世界一の球団を目指すホークス、影で支える“裏方”の存在【パお仕事名鑑Vol.1】

世界一の球団を目指すホークス、影で支える“裏方”の存在【パお仕事名鑑Vol.1】

ソフトバンクの球団統括本部、チーム戦略室に所属する須山晃次さん【写真:パーソル パ・リーグTV】

チームを強くするための意外な仕事とは

 グラウンドの上で輝く選手やチームを支えているのはどんな人たちなのか。パ・リーグで働く全ての人を応援する、パシフィック・リーグオフィシャルスポンサーのパーソルグループと、パ・リーグインサイトがお届けする「パーソル パ・リーグTVお仕事名鑑」で、パ・リーグに関わるお仕事をされている方、そしてその仕事の魅力を紹介していきます。

 ホークス=強い。それは積み上げた実績でもあり、ファンのイメージでもあるだろう。その強さの要因を須山さんは「現状維持を良しとしないこと」だという。これは選手たちだけではない。事業に関わる球団職員やスタッフも考え方は同じ。その中で球団統括本部、チーム戦略室に所属する須山晃次さんの仕事は「強化」。まさに現状維持ではなく「今よりもっと強く」を目指す仕事だが、須山さんの担当は実に幅広い。

「球団統括本部には、スカウトや育成などを担当する『編成育成本部』、遠征の移動や事業側との連携などチームオペレーション全般を担う『チーム運営部』、そして私が担当する『チーム戦略室』等の組織があります。今後どのようにチームを強くしていくかにフォーカスした部署で、具体的には、まず、選手、チーム、スカウト、メディカル、コンディショニングなどの情報管理システムの運用、改善。またMLBや他のスポーツなどで使われている新しいシステムの調査、導入の決定。それからスコアラーやトレーナーの編成といった人事的なことも担います」

 強化というと練習やスカウトと考えがちなので、こうした仕事が強化の一環であることは意外かもしれない。しかし、例えばデータやシステムを活用、整備していくことで怪我を未然に防ぐことは、そのままチームの力になる。特に、今季のホークスにとっては火急の課題でもあるだろう。

「実は、福岡ソフトバンクホークスに入る前からミッションと感じていました。データをどうやってさらに活用していくか。遅れを取っているというよりも、インフラは揃っているので、どこもまだやっていないことをやれるし、やりたい。もっと深掘りしていける」

選手のセカンドキャリアもサポート「心して野球に取り組んでもらえる」

 強くても課題はある。今強いからそれでいい、という現状維持の感覚はない。さらに強化の仕事では、こんな意外なことも。

「選手のセカンドキャリアのサポートです。球団やソフトバンクグルーブと連携し、野球を辞めた後の就職のフォローも行います。球団に残る人、グループ会社に就職する人とさまざまです。いずれにしてもホークスに入ってくれれば、安心して野球に取り組んでもらえる。選手のご両親に対しても安心していただけます」

 セカンドキャリアも強化の一端というのは興味深い。3軍までを擁するホークスには多くの育成選手も在籍しているが、現実的には1軍に定着して活躍できずに辞めていく選手も多い。厳しい世界。それでも夢に向かって人生の何年かをホークスで燃焼する。その環境を整えること。なるほど、強化というのは幅広い。須山さんは、入社前からここまで仕事が多岐にわたることを把握していたのだろうか?

「していなかったです(笑)。前職でホークスともお付き合いはあったのである程度は知っていたのですが想像以上でした。でも、やらせてもらえることにはポジティブですよ。現在、入社して半年ぐらい。7月から室長代行になって全体を把握してきて、やらなきゃいけないなというところが見えてきました」

 IT、データ分析、トラックマンなど新しいシステム、セカンドキャリア、コンディショニング、専門家とのコラボレーション。単語を抜き出しただけでもわかるように、多岐にわたる業務は多岐にわたるスキルが必要だ。これらをどうやって身に着け、磨いてきたのか? もともと須山さんはプロ野球志望で、高校、大学、そして社会人と野球を続けてきた。

