阪神に苦い過去? いざという時の助けになる「隠れ捕手」

今季は一塁手で出場の原口が10日巨人戦で途中出場から初マスク

 今月10日の巨人戦で、阪神は8回表に原口を代打で起用し、その裏にはマスクをかぶらせた。原口は捕手で選手登録されているが、今季は一塁手で起用されている。捕手としては初めての出場だった。

 NPBでは、捕手数は支配下登録の1割前後と相場が決まっている。70人の支配下では7人が標準的だ。12球団の捕手の登録数は、日本ハム7人、ソフトバンク8人+育成枠2人、ロッテ7人、西武7人、楽天8人、オリックス5人+育成枠2人、広島8人+育成枠1人、巨人7人+育成枠2人、DeNA5人+育成枠2人、ヤクルト7人+育成枠1人、中日7人+育成枠1人。阪神も標準的な7人体制だ。

坂本誠志郎(23)履正社高-明治大
長坂拳弥(23) 高崎健康福祉大高崎高-東北福祉大
梅野隆太郎(25)福岡工大城東高-福岡大
小豆畑眞也(28)長良高-中部学院大-西濃運輸
岡ア太一(33) 智弁学園高-松下電器
小宮山慎二(31)横浜隼人高
原口文仁(25) 帝京高

 以上が阪神の捕手陣。しかし、実は他の野手登録の元捕手が3人もいる。

捕手から転向し大成した選手も

 内野手登録の今成亮太は、2005年のドラフト4位指名で浦和学院高校から日本ハムに捕手として入団。1軍では56試合にマスクをかぶったが、今は主として三塁を守る。外野手登録の中谷将大も2010年のドラフトで3位指名を受け、福岡工大城東高校から阪神に捕手として入団。しかし2012年には外野手に転向している。今年は中軸を打つことが多い。同じく外野手登録の狩野恵輔も2003年のドラフト3位で前橋工業から阪神に捕手として入団。一時期は正捕手でもあったが2011年に外野手に転向。今は代打の切り札だ。

 3人に共通するのは打撃がいいこと。打力を活かすために他のポジションにコンバートされたのだ。

 古くは江藤慎一、衣笠祥雄、田淵幸一、最近でも山ア武司、和田一浩、小笠原道大、捕手から他のポジションにコンバートされて、打者として大成した例は結構ある。阪神の場合も、そういう形の「配置転換」ではあろう。

 原口文仁もその方向でコンバートが考えられているのだろう。しかしそれだけでもないようだ。

過去に苦い経験も…

 5月10日の試合もそうだが、試合がもつれた展開になったときに、捕手に代打を送るケースがままある。また試合中にファウルチップが当たるなどして捕手が退場することもある。ベンチ入り捕手は2〜3人だ。展開によっては捕手がいなくなって窮地に陥る可能性もあるのだ。そういう時に捕手経験のある野手がいれば重宝する、という考えもあるようだ。

 実は阪神は、昭和の時代、苦い経験をしている。1977年4月30日、川崎球場の大洋戦で、正捕手田淵幸一がファウルチップで負傷退場、控え捕手の片岡新之介に交代したがこれまたファウルチップで負傷、もう一人の控え捕手大島忠一はすでに代打で使っていたため、8回の時点で捕手がいなくなった。

 阪神ベンチは茫然としたが、捕手の経験が全くない外野手の池辺巌が申し出てマスクをかぶることになった。池辺は投手の古沢憲司と組んで、2イニングを無難に抑えたが、捕球のたびに顔をそらす池辺の苦しそうなシーンは「プロ野球ニュース」などで何度も流された。

 阪神は、こういうこともあって“保険”の意味で「隠れ捕手」を用意しているのではないか。今年は9点差の試合をひっくり返すなど、異様な粘りを見せる阪神。もつれた展開で「隠れ捕手」がマスクをかぶる機会が出てくるかもしれない。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

関連記事(外部サイト)