昨夏から大きく成長した2人のエース、強豪ひしめく“投手王国”兵庫がアツい

昨夏から大きく成長した2人のエース、強豪ひしめく“投手王国”兵庫がアツい

市西宮エースの山本拓実【写真:沢井史】

市西宮エースの山本は小柄ながら威力ある速球投げる

 毎年多くの好投手が点在し、“投手王国”とも言われる兵庫県。27日に夏の兵庫大会の組み合わせ抽選会が行われ、4回戦までの対戦カードが決まった。センバツ4強の報徳学園や昨秋県優勝の神戸国際大付、明石商、社など実力校がひしめき合う中、今夏も揃う好投手たちが、夏の激戦を盛り上げそうだ。

 この春の県大会で最も注目を集めたのは、市西宮エースの山本拓実だ。市西宮といえば、甲子園大会の開会式で女子生徒が出場校のプラカードを持って行進することでも有名だが、今夏は野球部にも熱視線が送られている。

 今春の県大会ではベスト8まで上り詰めたが、その原動力となったのがエースの力投だった。167cmと小柄ながら体をいっぱいに使った力感のあるフォームで、威力のある速球を投げ込む。昨夏の県大会では参考記録ながら8回ノーヒットノーランを記録したことがある右腕は、今春の県大会のマウンドでもその片鱗を見せつけた。県大会の準決勝では、敗れはしたが、センバツ4強の報徳学園を相手に5回まで無安打に抑え、3安打2失点。鋭く切れるスライダーや深く沈み込むカーブも武器で、インコースを強気に攻め抜くピッチングも持ち味だ。

 昨秋は地区大会で敗退。パワーをつけるために2リットルのタッパーに白米を詰め込むなど1日6合の白米をほお張り、スクワットなどのトレーニングで体作りに励んだ。入学時は53キロだった体重が、今は68キロまでアップし、体幹も安定。6月上旬の練習試合では最速147キロをマークした。さらに6月下旬に行われたセンバツ王者・大阪桐蔭との練習試合では、強力打線を7回3安打3失点に封じ込めた。敵将の西谷浩一監督は「投げっぷりがいい。あれだけの投手は大阪にいない」と絶賛。本人は「日本一の打線でしたが、ストレートの力で押せた場面はありました。粘られて球数が増えてしまったのは課題」としながらも「夏は今までの全てが出る大会。どんな相手でも勝たないと次はないので、どの試合でも自分の気持ちを全て出せるようにしたい」と大一番を見据えた。

名門・育英エースの野上、昨秋の悔しさをバネに奮起

 そしてもう1人、今春の県大会で評価を上げた右腕がいる。名門・育英のエース、野上諒だ。昨秋の近畿大会では初戦で履正社を相手に8回で14安打を浴び、8失点でコールド負け。打ち込まれたショックを引きずり「食欲がなくなって体重が3キロも落ちてしまった」と本人は振り返る。安田聖寛監督も「責任感が強くて、自分が抑えないと、という気持ちが強すぎたのでは」。

 冬場はまずその体重を取り戻し、走り込みやトレーニングで下半身を鍛え直した。今春の県大会ではストレートにキレが増し、空振りを奪えるシーンが増えた。指揮官も「ストレートの威力がついたし、ピッチングにメリハリがつけられるようになった」とエースを評価。6月末に行われた履正社との練習試合では、6回途中で足がつり無念の途中降板となったが、強打者・安田尚憲から2打席連続三振を奪うなど、5回2/3を投げ6安打3失点だった。

 秋のことを思うとまずまずの内容ではあったが、試合後の野上の表情は晴れやかではなかった。もちろん、途中降板に対する悔しさもあったが「今日は1点もやらないつもりでした。秋より抑えられたことは良かったけれど、(ミスからの失点に)味方のミスをカバーできなかったことが反省点です。夏は何が起こるか分からないので、ミスを取り返すことができるピッチングをしないといけない」と自己に厳しい。それでも「今日のピッチングで自分はまだまだだと感じました。ここから夏に向けてさらに上げていくだけです」と、さらなるレベルアップを誓った。

 私学、公立と実力校が名を連ねる兵庫大会は今夏も楽しみな要素が多い。7月8日に明石トーカロ球場で開会式が行われ、神崎VS三木の開幕試合を皮切りに熱戦の火ぶたが切って落とされる。

沢井史●文 text by Fumi Sawai

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