横須賀で育って横浜で活躍― ベイスターズ新ファーム施設に込められた想いとは

横須賀で育って横浜で活躍― ベイスターズ新ファーム施設に込められた想いとは

DeNAのファーム施設が横須賀市の追浜公園内に完成【写真:佐藤直子】

横須賀スタジアムのある追浜公園内に「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」誕生

 1998年以来21年ぶりのリーグ優勝に向けて、激しい首位争いを繰り広げているDeNA。投手陣を見ても野手陣を見ても、ドラフトを経て2軍で育った若手選手たちの躍動が光る。選手を“自家栽培”する育成システムが徐々に確立されつつあるが、この度、育成を環境面からサポートするファーム施設が横須賀市の追浜公園内に完成した。8月17日に落成式を迎える「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA(ドック オブ ベイスターズ ヨコスカ)」だ。「Full-Count」では一足早く現地を訪れ、モダンかつ実用的な施設を見学させてもらった。

 横須賀市追浜公園内に新たなベイスターズのアイコンが完成した。公式戦が行われる横須賀スタジアムに隣接するエリアに屋外練習場、屋内練習場、選手寮を新設。1軍での活躍を目指すファームの選手たちが、より野球に専念しやすい環境が整った。これまで練習場と選手寮などがある総合練習場は、横須賀スタジアムから約5キロ離れた場所にあり、不便なことも多かった。前身の大洋時代から30年以上にわたり使われてきた練習場には多くの思い出や愛着もあるが、横須賀市とタッグを組み、チームの強化に向けて大きく舵を切った。

 プロジェクトが立ち上がったのは、今から約4年ほど前のこと。チーム統括部の上林遼さんが「野球のチームは日本だけではなく、韓国やアメリカにも行って、施設を見学させてもらいました」と話せば、同ファーム・育成部の桑原義行さんは「サッカーチームの施設を見に行ったり、バスケチームの施設を見に行ったり、他競技の施設からもアイディアをもらいました。僕も上林もたまたま完成の時にプロジェクト担当になっていますが、代々の前任者など色々な人の思いが引き継がれています」と振り返る。

「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」全体に通じるコンセプトは「1軍で活躍できる選手の育成環境を整えること」。横須賀スタジアムの真横に位置する屋外練習場は、1軍の本拠球場・横浜スタジアムの形状を再現した。両翼や中堅フェンスまでの距離、外野フェンスの高さに加え、マウンドの土、人工芝も横浜スタジアムにならった形状に。選手は自分が1軍でプレーする姿をイメージしながら練習に取り組め、実際に昇格すれば場所こそ違えど慣れた環境で実力を発揮しやすくなる。

 外光を程よく取り入れる特殊素材を使用した屋根を持つ屋内練習場は、圧迫感のない明るく開放的な雰囲気が特徴で、グラウンドの他に打撃ケージが複数用意されている。選手寮の隣に位置し、寮の玄関を出れば約15秒で到着。夕食を終えた後でも、選手は思い立ったらすぐに練習することができる。アクセスの良さは屋外練習場も同じ。こちらは玄関から20秒ほどで到着だ。

「選手間同士・スタッフと選手・スタッフ同士のコミュニケーションが起きる」空間作り

 建設に当たって、球団は実際に施設を利用する選手やトレーナー、スタッフらにヒアリングを実施。「『ここに屋根をつけてほしい』『素振りができるスペースがほしい』『練習施設へのアクセスをよくしてほしい』など色々な意見が出ましたね。その意見を参考に、寮を基軸としてグラウンドや室内練習場へのアクセスは非常に短くなりました」(上林さん)と、しっかり要望が反映された施設となっている。

 そして、施設内のメインとも言えるのが、洗練されたスタイリッシュなホテルを思わせる選手寮「青星寮」だろう。桑原さんは「デザイン性だけではなく、利便性という点でも、ベイスターズならではのこだわりがあり、誇りが持てる施設ですね」とキッパリ。青星寮を含む施設全体のデザインを担当したのは、横浜スタジアムに隣接する複合施設「THE BAYS」を手掛けたデザイン会社で、横浜と横須賀におけるコンセプトの繋がりが見える。

「横須賀は選手が過ごす場所ということで、本当に選手目線、スタッフ目線になって考え、デザインを固めていきました。家具メーカーさんもデザイン会社さんも一生懸命に、どうやったら選手のモチベーションが上がるか、どうやったら過ごしやすいか、色々な情報を集めて下さいました」(桑原さん)

「設計段階から色々な方に協力していただき、デザインやインテリアは我々の想像以上にカッコいい仕上がりになりました。当初、こちらからお願いしていたのは、選手が刺激を受けながら自立できる、選手間同士・スタッフと選手・スタッフ同士のコミュニケーションが自然と起きるような空間作りをしてほしいということ。それを見事に形にしてくれて、こんなに立派なものが出来上がるんだと完成した時は驚きました(笑)」(上林さん)

 地上3階建ての新青星寮には「ANCHOR(アンカー)」「MAST(マスト)」と名付けられた2つのトレーニングフロアと、治療をしながらトレーニングフロアを眺められる治療室「COMPASS(コンパス)」、屋根付きのテラスにそのままアプローチ可能な多目的利用できるコンディショニングルーム「D-DECK」を設置。選手がトレーニングに利用できるエリアは、以前は寮内に存在しなかったため、選手がいつでも練習できる環境を整えた。食堂やトレーニングフロアなど共用エリアは全てガラス張りで、屋外練習場、その先には横須賀スタジアムを望むことができる。コーチやスタッフが利用する管理棟も屋外練習場サイドに大きな窓が設置され、作業をしながら練習の様子を見られると好評だという。

横須賀市が全面サポート、公用車にはベイスターズのロゴも

「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」の設立には、横須賀市の大きなサポートは欠かせなかった。1軍が横浜スタジアムから始まる地域に根付いた盛り上がりを生み出しているのと同様、ファームでは「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」から始まる盛り上がりを横須賀の街に広げていきたいという。

「構想段階から横須賀市には大きなご協力をいただき、本施設の完成に至りました。また、オープンに向けて、最寄りの追浜駅から横須賀スタジアムへ来る沿道の電信柱にベイスターズ仕様のラッピングをしていただいたり、市の働きかけで駅前の商店街の方々や、京浜急行電鉄とも連携して追浜駅構内から商店街に至るまでベイスターズを盛り上げていただいています」(上林さん)

 7月25日には横須賀スタジアムで「追浜デー2019」を開催。8月16〜18日は「3Days Of Celebration Yokosuka」と題したイベントを開催するなど、地域と協力しながら新ファーム施設の完成を祝う予定だ。

 開国、そして造船の街として知られる横須賀に生まれた「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」。船の建造や点検などの施設、船渠という意味を持つ「DOCK」でしっかり育ち、1軍、日本を代表するプロ野球選手として大海原へ羽ばたいていってほしい。そんな願いが込められた場所であると同時に、「胸を張って『これがベイスターズの拠点です』と言える施設じゃないかと思います」(桑原さん)という自信作だ。

「青星寮を含むファーム施設は、プロ野球選手にとって最初に入る場所ですが、ここを出てからがプロ選手としてはメインとなる。そこで活躍するためにも、ここにいる間にしっかり知識や習慣、精神面も身につけてほしいですね。そして、ここを出た後でベイスターズの一流選手として活躍し、後輩たちが後に続くという施設になることを願っています」(上林さん)

 横須賀から横浜へ。ベイスターズの未来がつながっていく。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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