「女子プロ野球を目指していた」苫小牧から上京しモデルに 野球女子が描く夢

「女子プロ野球を目指していた」苫小牧から上京しモデルに 野球女子が描く夢

社会人チームで全国優勝した経験を持つ野球女子・椿梨央さん【写真:荒川祐史】

社会人チーム「苫小牧ガイラルディア」で2年前に全国優勝した野球女子・椿梨央さん

 モデル界にかつて女子プロ野球選手を目指していた女性がいる。椿梨央さん(23)は2年前まで北海道・苫小牧で女子野球の社会人チーム「苫小牧ガイラルディア」に所属。「3番・遊撃」で全国大会を優勝した経験を持つ。椿さんはモデルとして活躍する夢だけでなく、女子野球を広める力になりたいという希望を抱いて、北の大地からやってきた。

 8歳年上の兄、6歳年上の姉の影響で椿さんは野球を始めた。最初は両親に反対されたが、小学校4年生の時に涙ながらに頼み込んだ。

「姉が(野球が)上手だったので、両親は私がいじけると思ったみたいで…。泣きながら、お願いしたら『いいよ』と言ってもらえました」

 本気で野球をやりたいという熱意が伝わった。やるからには男子には負けたくない。根性が座っていた。その精神力は今でも宿っているという。

 中学に入っても野球熱は収まらない。中学校で男子と混ざって軟式野球部に入り、北海道女子軟式野球連盟所属の女子チーム「苫小牧ガイラルディア」にも入団。先に女子チームに所属し、投手をやっていた姉とバッテリーを組みたいという思いから、捕手を志願した。

 高校生になっても、硬式野球部に所属。平日は男子と硬式。土日・休日は女子チームで軟式でプレー。高野連の試合には出場できないため、大会では女子マネ―ジャーを務めた。

 女子野球チームに専念してもよかったが、プレーヤーとしての自分が好きだった。

「中学時代は平日も体を動かしたかったのでチームに入りました。高校時代の硬式野球では肩やひじの負担がないように、ファーストやセカンドを守っていました。硬式は軟式よりも、バウンドが低いので腰を低く守れるようになるなど、メリットはありました」

 野球が好きで、2年前の21歳まで白球を追いかけていた。2017年に全国女子碧南大会(全国大会)で優勝。3番・遊撃で頂点に輝いた。

 大型ショートとして活躍し、女子プロ野球の世界へ進むことも考えた。姉も受けたトライアウトに参加しようとしたが、肩を痛めてしまい、受験を断念。全国制覇がひとつの節目となって、野球へ区切りをつけた。

高身長がコンプレックスだった学生時代 付いたあだ名は「デカ」

 現在170センチある身長が学生時代はコンプレックスだった。小さい頃から人よりも大きく、付いたあだ名は「デカ」。同世代の男子には「威圧感があったと思います」と今は笑って振り返れるが、「(自分は)かわいくないと思った」という。

 しかし、高校3年生の時に転機が訪れた。地元でスカウトされて、着物の雑誌に一般モデルとして掲載された。ファッションへの興味が大きくなっていった。

「(ファッションショーの)札幌コレクションに行ったのですが、私より身長の高い人が堂々と歩いている姿に影響を受けました」

 野球で培った負けん気の強さと根性で、モデルとして頑張っていくことを決意した。嫌だった高身長も今では「もっとほしいくらいです」とほほ笑む。

 ファッションと同じくらい大好きな野球も仕事や生活から、切り離したくはない。野球をやっていた過去を明かしているが、残念な思いをした時もあった。

「『女子野球、女子プロ野球なんてあるんだね…』と言われることが悔しくて。女子プロ野球のみなさんのおかげで広まってきていますから、私ももっともっと広めるお手伝いをしたいなと思っています」

 自分がモデルで頑張れば、女子野球を発信するチャンスもできると考えている。モデル体型を維持するトレーニングをする傍ら、投球練習やフォームチェックも真剣に取り組んでいる。いつかの夢「始球式」にも備えている。

「過去に(球速)110キロ出したことはありますが、今は100キロもいかないくらいです。なので、しっかりとトレーニングとフォームを作って、110キロを出せるように頑張りたいと思います」

 野球の盛んな北海道・苫小牧で野球を始めた少女が、新たな目標に向けて活動をしている。2004年、8歳の時に北海道勢で初めて駒大苫小牧が優勝し、その感動を身近で触れた。プロ野球・日本ハムの人気が北海道で定着。球団が開催した野球教室で選手と触れ合い、もっと野球が好きになった。ケガで野球の夢を諦めたが、モデルの仕事と出会い、コンプレックスがなくなった。節目にはいつも誰かしら大きな存在がいた。

「私も影響を与える人になりたいなと思います」

 モデル業に負けないくらい、野球少女の応援に力を注いでいくことを誓っていた。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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