巨人は三塁、阪神は外野…FA市場“開幕”、各球団の補強ポイントと予算を確認【セ編】

巨人は三塁、阪神は外野…FA市場“開幕”、各球団の補強ポイントと予算を確認【セ編】

巨人・原監督(左)と阪神・矢野監督【写真:Getty Images, 荒川祐史】

DeNAの補強ポイントは「大きな差をつくれる選手」

 11月2日、今季のFA宣言選手が公示され、3日から各球団は宣言選手との交渉が可能になった。この【FA選手の最適球団はどこか】シリーズでは各FA選手にとってどの球団が最も戦力的にフィットするか、適した移籍先を探す。今回はその前提として、セ・リーグの球団にどういった戦力のニーズがあるか、また選手を獲得できるだけの予算が残っているかを確認していく。

 イラストは、各ポジションのリーグ平均を0とした場合、各球団がそれに比べ打撃・守備(投手の場合は投球)の働きでどれだけ差をつくったかを表したものだ。セイバーメトリクスの手法を使い、各ポジションの成績を試合における得点の単位に換算している。

 例えば巨人の先発投手であれば、打撃でリーグの平均的な先発投手が出場した場合に比べ、4.4点チームの得点を減らし(-4.4)、投球で13.9点失点を防いだ(+13.9)。合計でプラス9.5点の貢献という風に計算が行われている。値は投手も野手もプラスのほうが優れていると見てほしい。

【巨人】ニーズ:救援・二塁・三塁

 まず表の巨人の欄を見ると、救援・一塁・二塁でマイナスが大きくなっている。ただ一塁の弱点は岡本和真が三塁出場時に比べ、一塁出場時に成績を残せなかったことが原因だ。阿部慎之助が引退し岡本の一塁での出場機会が増加しそうなこと、クリスチャン・ビヤヌエバの退団が濃厚であることを考えると、一塁よりも三塁にニーズがあると考えるべきだ。

 二塁は吉川尚輝の故障により弱点になってしまった。吉川尚は来季の復帰が濃厚ではあるが故障の多い選手であるため、そのままで問題ないと言えるほど楽観はできない。可能であれば内野をマルチで守ることができる選手のニーズは高い。また救援も補強ポイントのひとつだ。ただ先発を補強することで、ローテーションから溢れた選手をブルペンに加えるという選択肢もあるため、救援の補強にこだわりすぎる必要はないだろう。

【DeNA】ニーズ:ポジション問わず他球団に大きな差をつくれる選手

 筒香嘉智の退団により左翼のプラスは失われる可能性がある。ただ筒香が抜けても梶谷隆幸、桑原将志、関根大気、細川成也など外野手の層は厚く、FAで大きなコストをかけて補強すべきポジションとはいえない。二塁と外野の弱いほうのポジションでネフタリ・ソトを起用するなど、運用で弱点を小さくすることも可能だろう。

 DeNAは全体的には弱点が少なく、あるポジションにそこそこの選手を加えたからといって劇的に戦力が向上するチーム状況ではない。費用対効果が悪くなるのを覚悟の上で、リーグを代表する大物選手の獲得を狙うなどでなければ、大きな戦力の上積みは得られない。

【阪神】ニーズ:一塁・遊撃・外野

 阪神は投手よりも野手、特に一塁・二塁・遊撃・外野でマイナスが大きい。ただこのうち二塁はレギュラーの糸原健斗以外の選手が出場した際の成績が数字を下げているほか、今季セ・リーグ二塁手のレベルが高かったことで、そこそこの成績を残したにもかかわらず平均を下回ってしまっている。糸原に故障などがなければ弱点と捉える必要はない。

 深刻なのは外野手だ。両翼を守ることが多い福留孝介、糸井嘉男はすでに42歳、38歳とかなり高齢になっており、さすがに衰えが隠せなくなってきた。来季にはさらにこのマイナスが膨らむ可能性も考えられる。長期間の活躍が期待できる外野手は是非とも獲得したい。

