【高校野球】大阪桐蔭の優勝を“決めた”3ラン 宮崎は吉田の内角直球を「なぜ読んでいたか」

【高校野球】大阪桐蔭の優勝を“決めた”3ラン 宮崎は吉田の内角直球を「なぜ読んでいたか」

ヤクルト、阪神、楽天でヘッドコーチや2軍監督を務めた松井優典氏【写真:岩本健吾】

史上初となる2度目の春夏V、名将・野村克也の“右腕”松井優典氏「大阪桐蔭の意識は一貫していた」

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会は21日、決勝が行われ、大阪桐蔭(北大阪)が、初優勝を目指した金足農(秋田)を13-2で下し、4年ぶり5回目の優勝を決めた。春の選抜大会に続き、史上初となる2度目の春夏連覇を達成。地方大会から準決勝まで一人で投げ抜いてきた好投手の吉田を強力打線が攻略した。

 結果的に大差での決着となったが、勝敗を分けたものは何だったのか。名将・野村克也氏の“右腕”としてヤクルト、阪神、楽天でヘッドコーチや2軍監督を務めた松井優典氏は序盤のベンチワークで大阪桐蔭が優位に立ったと指摘。また、吉田の直球に対応した打線の力も高く評価した。

 試合の最初のポイントは初回にあった。金足農の吉田は四球とヒットで無死一、二塁とされ、3番・中川、4番・藤原、5番・根尾のクリーンアップを打席に迎えた。中川、藤原は内角へのスライダーで連続空振り三振。しかし、根尾にはカウント2-2からの内角への直球がわずかに外れると、6球目の直球も内角低めに外れて四球。続く石川の打席で暴投で先制点を献上。そして、石川には2点タイムリーを浴びた。

 松井氏は、根尾への直球がストライクにならなかったことが大きかったと話す。

「吉田君はあまり調子が良くない感じのスタートでしたが、結局、大阪桐蔭打線は1回にスイッチが入ってしまった。根尾君への四球が大きかった。あのインコースのボールは根尾君も完全に裏をかかれていました。その球がボールになってしまったのが、立ち上がりの一番大きな山でした。そして、吉田君からすれば、クリーンアップに神経を使った後に石川君にやられました。あそこで吉田君が根尾君にストライクを投げられなかった、ということも当然あります。その前の藤原君の迫力あるスイングが影響したかもしれません。結果的に大阪桐蔭の打線の迫力に押されたとも言えるかもしれません。

 また、暴投の後に金足農の中泉監督がタイムかけようとしましたが、かけられなかった。そして、その後に失点につながりました。監督とすれば、あそこで一呼吸取ってやりたかったという意図のタイムだったと思います。もっと迫力を持ってタイムをかけに行かなければいかなかったと思います。吉田君も整理ができて、盛り返しもできたかもしれません。振り返ってみれが、あれがもったいなかった」

 そして、試合を決めたのは大阪桐蔭が2点リードで迎えた4回の宮崎のホームランだった。この場面では大阪桐蔭のデータ研究のレベルの高さも際立ったという。

「宮崎君はカウント2-1から内角の厳しい直球をファウルにして、変化球のボールを挟んでから内角の直球をホームランにしました。バッテリーはここも裏をかいたつもりだったと思います。キャッチャーは内角を要求して、吉田君も甘くないコースに投げた。でも、それを完璧に打ちました。あの打席では内角をある程度読んでいました。なぜ読んでいたのか。大阪桐蔭は吉田君に対して、左打者は外角、右打者は内角に意識を持った打撃をしたように見えました。その意識が表れたのが宮崎君のホームランでした。大阪桐蔭の意識が一貫してあったと思います。吉田君攻略のために、チーム全体で情報と意識をしっかりと共有していました」

「金属バットを使っていることを考えると、プロくらいのレベルの高さがあった」

 もちろん、研究どおりの打撃を実行できたのは、大阪桐蔭の打線のレベルの高さがあったからこそだ。金属バットを使っていることで、木製バットのプロ球団と同じくらいの凄みがこの打線にはあったと、松井氏は評価する。

「金足農に勝つチャンスがあるとしたら、吉田君が万全の状態で9回を投げきるということが絶対条件だったと思います。それだけ大阪桐蔭の打者のレベルが高かった。しっかり研究していましたし、能力の高さを見せられたゲームでした。大阪桐蔭の打線は、プロ顔負けとまで言いませんが、金属バットを使っていることを考えると、プロくらいのレベルの高さがあったと思います。

 ただ、当然そこに辿り着くまでには、去年の仙台育英戦での悔しい敗戦があったはずです。あの試合では、中川君が敗戦の“当事者”になりました。それを受けて、1年間、日々鍛錬してきた結果でしょう。主将になった中川君が悔しい思いをチーム内に浸透させた。それに他の選手が乗っかっていったチームだったのだと思います。ただ単に力があった中での優勝ではなく、悔しさを糧に掴んだ優勝でした。

 近年では全体のレベルが本当に高いチームでした。1人のスターがいるということではなく、試合に絡む12〜13人くらいの選手のレベルが高かった。当初から大阪桐蔭を中心に回る大会だという大方の予想がありましたが、結果的に見事にモノにしました。評判通りに力を出しましたし、精神力もありましたし、練習量もありました。それぞれが技術的、精神的、体力的に成熟したチームでした。一方で、この結果を見ると予選で大阪桐蔭を追い込んだ履正社の力も際立ちます。ただ、それも経験として大阪桐蔭に生きていたと思います」

 100回目の夏の甲子園は優勝候補最有力が頂点に立つという結末を迎えた。ただ、松井氏は全体的なレベルの高さを感じたという。「ここから何人がプロに入るかは分かりません。ただ、こういう選手たちが次のプロ野球を支えてくれると夢を見させてくれる大会でした。能力の高い選手がいっぱいいました」。日本球界の明るい未来は、高校球児の溌剌としたプレーの中にしっかりと見えた。(Full-Count編集部)

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