「プロではないまでも選手をやっていたことは役立っているとは思います。選手だったら何が欲しいのか、その感覚はあります。でも、それはあまり大きくないかな」

アメリカで感じた日本との差「何が違うのか、どう成り立っているのかを知りたい」

 そう、社会人まで続けた野球を辞めた後、須山さんはアメリカへと渡り、新たなページを開いていく。きっかけは、社会人で所属していたチームの突然の廃部だった。

「プロには行けそうにもなく、でも自分の中では会社に残って働くという選択肢はありませんでした。そのころ、日本人選手の活躍もありMLBの中継が日本で当たり前のように見られるようになった時期で、野球だけではなく他のアメリカのスポーツも見られるようになりました。それを見ていてなにか漠然と日本との差を感じたんです。ちょうど球界再編の時期、プロ野球も社会人野球もチームがなくなる。アメリカは盛り上がっている。何が違うのか、どう成り立っているのかを知りたい。それなら、大学院に留学してスポーツマネジメントという学問をしっかり学んだ方がいいと思い立ちました」

 決断から実行までは早かった。インディアナ州の大学院に留学し、スポーツに関わる歴史、ファイナンス、マーケティング、法律など、スポーツという切り口で多くのことを体系づけて学んだ。現場で働くゲストスピーカーの方々の話も有益だった。さらに実学を重ねていく。マイナーリーグ、シングルAでのインターンだ。

「インターンは留学する際の目標でもありました。学問だけでなく実体験をしたい。サンフランシスコ・ジャイアンツの傘下でジョージア州オーガスタにあるチームでしたが、シングルAぐらいだとなんでもやるんですよ。チケットのもぎり、花の水やり、子どもたちが遊ぶ遊園地やレストランの設営や掃除。この仕事がどこにつながっているのかはわかりませんでしたが、良き体験でした」

 当時は将来へのつながりは見えなくとも、今、振り返れば、球団の仕事の幅広さを体感したことはかなり役に立っていると須山さんは実感している。その後のキャリアはエージェント(代理人)業からデータ分析の世界へ。

「ロサンゼルスのエージェントオフィスに所属しました。日本にもオフィスがあって、日本でのビジネスを広げようと考えていたんですが、日本では当時、代理人制を認めない、制約が多いなどビジネスにはなりにくかったんです。そこに固執していても……と思っていた時。08年ですが、スマホが出始め、スポーツとデータの連携が注目されて、そちらの方がビジネスとしての先があるなと考え、そこからデータ分析システムのビジネスを10年。一貫して野球のビジネスはやってきましたね」

 選手、留学、インターン、エージェント、そしてデータ分析ビジネスと多岐にわたるスキルを得てきた須山さん。その体験から導き出す、スポーツビジネスを目指す上で必要なスキルやマインドはどんなものなのだろうか?

妥協のないホークスのチーム作り「“めざせ世界一!”」

「もちろんひとつのことに集中することはすばらしいことなんですが、なかなか専門性を高め、極めるのは難しいかもしれません。だから、そこそこでもいいのでいろいろな経験をしておく。その体験で得たいろいろなスキルを持っていれば、それを掛け合わせると割とレアな人材になる。その時取り組むものが、たとえスポーツビジネスに関係なくとも目の前の仕事をしっかり全力で取り組む。そこでのスキルもきっと役立ちます」

 さて、最後に気になっていること。ソフトバンクの強さの要因である「現状維持を良しとしないこと」をもう少し詳しく聞きたい。

「事業側、チーム関係なく、できることはどんどんやりなさいと言われます。そうじゃないと認められないぐらい。現状維持のことをやっていたら『なにやってるの?』という感じです。そして私が驚いたのが、すべてのミッションに“めざせ世界一!”というキーワードがある。なかなかそういう大きなミッションは持ちにくいんですがみなさんそれに向かって進んでいる。それが強さになっているんじゃないでしょうか」

 “めざせ世界一!”とは壮大だ。これは2004年に「福岡ソフトバンクホークス」となった時から球団スローガンとして掲げられたものだという。「メジャーリーグのチームに勝つためにはどうするか?」「世界一のスタジアムにするには? スタジアムのエンタテインメントはどうするか?」、「世界一になるためにはまず日本で一番になる」、「だからファンの人数も日本一。九州はもちろん関東、全国にファンを増やす」……チーム編成でも事業でも、全員の仕事のモチベーションや行動指針、意識に常に“めざせ世界一!”がある。この高く、熱い意志が須山さんの仕事をさらに前向きにしていく。(「パ・リーグ インサイト」岩瀬大二)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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