清宮、「強打」の甲子園後も揺らがぬ評価 「彼の本塁打は“ブーム”でない」

清宮、「強打」の甲子園後も揺らがぬ評価 「彼の本塁打は“ブーム”でない」

2015年の侍ジャパンU-18代表に選出された清宮幸太郎【写真:富樫重太】

甲子園で本塁打増も早実・清宮のレベルは「違う」、専門家が見る「凄さ」

 第99回全国高等学校野球選手権大会は花咲徳栄(埼玉)の初優勝で幕を閉じた。今夏の大会で大きな話題となったのが、高校球児たちの「打力」。全48試合で通算68本塁打が飛び出し、2006年の第88回大会で記録された史上最多大会通算本塁打数60本を大幅に更新。準優勝となった広陵(広島)の中村奨成捕手は、1985年に清原和博(PL学園)が残した1大会の通算最多本塁打記録(5本)を更新する6本塁打を放ち、一躍、今秋ドラフトの最注目選手の一人となった。

 ただ、大会前に最大の注目を集めた男は、甲子園にはいなかった。史上最多タイ記録の高校通算107本塁打を放ってきた清宮幸太郎内野手擁する早実は、西東京大会決勝で東海大菅生に完敗。世代NO1と言われ続けたきた強打者がいない聖地で躍動した選手たちが、強烈な存在感を見せつける形となった。

 それでも、清宮に対するプロの絶大な評価は揺らがない。

 名将・野村克也氏の“右腕”としてヤクルト、阪神、楽天でヘッドコーチや2軍監督を務め、鳴り物入りでプロ野球の世界に飛び込んできた若手選手も数多く指導してきた松井優典氏は、清宮について「彼は甲子園でホームランが増えたというのとは全く違う“分野”でホームランを量産した選手」と表現する。その打撃は違うレベルにあるというのだ。

「清宮君のホームランは技術(の結果)だと思います。これだけ甲子園でホームラン、ホームランと騒がれている。一方で、清宮君は高校に入ってから107本を打った。でも、誰も清宮君も“ブーム”でホームランを打ったとは捉えていません。『彼が打ったんだ』と思っています。私は技術で打っていると思っています」

 例えば、広陵の中村は清宮の“専売特許”だった「本塁打数」で甲子園に新たな歴史の1ページを刻んだが、同選手と清宮の違いは何か。松井氏は、中村について「(プロでも)即戦力です」と絶賛しているが、清宮の凄さは全く別の部分にあるという。

清宮の高い打撃技術「ちょっと考えただけですぐに3つは出てくる」

「清宮君と中村君とでは、走りが違う。足のスピードが違う。基本的に、足の速い子は、筋力がいいから速い。いくら背が小さくても、足が速い選手はパワーがあるものです。そして、スピードは天性のもので、鍛えてもなかなか速くならないものですが、筋トレのベンチプレスは50キロしか上がらなかった人が100キロまで上がるようになります。高校生でもあれだけ筋トレなどをやっていて、凄い体の打者がいっぱい出てきました。ただ、清宮君はそこまではやっていないのか、体はまだ“筋骨隆々型”じゃない。そういう風な捉え方をした時に、彼は技術で打っている。

 もちろん、清宮君も体が大きく力はあると思いますが、『瞬発力』と言われる力がないように見えます。正直、プロに入れば、瞬発力が足りない。例えば、山田哲人(ヤクルト)を見てみたら、あれだけのホームランを打てているのは、瞬発力の凄さがあるから。ちょっと前で言えば、池山隆寛もそうでした。ただ、清宮君は技術と力。だから、プロ野球に入った時にどんなタイプのバッターになるのかと考えた時に、技術の打者になるかもしれない」

 山田がヤクルトに入団した時、松井氏は2軍の育成コーチと寮長を兼務していたため、その“素材”についてはよく理解している。ただ、清宮は全く異なったタイプの打者だという。そして、甲子園でホームランが大量に飛び出した背景には、選手のトレーニングの変化による筋力の向上などもあるとされている中、清宮のレベルは「違う」ところにあると指摘する。

 では、清宮の「技術」の凄さはどこにあるのか。現在、中学生にも野球を教えている松井氏は「参考になるので、彼の打撃はよく見ています」とした上で、明確に説明した。

「やっぱり、いい形で打つ。技術の高さを感じます。そんなに無茶苦茶に力んで打つホームランはない。ポーンと打つ。彼がリトルリーグの世界大会でホームランを打った時の映像もニュースで見ましたが、ああいう感じは、その時から変わってない。技術的に優れている。

 一言でいったら、あれだけ体が前に出ないバッターはなかなかいない。インパクトが柔らかい。インパクトについて、みんな『ポイント』で打つと言いますが、バッティングは『ポイント』なんかで打ったら駄目と私は思っています。できるだけ『ゾーン』と言われる範囲の中で打つことが大事。彼はそれが出来る。そして、そこで『バットを払う』という感覚があるのですが、清宮は『ガツン』と叩くのではなくて、ソーンの中で『バットを払う』という感覚がある。体が前に出ない、インパクトが柔らかい、前の肩(右肩)が開かない。手本になるような部分が、ちょっと考えただけですぐに3つは出てきます」

筒香よりも清宮のほうがセンスは上?

 そして、このままプロになれば、強打者ではなくて巧打者になる可能性が高いのではないかと見ている。

「過去のタイプでは同じ左打者なら松井秀喜選手も思い浮かびますが、ちょっと違う。松井選手は(プロ入り当時は)どちらかと言うとバッティングフォームは良くなかった。清宮君のようなフォームで打つバッターは(元巨人の)篠塚和典選手とか、そっちを思い出してしまう。巧打者ですね。

 あと、高橋由伸選手(現巨人監督)。清宮君は高校通算107本塁打で騒がれています。高橋選手も東京六大学リーグの通算本塁打記録を売りにして入ってきたど、プロではホームラン王にはなれなかった。そういう形になる可能性もある。現役では、筒香嘉智選手(DeNA)に似ていますね。ただ、筒香選手よりも清宮君のほうがセンスとかは上だと思います。筒香選手のほうが『ポイント』で打っている」

 もちろん、まだ筋力トレーニングが足りていないと松井氏が見ている清宮が、プロの世界に入り、体を鍛え上げれば、技術とパワーを兼ね備えた強打者になる可能性も十分にある。

「現時点では巧打者ですが、彼がプロに入って筋力トレーニングをした時に、どこまでホームランバッターとして成長するのか、楽しみではあります。彼はベースがしっかりとある打者。瞬発力は足りないけど、これだけ打っているということは、もちろんゼロではない。

 筋力アップして、贅肉を落として、シャープになる。プロでは、そういうことができます。そうなってきた時にホームランバッターとしての素材が一気に開花する可能性を秘めた選手でもある。(プロ出身の)我々とすれば、(高卒で)プロに入ってほしい選手です」

 プロが極めて高い評価を与える清宮。そして、同じ世代に力のある強打者が多くいることも、この甲子園で証明された。1999年生まれの選手たちがどんな成長曲線を描くのか、これからも注目が集まる。(Full-Count編集部)

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