これからの少年野球のあり方は? 練習時間短縮、球数制限、指導者の怒声禁止…堺BBの進める改革

これからの少年野球のあり方は? 練習時間短縮、球数制限、指導者の怒声禁止…堺BBの進める改革

5月25日、神戸市内で開催された「これからの少年野球のあり方セミナー」の様子【写真:広尾晃】

5月25日に神戸市内で「これからの少年野球のあり方セミナー」が開催

 5月25日、神戸市内で「これからの少年野球のあり方セミナー」が開催された。野球の競技人口が減少する中、少年野球でも、選手の確保やチームの運営に苦慮している指導者が多い。そんな中で、大阪府堺市の堺ビッグボーイズは、今季、小学部、中学部合わせて180人近くの選手を集めている。

1、野球人口の減少の中、なぜ部員が増え続けるのか?

2、これからの時代に必要な選手主体の指導とは?

3、筒香選手と取り組む、日本野球界の新たなアプローチ

 この3点について、堺ビッグボーイズの瀬野竜之介代表、阪長友仁コーチが講演した。

 堺ビッグボーイズも最初から、今のような運営方針だったわけではない。このチームの1期生で1992年に監督となった瀬野代表も、当初は「勝利至上主義」で選手をスパルタ指導していた。1999、2000年とボーイズリーグの全国大会を制し、世界大会にも指導者として出場した。

 だが、そうやって鍛え上げた選手たちが、その後活躍できず、中には野球を辞めてしまう選手さえいることに気づき、代表に復帰後は選手育成に主眼をおいた指導法へとチェンジした。

 40歳を超えてもMLBで活躍した野茂英雄、黒田博樹、斉藤隆、上原浩治の4投手はすべて中学時代は、控え投手だったり、野手だったりで、投手としては活躍していない。2019年にNPBで開幕投手を務めた12投手の中で、阪神メッセンジャーを除く11人が中学時代は軟式野球をやっていた。

期待したい指導者の意識改革と少年野球人口減少の歯止め

 こうした現実を考えても、少年野球は改革の必要があるだろう。高校野球は真夏にトーナメント制の全国大会を行っている。このルールが大人たちには「勝ちたい」「勝たせてやりたい」というプレッシャーになる。また勝てば勝つほど日程が厳しくなり、選手の負担も大きくなる。少年野球の大会もそれに倣ってトーナメント制で行われている。

 プロ野球を見てもわかるように、本来がリーグ戦の野球は勝率6割で優勝が決まるようなスポーツだ。トーナメントが、勝利至上主義の弊害を生んでいる側面は否定できない。目先の勝利を追いかけるあまり、フェアプレーは軽視され、相手チームに汚い野次を飛ばす文化を生んでいる。また、短期的な結果を求める指導は、子どもに考える余地を与えず、指示待ち人間を生んでいる危険性がある。指導者が絶対的な存在になり、子どもは痛みがあっても言い出せない環境にある。

 果たして、それで本当の信頼関係は生まれているのか?

 こうした事を考えた末に、堺ビッグボーイズは改革を断行。指導者を総入れ替えし、MLB関係者をスーパーバイザーとして招聘、さらに主催していた大会をトーナメントからリーグ戦へと変えた。練習時間を短縮し、指導者の怒声、罵声を禁止。また学年に応じて球数制限や変化球制限を実施した。さらに指導者の一部に給料を払い、プロ化した。4年前には小学部も立ち上げた。そして堺ビッグボーイズOBのDeNA筒香嘉智選手がスーパーバイザーに就任した。

 この改革によって、チームに笑顔が戻り、子どもたちが主体的に野球に取り組むようになった。そして、多くの子どもが堺ビッグボーイズに入部するようになった。また指導者はプロになることで、責任感が増した。もちろん、問題がないわけではない。この改革によって中学部の目先の勝利は増えていない。

 もっとハードな練習をする強豪チームに移籍する子どももいる。そういう部分では課題もあるが、堺ビッグボーイズは今後も改革を進めていくと、瀬野代表はこのイベントを締めくくった。

 このイベントに参加した兵庫県下の高校、中学、小学校の指導者と瀬野代表、阪長コーチとの間で、質疑応答や意見交換が行われた。今回は、指導方法や技術論ではなく、指導者、経営者目線での「少年野球のあり方」がテーマになった点はユニークだったと言えるだろう。こうした地道な取り組みによって、指導者の意識改革が進み、少年野球人口の減少に歯止めがかかることを期待したい。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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