【U-18W杯】「終わったと思った」右肘死球から念願のマウンドへ―浅田将汰という男

【U-18W杯】「終わったと思った」右肘死球から念願のマウンドへ―浅田将汰という男

南アフリカ戦に先発したU18代表の有明・浅田将汰【写真:荒川祐史】

25日の駒澤大学との練習試合で死球を受け、調整が遅れていた

■日本 19-0 南アフリカ(31日・機張)

 韓国・機張(きじゃん)で行われている「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(全試合テレビ朝日系列・BS朝日・AbemaTVで放送)は31日、侍ジャパン高校代表は南アフリカに19-0と圧勝した。先発の浅田将汰投手は8月22日の国内合宿以降、初めての実戦マウンド。初登板初先発だったが、5回ノーヒットピッチング。大会を主催する世界野球ソフトボール連盟(WBSC)は絶品のスライダーと公式ツイッターで紹介するほど注目を集めた。

 甲子園の出場はないが、今夏の熊本大会で最速150キロを記録するなど春からスカウトの注目を浴びた逸材。侍ジャパンのユニホームを着て、マウンドに立てる喜びを心から感じている。

 25日の駒大との練習試合でのことだった。「5番・DH」で先発した浅田は5回の打席で右肘に死球を受けた。スタッフに抱えられ、ベンチに下がった。永田裕治監督は6回表から浅田をマウンドに送る予定だった。しかし、計算が狂った。国内合宿の実戦3試合で登板しなかったのは浅田だけ。右腕も悔しい気持ちでいっぱいだった。

「当たった瞬間はもう終わったと思いました。すぐにアイシングをしましたけど、肘だったので。投げられないんじゃないかと思いました」

 永田監督は高校通算29本塁打の浅田の打撃も買っており、大学ジャパンとの壮行試合では「6番・指名打者」で起用した。しかし、思うように力が入らない。3打数無安打2三振。満員の大観衆で持ち味を発揮することができなかった。

 診断結果は打撲。死球から2日後の27日に投球練習を再開した。久しぶりの投球だったため、ボールも高めに浮いていた。渡韓は翌日。状態は戻るのか心配だった。

 29日の前日練習でもブルペン入り。浅田のブルペンが始まると、永田監督はすぐに状態を確認しに行った。決して、いい状態とは言えなかったが、指揮官は2戦目の先発起用を決めた。まだ実戦がないが、ここで起用のメドが立てられれば、佐々木朗希投手や奥川恭伸投手が本調子ではないため、浅田が大きなプラス材料となる。

 そして、2戦目のマウンドに立った。死球が当たった瞬間に終わりを見た男が痛みを押し殺して、国際大会デビューを飾った。

 格下だろうが、相手は関係ない。自分の投球をするだけだった。

「球が走っていなかったけど捕手のミットめがけて投げました。今日は行けるところまで行くぞと言われたので、自分のピッチングしようと思っていました」

 高く左手を上げる独特のフォームは父・秀之さんから教わったもの。腕を高く上げれば速い真っすぐが投げられる――そう信じた。150キロの速球があれば縦のスライダーも生きる。他にもカーブ、カットボール、ツーシーム、フォーク、チェンジアップと変化球は多彩。試合では19奪三振を記録したこともある。

 そんな逸材の世界大会デビュー戦は圧巻の投球で終わった。夏の熊本大会、浅田のいる有明は準決勝で熊本工に敗れた。代表発表までは約1か月あったが、選ばれてからでは体作りが遅れるため、敗戦の3日後から練習を再開。地元の社会人野球チームの練習に参加するなど、意識を高く持った。侍ジャパンのユニホームを着て戦うために、準備に準備を重ねた。死球による打撲でその夢を諦めそうになったが、浅田の気合が、約1か月ぶりの実戦マウンドをさらに輝かせた。

 悲願の世界一へ――浅田は欠かせぬピースとなる。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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