広島、中日、ヤクルトの補強ポイントは…

【広島】ニーズ:三塁

 今季は田中広輔の不調により遊撃が大きな弱点となった。ただ報道によると田中は右膝半月板を損傷したままプレーを続けていたようだ。故障が癒えた来季は回復を見込めるかもしれない。また仮に田中が完調でなかったとしても、将来有望な小園海斗の成長を待つのが妥当だろう。今季は弱点になったが、ニーズがあるとは言えない。内野でいえば、レギュラーが定まらない三塁でよりニーズが高い。

 広島の中で最もニーズが大きいのは外野だ。今季は長野久義、松山竜平、野間峻祥らの調子が上がらず、鈴木誠也、西川龍馬以外の外野手の貢献が乏しかった。ただこうした現状を見てか、チームは2日に新外国人選手ホセ・ピレラの獲得を発表。弱点に確実に手を打っている。

【中日】ニーズ:先発・捕手・外野

 中日最大の弱点は先発だ。極端に投手有利なナゴヤドームを本拠地としながら先発が非常に大きなマイナスを生んでいる。先発投手のニーズはセ・リーグで最も大きい。また捕手の攻撃力不足も大きな課題となっている。

 もしソイロ・アルモンテが退団となった場合、左翼は福田永将が務めることになりそうだ。大島洋平、平田良介とあわせて強力な外野陣を維持できるだろう。ただ福田は近い将来のFA権取得、平田は契約が残り2年、大島は今年34歳を迎えるなど、それぞれ中長期的にチームに貢献できるかは微妙な状況だ。長期的に活躍できる外野手は確保したい。

【ヤクルト】ニーズ:先発・外野

 今季はリーグワーストの防御率4.78を記録するなど失点が非常に多かった。ただこれは非常に得点の入りやすい神宮球場を本拠地としていたことが要因として大きい。投手陣は補強ポイントではあるが、表の値ほど弱点ではないと見るべきだ。

 本拠地が極端に打高環境であることを考えると、打撃でそれほどプラスをつくれていない野手のほうが大きな問題だ。特に外野は右翼が大きな弱点になっているうえ、ウラディミール・バレンティンはFA宣言こそしなかったものの契約切れ。さらに青木宣親が37歳、雄平が35歳と高齢化している。ニーズは非常に高い。

 内野はすでに遊撃・三塁を守るアルシデス・エスコバーの獲得に成功。現時点では遊撃・エスコバー、三塁・廣岡大志、一塁・村上宗隆という布陣が予想される。来季の戦力という点では三塁・遊撃のニーズも解消された。

セ・リーグ各球団の2020年残り予算を推測

 最後に各球団にFA選手を獲得できるだけの予算が残されているかを確認したい。イラストは現時点で退団報道が出ていない支配下登録選手の来季年俸(推定)をチームごとにまとめたものだ。未更改の選手については、今季の成績でどの程度年俸が上がるか、過去選手の成績と年俸の変動データから、機械的に予測した年俸を使っている。

【巨人】

 現所属選手の来季年俸は42.9億円と推測された。スコット・マシソン、阿部らの高年俸選手の退団があることで、現所属選手の昇給分を見込んでも、今季と比べ9.5億円の空きが生まれている。外国人選手を入れ替えてなお、FA選手の獲得に動く余裕がありそうだ。

【DeNA】

 高年俸の筒香が退団となるが、伊藤光の契約延長、好成績を残した選手の昇給にコストを割かれ、今季の規模からすると2〜3億円ほどしか予算の余りはないだろう。大物選手の獲得を狙うには例年を上回る予算が必要だ。

【阪神】

 鳥谷敬、ランディ・メッセンジャーなど高年俸選手の退団により、2018年に比べ10億円近い空きが生まれている。複数人のFA選手獲得に向かうことも可能な状況だ。

【広島】

 會澤翼の契約延長、鈴木誠也の年俸アップなどを見込むと、予算はすでに過去7年間の規模をオーバーしている。FA選手の獲得は難しそうだ。

【中日】

 2013年オフの落合博満GM就任以降はかなり予算規模が縮小された。それ以前の予算を確保できるのであれば大型補強も可能だが、ここ数年の状況を考えるとそれほど予算に余りはないと考えるべきだ。

【ヤクルト】

 バレンティンとの残留交渉資金を見込むと残された予算は多くない。市場に出た選手の中でも比較的安価な選手であれば獲得に動くことも可能かもしれない。(DELTA)

DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1・2』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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