先はホームチームであるエンゼルスのクラブハウス。どの球場もおよそ試合開始3時間半前からクラブハウスがメディアに開放され、選手や首脳陣に取材する場を与えられるのです。とはいえ、もちろんのべつ幕なしに話しかけるのは御法度。基本的には選手が自分のロッカー前にある椅子に座っている時が取材OKのサインです。

クラブハウスで最初にすれ違ったのは…

 恐る恐るクラブハウスに入ると、いきなり現れたのがアルバート・プホルス!「Hi!」と言いながらすれ違っただけなのですが、自分は今、想像のはるか上を行く状況に放り込まれているのだ、と実感しました。広々としたクラブハウスにいる選手は、あまり多くはありません。恐らくマシンで打込みをしていたり、マッサージを受けたり、ポジション毎のミーティングなどをやっているのでしょう。で、クラブハウスを見渡すと……いましたいました! 大谷翔平選手が! 通訳の水原一平さん、そして広報の日系女性グレースさんと談笑しています。大谷選手の個別取材はNG、当然ボクも話をすることはできません。野球に専念できるよう、球団が配慮する様子が窺えました。

 さて他を見渡すと……おお! 内野手のルイス・バルブエナがいる! とはいえ、自分の英語力で取材などできるのだろうか……と自問自答していると、ボクと同行、いや引率という言葉の方が相応しいFull-Count記者さんに「ご自分で話しかけることが大事なので、できる範囲で取材してみましょう! 途中から助け船は出しますから!」と背中を押され、MLB記者としてのデビュー戦、プレーボール!

 ルイス・バルブエナはメジャー11年目、5球団を渡り歩いた経験豊富な内野のユーティリティプレーヤー。ボクがファンでもあるシカゴ・カブスにも2012-14年まで所属していました。2013年9月7日、ボクがリグレーフィールドでカブス(この日に林昌勇がMLBデビュー)vsブルワーズ(青木宣親選手が所属)を観戦した際にはホームランを放ち、どんなチーム、どんなポジションでも一生懸命プレーして、ついつい応援したくなる選手、という印象を持っていました。

「ボクにはベテランという言葉は、まだまだ当てはまらない。野球が大好きだから情熱を持って取組み、若い選手たちと同じような気持ちで、110%の力を出して毎日プレーしているんだ!」と熱く語っていました。ここまで好調なチームついては「フィールド内でもフィールド外でも、選手同士がしっかりコミュニケーションを取ってサポートしあっていることが良い結果に繋がっている」と語り、「オオタニのことは『ホルヘ』や『オオタニサン』と呼んでるよ」と、大谷選手が完全にチームに溶け込んでいることも教えてくれました。

大車輪の活躍を見せる救援ノエ・ラミレスに直撃

 16時、フィールドレベルに移動。すると間もなく三塁側ダグアウトでマイク・ソーシア監督の囲み取材がスタート。沢山の記者に囲まれながら、ソーシア監督はゆっくり丁寧に質問に答えてました。それが終わると、この日球場に来ていた大谷選手の代理人ネズ・バレロへの囲み取材が急遽スタート。バレロはマーリンズを自由契約になっていた田澤純一投手の代理人でもあり「一両日中に移籍先が決まるだろう」と記者たちに話していました。それを受けた記者の方々が「どうやら西海岸の1チームか中西部の1チーム、どちらか2チームのうちから選ぶらしい」とヒソヒソ話。記者の皆さんは自分自身で情報を仕入れることはもちろん、記者同士の繋がりで情報を共有することも非常に重要なのかも、という印象を受けました。そういえば、このタイミングで関係者らしき男性から「ヘイ! おまえのヘアスタイル、いいな!」と褒められ「サンキュー!」と軽く答えたんですが、一緒にいた記者の方から「あの方、スコット・ボラスですよ」と……。

 16時半からエンゼルスの打撃練習開始。大谷選手はセンターから逆方向へ意識して打っていた印象で、柵越えを何本も放っていました。他の選手が打っている間は、対戦相手テキサス・レンジャーズの中継ぎで、昨年まで日本ハムでチームメイトだったクリス・マーティンと談笑したりしていました。打撃練習は17時20分に終了。多くの野手陣が打撃練習に参加する中、この日はプホルス、そしてマイク・トラウトの姿はありませんでした。

 それと並行して17時からレンジャーズの投手陣、野手陣がアップ開始。大ベテランのエイドリアン・ベルトレ、5月26日に通算176本塁打を放ち松井秀喜氏の持つアジア人通算本塁打記録を更新した秋信守(チュ・シンス)らがグラウンドに出てきて、同じメニューをこなしていました。

 17時半からは、エンゼルスの中継ぎノエ・ラミレスにインタビュー開始。実はクラブハウスで一度取材をしようと声をかけたところ「ブルペン投手陣のミーティングと全体練習が終わったら、もちろん応じるよ」と約束してくれ、こちらに来てくれました(何ていい人だ……)。自己紹介で「今日はMLB記者として来ているけど、本業はバンドのドラマーなんです」と伝えたところ、「ボクも音楽は大好きで、さっきまでそこにいた友人たちはレゲエバンドの奴らだし、ボクの父もドラマーだったんだよ!」と、何だか意気投合。場が和んだところで本題へ入ります。

