【MLB】11年ぶり日本人選手ゼロも…首位走る強豪Rソックスに日本人スタッフの存在

【MLB】11年ぶり日本人選手ゼロも…首位走る強豪Rソックスに日本人スタッフの存在

レッドソックスでコーチを務める百瀬喜与志氏【写真:Getty Images】

パイレーツからヘッドハンティングされた百瀬喜与志コーチ

 2007年に松坂大輔(現ソフトバンク)と岡島秀樹が入団して以来、10年連続で日本人選手が在籍したレッドソックスだが、昨オフに上原浩治(現カブス)と田澤純一(現マーリンズ)がFA移籍し、今季は11年ぶりに日本人選手が誰もいなくなった。だが、舞台裏に目を向けてみると、実は3人の日本人スタッフが活躍している。アシスタント・アスレチックトレーナーの高橋真彩氏、マッサージ・セラピストの内窪信一郎氏、そしてヘッド・ストレングス&コンディショニング・コーチを務める百瀬喜与志氏だ。

 ア・リーグ東地区首位を走るチームを支える3人は、マイナーから叩き上げた高橋氏、上原専属スタッフから請われて球団スタッフになった内窪氏、パイレーツからヘッドハンティングされた百瀬氏と、球団スタッフになった経緯はさまざまだが、共通しているのは選手をはじめ球団からの信頼が厚いことだ。

 ヘッドハンティングという、これぞアメリカという形でレッドソックス入りした百瀬コーチだが、その才能を最初に認めたのは、他でもないファレル監督だった。2014年11月に行われた日米野球で、当時パイレーツに所属していた百瀬コーチはMLB代表チームに同行。代表チームを率いたファレル監督は、ネイティブレベルのスペイン語と英語を操りながら丁寧に指導する姿に驚かされ、レッドソックスに獲得を進言したという。

 百瀬コーチの経歴はユニークだ。日体大を卒業後、海外青年協力隊としてコスタリカで野球の指導をした。スペイン語を覚えたのは、この時だ。その後、アメリカの大学で運動生理学を学び直し、デビルレイズ(現レイズ)を経て2001年にパイレーツ入り。マイナーリーグ担当コーチとしてドミニカ共和国やベネズエラのアカデミーまで足を運び、ポランコやマカッチェンら現主力選手の成長を後押しし、桑田真澄や岩村明憲、五十嵐亮太らが所属した時もサポートした。2013年の第3回WBCでは、ドミニカ共和国代表チームのトレーナーとして、優勝を経験している。

選手も感謝、サイ・ヤング賞右腕も絶大な信頼「しっかり説明してくれる」

 2015年オフ、レッドソックスに“移籍”した百瀬氏が、まず最初に取りかかったのが各選手と連絡を取り合うことだった。2014年11月に4年8800万ドル(約97億9000万円)の大型契約を結びながら、移籍1年目は期待通りの成績を残せなかったハンリー・ラミレスの場合、ドミニカ共和国まで直接会いに行き、進むべき方向について話し合った。気まぐれなラミレスのモチベーションをどう上げたらいいのか。飽きないように工夫したメニューを作り、継続させる努力をした。その結果、2016年、ラミレスは147試合に出場し、打率.286、30本塁打、111打点と復活を遂げた。

 百瀬氏との出会いに感謝しているのはラミレスだけではない。昨季22勝4敗、防御率3.15の成績でサイ・ヤング賞に輝いた右腕リック・ポーセロもその1人だ。

 今季はここまで思うような成績が残せず「支えてくれるスタッフに申し訳ない」と話すポーセロだが、昨季はローテを外すことなく223イニングを投げる堂々たる活躍。「健康に投げ続けるためのトレーニングメニューを作ってくれるんだけど、このトレーニングはどういう目的がある、こっちはこういう目的、という詳細を、しっかり説明してくれるんだ。だから、自分でも意識しながらトレーニングに臨めるし、何か質問があったり、変更を加えたい時は、いつでも耳を傾けてくれる。双方向でやりとりをしながら納得した上でトレーニングを進められるのは、キヨシが初めてかもしれない」と、大きな信頼を寄せる。

 百瀬氏は「リックはいいヤツだから、そういってくれるんですよ」と笑うが、今季からマーリンズへ移籍した田澤純一もしかり。移籍が決まった後の昨オフ「もう別の球団なのに、メニューを作ってくれて、何かあったらいつでも声掛けてって言ってくれました」と感謝の念に堪えない。

 移籍1年目の昨季は、レッドソックスがどんなチームなのか、選手はそれぞれどんなタイプなのか、内部から観察することに大半の時間を割いたという。その結果として見えてきたのが、チームや首脳陣主導だったパイレーツに対し、レッドソックスは選手主導のチームだということだ。

信頼関係構築に費やした1年間、「既存のスタイルを生かしながら」

「GMが代わったからかもしれませんが、レッドソックスは意外と選手任せな部分がある。パイレーツの方が球団主導だったように思います。だから、球団として『これをやりなさい』というのではなく、個々で目指すものは何かを知り、そのためには『こういうトレーニングをしていこう』というアプローチになります。

 僕が来る前から、レッドソックスのやり方がある。そこへいきなり新しいものを放り込んでも反発が起きるだけ。既存のスタイルを生かしながら、よりよいスタイルに変えていくか。いきなり他球団からやってきた僕に対して『コイツ何ができるんだ?』っていう目が向けられるのは当然。選手や首脳陣の信頼を獲得していくためには、何かを大ざっぱにやるのではなく、やっぱり個々とのコミュニケーションが必要だと思うんです。去年は信頼関係を作るために費やした1年かもしれません」

 怪我をしない身体作りができれば最高だが、レギュラーシーズンだけでも162試合を戦い、その上にスプリングトレーニングやプレーオフが加わることを考えれば「怪我は付きもの」と割り切らざるを得ないこともあるという。

「怪我が起きるのは仕方のないこと。起きた後の対処ですよね。回復具合は個々によって違うので、いかにその選手にあったプログラムを作るか。休むこともトレーニングの1つとして組み込んだ方がいい選手もいるし、手を抜かないように側で見ていた方がいい選手もいる(笑)。

 ハンリー(ラミレス)はお尻を叩かないとやらないタイプ。今年はもっと出来るはずなんですけどね。若い選手が台頭してきていますから、彼とパブロ(サンドバル)が中心選手としてより強い自覚を持ってくれると、もっといいチームになると思ってます」

 現在、ア・リーグ東地区首位を走るレッドソックス。日本人選手は所属していなくても、その影には日本人スタッフのサポートがあることを知ると、また違った見方ができるかもしれない。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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