元近鉄・金村氏が語る昭和のプロ野球豪快伝説 「一人私服でセカンドバッグ…」

元近鉄・金村氏が語る昭和のプロ野球豪快伝説 「一人私服でセカンドバッグ…」

軽快な語り口で各種メディアで活躍する金村義明氏【写真:佐藤直子】

新番組で「そこそこ昔」の1980年代〜90年代の野球界を爆笑回顧

 21世紀を迎え、野球界で最も大きく変化したことの1つは、選手の意識の変化にあるだろう。野球選手としてはもちろん、1人のアスリートとしての意識が高い選手が増え、それぞれに野球のスキルアップアップ以外にも、コンディショニングや栄養など自己管理を徹底する選手がほとんどだ。だが、まだコンプライアンス(法令遵守)という言葉が一般的ではなかった1990年代以前の野球界には、まことしやかな伝説が数多く残されている。軽快な語り口で各種メディアに引っ張りだこの元プロ野球選手、金村義明氏も、そんな時代に現役時代を過ごした。

 近鉄、中日、西武で18年間プレーした金村氏は、10月18日からAmazonプライムビデオで「プロ野球そこそこ昔ばなし」という新番組にレギュラー出演している。現役だった1980年代から90年代にあたる「そこそこ昔」の豪快、かつ衝撃のエピソードをMCのナイツを交えて披露しながら、元中日の山崎武司氏や元ロッテの里崎智也氏ら同時代を戦ったゲストと語り、大いに盛り上がる。

 18年のプロ野球生活の中で、様々な野球人と出会ってきた金村氏だが、最も豪快だった人物は誰だったのだろうか。

「この前、番組に出てくれた山崎武司なんかもラストサムライ的な豪快さを持つけど、僕の見ていた中では、栗橋茂という近鉄の4番打者が一番豪快でしたね。今も独身で藤井寺で飲み屋をやってるけど、現役時代は本当にお金を相当ばらまいた。女性に騙されてお金を払ったり、先輩にも金を貸したり。当時の芸人さんにも貸してましたよ(笑)。本当に優しくていい人で、それでもってキレると怖い人で。ウェートトレーニングなんてしたことがないのに、ヘラクレスみたいな体をしたパワー打者でした」

栗橋氏の豪快伝説の数々「みんなジャージを着て体操してるのに…」

 曲がったことが大嫌い。長いものには巻かれない。全てに対して0か100かで立ち向かう。そんなタイプだったという栗橋氏は、球界屈指の“大監督”として名高い故・西本幸雄監督にも言い返したことがあったという。

「師匠で頭の上がらない西本監督に『お前、手抜きしやがって!』なんて言われると、最初は『してません!』なんて直立不動で答えるんですよ。でも、3回くらい続いたら『してねぇって言ってるだろ!』ってぶち切れるような人でしたね。西本さんにも刃向かっていました」

 かつての選手はお酒に関するエピソードに欠かない。栗橋氏もまた驚くようなエピソードに溢れているようだ。

「東京遠征に行くと、当時は田町の第一京浜沿いに宿舎があったんですよ。栗橋さん、酔っ払うと道路のセンターラインにある生け垣の中に立ってバットを振ってね。深夜、通り過ぎる車のライトをボールに見立てて、車が向かってくるたびにバット振って(笑)。なんちゅう人や。

 キャンプの時も朝、みんなジャージを着て体操してるのに、栗橋さんだけ一人私服でセカンドバッグ持ったまんま体操してました。おそらく、体操の時間には遅れないように帰ってきたんでしょうね。一応そこにはいるけど、バレバレ(笑)」

 金村氏曰く「板橋の十条出身で、高倉健さんの映画は『網走番外地』から全部見ていた」という栗橋氏は、近鉄入団後も「一切標準語が抜けない。今も染まらず、藤井寺でお店やってますよ」という意志の強さの持ち主。毎年オフには車の免許を取ろうを教習所に通い始めるが、「教官から上から目線で物を言われると、すぐぶち切れて辞めるんです」。結局、現役引退後もしばらく経つまでで免許はなく、金村氏が運転手を務めていたこともあるという。「昭和の豪快な伝説の人。大好きな先輩です」と語る目は、愛情に溢れている。

「NOMOベースボールクラブ」の理事として野茂氏とは毎年必ず再会

 もう1人、毎年必ず会う大好きな後輩がいる。それがメジャーでも活躍した野茂英雄氏だ。野茂氏が代表理事を務める「NOMOベースボールクラブ」に金村氏も理事として参加。「野茂の方が年は下なんですけど、ずっと先輩を立ててくれるんでね」と、うれしそうに目尻を下げる。

「僕は野球を辞めた後、なかなか大変な時期もあったんですが、その時も野茂がいたから頑張れたというのはあります。パイオニアとして一人で海を渡ってメジャーに行って、あれだけ頑張って成績残してね。野茂はみんなの太陽であり、頑張れる源でもありました」

 毎年、NOMOベースボールクリニックとNOMO CUPが開催される時期になると、かつて近鉄でともに戦った仲間が集合する。

「参議院議員になった石井浩郎は来れなくなりましたけど、光山(英和)、赤堀(元之)、野球を離れてトレーナーになった池上(誠一)や小池(秀郎)なんかも来てくれます。集まって飲めば、近鉄がセコかった話とか、アホほど飲んだ話とか良く出ますよね。みんな意外と記憶力がいいんですけど、都合のいいことばっかり覚えてるから、僕が全然覚えていないこともあったりしてね。そんなん言うたかな? ムチャクチャやったなぁ、みたいな(笑)」

 野球が繋いだ縁は、年月を経ても途切れない力を持っている。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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