元DeNA荒波翔が独白 なぜメキシコ野球を選んだのか…「最初は全然選択肢になかった」

元DeNA荒波翔が独白 なぜメキシコ野球を選んだのか…「最初は全然選択肢になかった」

今季途中までメキシカンリーグに所属していた元DeNAの荒波翔【写真:球団提供】

昨年DeNAを自由契約に、メキシコではテスト生から開幕レギュラーを掴む

 今季メキシカンリーグでプレーした元DeNAの荒波翔外野手。残念ながら6月25日に契約解除されてしまったが、所属したスルタネス・デ・モンテレイでは約3か月プレーした。昨年までDeNAで8年間プレーしたが戦力外通告を受けた後に自由契約となり、今季海外初挑戦。メキシカンリーグの強豪チームで主に「1番・センター」として47試合に出場し、打率.293、12打点、0本塁打、7盗塁、46得点の成績を残した。そんな荒波が「Full−Count」の独占インタビューに応じ、同リーグの実態や、打者目線で見たメキシコと日本の野球の違いなど、メキシコで感じたことを語ってくれた。

――メキシコでのプレーを選んだきっかけは?

「最初はメキシコ行きは全然選択肢になかったんです。でも、自分の人生を振り返ると、高校、大学とプロに行けず、社会人から挑戦して、やっと夢が叶った。無理なところをこじ開けてきた人生だったので、社会人、独立リーグなど、住み慣れた日本国内でやるよりも、違った場所で新しい経験をした方がいいんじゃないかと思ったんです。まだ体も動く自信はありましたし、人と違う経験がしたかった。アメリカや中南米から日本に来る外国人選手を見ても、打撃のスタイルが日本とは違う。引退して教える側の立場になった時に、海外の野球を経験しておくことはプラスになると思ったんです」

――テスト生からのスタートでした。

「最初は、どうなるか分からないのに行ってもな、とも思っていたんですが、昨年DeNAを戦力外になってから5か月間、グラウンドを貸してもらい、ずっと個人で練習をしてきた。もしかしたら2日でクビになるかもしれないけど、ここまでやって野球を続けられる可能性があるなら、裸一貫で行ってみて、ダメなら素直に諦めることもできる。同じ海外でも韓国、台湾は日本と野球が似ているし、どうせ行くならアジアの他の国に行くよりも、野球の原点に近い場所の方が得るものが多いかなと思ったんです。レギュラー組がキャンプに合流したのは3月中旬で、最初は若手が多くて誰がライバルかも分からず、オープン戦の対戦相手も独立リーグやアマチュアのチームで、球場もデコボコのひどいところでした。でも、周りの選手に勝たないとダメだと思ってやっていました」

――開幕から「1番・センター」の座をつかみました。

「最初は日本のプロ1年目の時みたいに、何をアピールしていけばいいのか考えていました。日本では1試合で最低でも1安打、1四球で2度出塁することを意識していましたが、メキシコでも打率、出塁率を増やして得点を増やすことを考えていました。向こうの選手は四球で出塁することはあまりいいことだとは思っていないようですが、周りの評価は別にして、僕のようなタイプは安打も四球も一緒なので、塁に出て得点することが役割だと思っていました」

――メキシコの投手の印象は?

「球速は、球の遅い左の技巧派で85マイル(約137キロ)、平均で90マイル(約145キロ)前後で、抑えレベルで95マイル(約153キロ)くらいでした。そんなに日本よりも遅いとは思いませんが、コントロールは正直、日本の方がレベルが高い。3球中3球全部がコースにきっちり来る投手は少なかったですね。だいたいのストライクゾーンには来るが、ビタビタには来ない。配球も、すごく考えているなと思う相手は少なかったです。狙って投げている球も少ないように感じました。ただ、直球は動くし、球に強さがあります。

 あとは日本と違って、フォークよりもチェンジアップが多いのが特徴。日本だとカウント球としてチェンジアップを投げてきますが、メキシコでは追い込んだら、日本よりもいいチェンジアップを投げてくる投手が多かった。ただ、基本は直球が多い。中にはフルカウントから変化球を投げる投手もいますが、追い込んだらスライダーよりも直球かチェンジアップを投げる投手が多かったなという印象ですね」

メキシコの打者は「当てるという意識はなく、強く振って三振なら仕方ないという考え」

――打者として大変だったことは?

「日本とは違って初めて見る投手ばかりで、試合前にも日本のようにミーティングがないので、どんな球種を投げてくるのか分からず、球の軌道のイメージもないまま、ぶっつけ本番で打席に立たないといけませんでした。直球も動きますし、追い込まれた後、日本だと球種が分かっているので粘れますが、どの球が来るのか情報がないので分からない。なので、来る球に反応するしかなくて、ボールを見すぎて(打ち取られて)後悔したこともありました。他の選手たちはメキシコでの経験があり、ウインターリーグでも対戦していて相手投手のことを分かっていたので、なるべくチームメートに聞くようにはしていましたが、(左打ちの)自分のところで左投手が出てくることも結構あったので、その時は打席で対応していました」

――メキシコの打者はどんなタイプが多かったでしょう?

「常に強いスイングを心掛けていて、逆方向でも同じスイングをしてくる。それを子供の時から教えられているんだと思います。日本のように当てにくる打者は少なく、しっかり軸で振ってくる。当てるという意識はなく、強く振って三振なら仕方ないという考えで振ってきます。日本人は下半身を使って打つので、上半身を上手く使える人は少ないですが、向こうの選手は上半身を使ってバットのヘッドのタイミングを取るのが日本人よりも上手い。下半身だけでなく上半身の力も最大限使ってスイングができるんです。日本人は追い込まれたりすると、逆方向に手で操作して打ちますが、メキシコの選手は引っ張るスイングの中で逆方向に打てる。投手目線で見たら、失投したら危ないだろうなと思うタイプの打者が多かったですね。守備、走塁の技術は日本の方が優れていますが、打つことに関してはメキシコの方が優れているなと思いました」

――守備、走塁面で感じたことを教えて下さい。

「僕がプレーしていたモンテレイは監督が元メジャーリーガーの方だったので、意外と細かい野球をしていましたが、相手チームはどこもそうではなかったですね。外野の守備も(打球の)後ろから入って捕ったりしないですし、走塁でもリードの取り方について細かく言っているチームはなかったように思います。あと、向こうの選手は「流れ」に対する感覚がないんです。日本人とは違い、ここでエラーや盗塁失敗をしたら流れが変わる場面だなというところでも、これはしてはいけないというプレーがない。日本でやっていた時は、流れが悪い時は初球は打ちに行かず、四球を選ぶことも意識してやっていましたが、向こうの野球はそういう細かい部分はなかったですね」

――メキシコでは標高が高い場所でも試合をしましたが、低地との違いを教えて下さい。

「標高1500メートル以上の街に本拠地があるチームが16チーム中7チームあるんですが、標高が高いところだと、高く上がった打球は落ちてこなくて、そのままフェンスを越えて全部本塁打になるんです。打撃練習時の打球の伸びを見て、球場ごとに守備位置を変えていましたが、高地は低地よりも10?15メートルくらい後ろに下がって守っていました。逆に、低地だと前に落ちる打球でも、高地だと落ちてこない分、追いつけるので、フェンスまで全力で走って打球に追いつく距離を計算し、前の打球にも対応できるように考えていました。逆に投手からしたら『(低地なら打ち取ったはずの)あの打球でも本塁打になっちゃうのか……』という落胆はあると思います」(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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