中日藤嶋が“凍える右手”から奇跡の復活 16試合連続無失点と成長支える「上原イズム」

中日藤嶋が“凍える右手”から奇跡の復活 16試合連続無失点と成長支える「上原イズム」

中日・藤嶋健人【写真:荒川祐史】

血行障害から復活し、ここまで16試合に登板し防御率0.00

 鬼気迫る表情でマウンドに立ち、仕事を終えると感情むき出しでベンチのハイタッチに応える。振る舞いまでも、憧れの人に似てきた。7月に1軍昇格後、中継ぎで抜群の存在感を放っている中日3年目の藤嶋健人投手。投手生命を脅かされた右手の血行障害から、自らも信じられないほどの復活を遂げた。底抜けに明るい伸び盛りの右腕は、今春現役を引退した上原浩治さんの背中を追いながら成長を続ける。

 異変は明らかだった。「手のひらに血の気がなくて。白っぽいというか、黄色っぽいというか…」。春季キャンプを控えた今年1月、右手が凍えるように冷たくなった。温暖なキャンプ地の沖縄に行けば改善するだろうという淡い期待を当初は捨てられず、周囲に変な心配をさせまいと「握手するときにすごく気を使いました」。だが、ブルペンにすら入れない状態では、まともな球春が迎えられるはずもない。無念さを押し込め、球団に相談。沖縄行きを見合わせた。

 検査の結果、右手首付近の2本の動脈が血栓でほぼ塞がっていたという。2月にカテーテル手術を受けたが、「通ったのは髪の毛1本分くらい」。期待したほどの改善は見られなかった。日ごと募る不安を振り払うように別の方法を検討し、約1か月後に群馬県の名医のもとで2度目の手術。痛々しいメスの痕が残ったのと引き換えに、症状は快方に向かった。一時は医師から「野球をやっている場合じゃない」と忠告されながら、6月には2軍戦で今季初登板。「奇跡っす。本当に」。藤嶋自身ですら想像できない未来だった。

今年現役を引退した上原に陶酔、密かなお願いごとも「僕、チキンハートなんでなかなか」

 防御率0.00。1軍昇格後は、リリーバーとして16試合連続で無失点を誇る。直球の球速は平均して2、3キロ速くなった実感があり「リリースがハマってきたのが大きいかなと思います」。球を放す位置に角度をつける意識で、昨季はプロ初勝利を含む3勝。その土台を作ったのが、上原さんのフォームを参考にしたことだった。球団関係者を通じて対面も果たし、身振り手振りで体の使い方や投げる際の感覚などを教わる機会もあった。当初は「頭で理解しても体で表現するのは難しい」と手探りだったが、確実に自分のものにしつつあることを、いまの結果が示している。

 日米通算100勝100セーブ100ホールドを達成した球界のレジェンドには陶酔しきり。「めちゃくちゃカッコいいですよね! やばいっす!」。5月には上原さんから引退報告の連絡をもらって驚いた。寂しい気持ちとともに「僕よりも連絡しないといけない人は多いはずなのに……」と感謝。何より「気にしているから頑張れよ」と言ってくれたことがうれしかった。圧倒的な実績や気迫全開のマウンドだけでなく、ひしひしと感じる男気や気遣いも見習いたいと切に思う。

 血行障害から復帰を果たした際には報告した。決して気軽に連絡できるような存在ではないが、いま密かにお願いしたいことがひとつある。

「上原さんと同じ登場曲にしたくて。使っていいですかって聞きたいんですけど、僕、チキンハートなんでなかなか……」

 試合終盤に「Sandstorm」が流れると球場は沸き、空気が変わる。メジャーでも、昨季の東京ドームでも。何度見てもしびれる光景を、いつか自分でも作り出したい――。勇気を持ってメッセージを送れば、あの曲がナゴヤドームで流れる日もそう遠くはないかもしれない。「上原さんみたいになりたいっす」。投げられない危機から救われた21歳は、さらなる高みを見据えて「上原イズム」を注入し続けている。(小西亮 / Ryo Konishi)

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