【あの夏の記憶】「主将よりチームをまとめる必要がある」―15年甲子園Vを支えた主務の“誇り”

【あの夏の記憶】「主将よりチームをまとめる必要がある」―15年甲子園Vを支えた主務の“誇り”

2015年夏の甲子園で優勝した東海大相模の当時マネージャーで現在東海大主務の加藤瞬さん【写真:編集部】

2015年夏に東海大相模で優勝、東海大4年の加藤瞬主務は大学でも日本一のマネージャーを目指す

 2015年夏の甲子園、東海大相模が左腕・小笠原慎之介投手(現中日)、右腕・吉田凌投手(現オリックス)を中心とした強力布陣で全国制覇を果たした。野手でも捕手で主将の長倉蓮、副主将の千野啓二郎、宮地恭平、杉崎成輝ら優勝メンバーが東海大に進学し、9月から大学最後の秋のリーグ戦を迎える。

 東海大に進んだのは、ベンチ入りメンバーだけではなく、当時、男子マネージャーとして裏方に徹していた加藤瞬も同じだ。主務として学生最後のリーグ戦、明治神宮大会での頂点を目指し、汗を流している。

 4年前、アルプススタンドで見た景色は忘れることはない。大会期間中の疲労はすべて歓喜で吹っ飛んだ。あんなにきつかったのに……。

「毎日が必死でした。すべてがしんどかったです。寝られない日もあったので。マネージャーは選手とは違うと教えられ、業務が厳しいことは覚悟はしていました。あの時の優勝は本当に嬉しかったですね」

 プレーする選手たちだけでなく、裏方の業務も激務だった。日々の練習後は道具整理に、データの管理。来客があれば、失礼がないように対応に追われる。マネージャーを志して入部したとはいえ、中学までは捕手として活躍。ティー打撃のトス上げ、キャッチボール相手は当然のことで、プロテクターをつけて、投手の球も受けた。

 当時は大会前から優勝候補と呼ばれていたため、メディアからの注目度も高かった。練習取材にも多く記者が来ていたため「熱中症にならないか心配していました」と目を配り、スポーツドリンクやゼリーなども配ってまわった。チームのことだけでなく、周囲への配慮が行き渡っていた。

 初戦の聖光学院戦(福島)は大会7日目の第1試合だった。宿舎にバスは午前5時にやってくる。前日の練習で使った道具整理を終え、データの管理を終えても、業務はまだ終わらなかった。メンバーの補食の準備、翌日の動きの確認などを周知させていると、加藤の睡眠時間はどんどん削られ、気が付けば夜が明けていた。

「自分は野球が大好きで、この仕事も好きでやっていました。体だって、疲れていない!と思っていたんですけど、あのときはもう食事が喉を通らないような状態でした」

 気は張っていても、体は正直だった。ただ、加藤にポリシーがあった。「やると決めたことは途中でやめない」ことだ。

「瞬は日本一のマネージャーです。あの時も今も」

 高校入学時、門馬敬治監督から「マネージャーという道もあるよ」ときっかけをもらってから、3年間、仕事を全うすると決めた。1学年上の代のマネージャーは勉強との両立が難しく、退部してしまった。だからこそ、加藤は学校の勉強もおろそかにはしなかった。

 それに仲間が必死で戦う姿を近くで見ていた。寮の隣部屋だった小笠原は夕飯を済ませた午後9時すぎにランニングに毎日のように出かけていた。ミーティングルームで集合した時だって、ただ話をしているだけなく、ゴムチューブを片手にインナーマッスルを鍛えていた。体のケアも細部まで、時間をかけてやっていた。自分ができる仕事を投げ出すわけにはいかなかった。

 そんな仲間と過ごす時間がたまらなく好きだった。プレーヤーではなくても輝ける場所がある。全国優勝を果たし、自分の仕事が誇りに思えた。大学に進んでも、やりたいことは、主務だった。迷わず、チームを支える仕事を選んだ。

「高校の3年間、大学の4年間、自分は主将よりもチームをまとめる必要があると思って、一体感を意識していました。相手の学校のマネージャーを見るのも楽しいんですよ。主務がしっかりしているところは強いチームができあがっているという印象があったりするんです」

 返事などの言葉の語尾、立ち振る舞いなど、礼儀や規律を重んじる仕事なだけに、そこにチームカラーが出るという。マネージャーにしかわからない“色”だ。

 そんなチームの顔ともいえる役割を、4年間、身を粉にして過ごしてきた。

 自分たちも思い出深い夏の甲子園も閉幕に近づく。選手だけなく、高校野球生活にピリオドを打つマネージャー、記録員などに伝えたい。裏方に徹した時間は、プレーヤーと同じかそれ以上に誇りを持てる仕事だということ、を。 

 高校時代から加藤を知る盟友で当時から遊撃のレギュラー・杉崎成輝が言う。

「(加藤)瞬は日本一のマネージャーです。あの時も今も」

 主務も立派な優勝メンバーの一人だ。球児たちの“あの夏の記憶”が、これからの自分自身の人生をきっと強くする。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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