 メジャー5年目の今季は、昨年までの年間キャリアハイ(17試合)をはるかに超える28試合に登板(6月1日現在)。この要因は何かと尋ねたところ、「ブルペンの中でどんなシチュエーションでも投げられる投手は3-4人で、投げる時はだいたい1イニングずつ。ショウヘイがいることもあり、他のチームとはちょっと異なる先発ローテーションのスケジュールだから、その影響もあって登板機会も自ずと増えているんだよね」との答え。「2012年にプロ入りした時は先発だったんだけど、どうやらロングリリーフを中心としたリリーバーの方が自分に合っていたんだ」と語ってくれました。ルックス抜群の彼。日本でエンゼルス戦のテレビ中継が増え、エンゼルスファンが着実に多くなっている中、登板回数の多いラミレスのファンになる女性ファンも増えているはず(現にボクの妻が最近ファンになりました)。そのことを伝えると「それはうれしいね! 2010年には世界大学野球選手権で日本を訪れ、非常に楽しい時間を過ごしたんだ。もっと頑張らなきゃ!」と喜んでくれました。

試合後はソーシア監督と大谷選手の共同記者会見

 18時に大体ひと段落。19時過ぎの試合開始までのこの時間に、記者の皆さんは食事を取ります。メディア用の食堂があり、サラダバー付きビュッフェ形式の食事を有料ですがリーズナブルな価格で提供してもらえます。15時に球場入りして試合終了まで、いわゆる休憩時間はこのタイミングくらい。ほぼ全てのメディア関係者の皆さんがここで食事を取っていました。

 19時5分、試合開始。スコアを付けながら試合を追います。昨年DAZNでボクと同じタイミングでMLB解説者としてデビューされた作曲家の成瀬英樹さんがiPadにスコアを付けていたことに影響され、ボクもそのスタイルを今回から踏襲。周りの記者の方々に「それいいね!」と評判も上々でした。試合はプホルスやキンズラーにホームランが飛び出し、大谷選手も得点には絡まなかったものの二塁打を放ち、エンゼルスがレンジャーズに6-0と完封勝利。若干21歳のルーキー、ハイメ・バリアが6回無失点の好投で早くも5勝目(1敗)。ただ試合終了時にレンジャーズのオドーアがエンゼルス遊撃アンドレルトン・シモンズに足を向けてスライディングをしたことで一悶着あり、翌日以降に不穏な空気を残す結末となりました。レンジャーズの先発、そして現役最年長選手であるバートロ・コロンは3回6失点。拝めただけでも貴重ですが、残念な結果となりました。

 21時45分に試合が終了してからおよそ15分後、ソーシア監督の共同記者会見です。バリアの好投、スライダーが切れていたことを褒め称えつつ、記者の質問に丁寧に受け答え、5分ほどで終了。ソーシア監督と入れ替わるように、今度は大谷選手の共同記者会見がスタート。初めての時差が伴う長距離遠征に関しては「(西海岸から東海岸へ)行く時の方が肉体的に若干キツかったけど、帰ってくる時は問題なかった」、3度目となるコロンとの対戦に関しては「コントロールのいい投手なので、今日は打ち急がず際どい球を見極め、自分の方にいい流れが来て、いい結果が出た」、14打席ぶりのヒットに関しては「四球を取れているので、久々のヒットとは感じなかった」、オールスターに関しては「先のこと過ぎてイメージできていない。1日1日しっかり積み重ねていくだけ」と、どの質問にも丁寧に答えていました。あの年齢でこの落ち着きっぷり。尊敬の念しか浮かびませんでしたよね……。7分ほどで終了し、これにて全て終了! かと思いきや、記者の皆さんはここからがまた勝負なのです。試合速報、記者会見の内容などをまとめた記事を入稿し、全てが終わったのが試合終了から1時間後の22時45分頃。ボクは何度も時差ボケによる睡魔に襲われたものの、どうにか堕ちることなく全て見届け、23時過ぎにホテルへ無事帰還しました。

 何しろ「記者」という仕事は激務であること、そして英語力がなければ何も開かれない、ということを痛感したMLB記者デビュー戦でした。ホテルの部屋でビールを浴びるように2本飲んで就寝です。

●プロフィール
オカモト“MOBY”タクヤ(SCOOBIE DO)
“LIVE CHAMP”の異名を持つロックバンド、SCOOBIE DOのドラマー兼マネージャー。ドラマーとして様々なアーティストのレコーディングに参加。また動画配信サービス「DAZN」でのMLB解説を始め、野球と音楽がテーマのラジオ番組・FMおだわら「NO BASEBALL, NO LIFE.」ではMCを担当。DJ、MLB関連のコラム、酒場コラムやラーメンコラムの執筆、クイズ作家、香港政府観光局公認「超級香港迷(=スーパー香港マニア)」。

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