「日本のレベルはそれだけ高い」とバース氏 侍J飛躍へ名手たちが秘める思い

「日本のレベルはそれだけ高い」とバース氏 侍J飛躍へ名手たちが秘める思い

元阪神のランディ・バース氏【写真:山岡則夫】

侍ジャパンが世界で勝つために―名手たちが秘める思い

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)や追加種目として復活したオリンピックなど、世界での活躍、勝利が求められる野球日本代表「侍ジャパン」。多くの猛者が集う世界の強豪と渡り合うためには、準備と覚悟が必要になる。

 今月7日に東京ドームで開催された「サントリードリームマッチ」。このイベントに参加した元スター選手たちも「侍ジャパン」に対してそれぞれ強い想いを持っていた。

 世界の選手たちと渡り合っていくためには、日本独自の戦い方を突き止める必要がある。「スモールベースボール」、「守って勝つ」……。様々なところで聞かれる言葉であるが、そこは百戦錬磨の名選手たち。「俊足が売り」のイメージが強い元大洋・屋鋪要氏(※1)からはいきなり意外な答えが……。

「よく『スモールベースボール』と言われるけど、あまりそれだけにこだわり過ぎない方が良い」

 そう話す屋鋪氏は「基本的には、走者を出して、最終的には打って点を取らないと勝てない。少ない得点を守り抜くのはもちろん大事。だけどそれだけじゃなく、1点でも多く得点することを考えたい。そういう野球を大事にすることも重要だと思う」と続けた。

「だから子供たちにも、野球教室の時など走塁のことはあまり教えない。僕自身もバントはあまりしなかったし、打席では『しっかり振ってライナーを打つ』ことを考えていた。まずは打ち返すこと。それができて初めて得点できるし、少ない得点を守り抜くことができる」

スター選手の存在が不可欠だと語る水野氏

 体格など、一朝一夕では埋められない問題も現実にはある。元広島・西山秀二氏(※2)は捕手の視点からか、こう話す。

「やっぱりどうしても投手力が大事になる。現実的には『最少失点で抑えて勝つ』しかないんじゃないかな……。外国人相手にパワーでは勝てない。少ない点差を抑えるしかない。もちろん将来的にはパワーとかそういった部分でも対応したい。でも現状、結果を求めるとするならば、理詰めで考えたり、いろいろとやらないといけないんじゃないかな」

 やはりスター選手の存在が不可欠だと語るのは水野雄仁氏だ(※3)。

「清宮君(幸太郎・早実)みたいな選手が出て来た。誰もイチロー(マリナーズ)みたいな打者が出て来るなんて思わなかった。長嶋(茂雄)さんや王(貞治)さんがそうだったように、憧れて目指したくなるようなスゴい選手が出て来て欲しい。それが日本の実力アップにもつながると思う」

「最近で言うと巨人の(坂本)勇人とかね。彼らを見ているファンの視線はやっぱり違う。そういう選手を目指して一生懸命にがんばる。それが本当の意味での底辺拡大にもつながる。野球人口がどんどん増えていけば、いい人材も集まるし育つ。時間はかかると思うけど、野球界の未来を見据えて、球界一丸となってやっていくべきことじゃないかな」

日本人選手のチェックを欠かさないというバース氏

 高校時代は中心打者として大活躍。プロ入り後は一転し、「くせもの」と呼ばれるほど、相手に嫌がられるプレーを目指して来た元巨人・元木大介氏(※4)の見解はこうだ。

「現実的なことで言うならば、状況をしっかりと考えてプレーすること。そのためには自己犠牲もいとわないことが大事。やはり日本代表に選ばれるのは各チームの主力選手ばかり。普段とは異なる役割が求められる。時には自分を押し殺して我慢しなくてはならないば状況も出て来る。それができるか。選手自身の気持ちの持ち方も重要になる」

 状況判断を徹底して来た選手の言葉だけに重みがある。

 元阪神・ランディ・バース氏(※5)にも考えを聞いた。心から日本代表を応援しているという同氏は今でも日本人選手の活躍を特に注目し、チェックを欠かさないという。

「世界、メジャーを経験した選手の存在も重要。今ならダルビッシュ(有・ドジャース)や田中将大(ヤンキース)。もちろん実際に対戦した経験もだけど、ものスゴい重圧の中で戦っているというのが力にもなる。特に田中なんてそう。そういう選手がチーム内にいることがいざという時に力になる」

「技術的なことや戦術的なことはそこまで考えなくてもいいのでは。日本のレベルというのはそれだけ高いものがある。どこまでメンタルを強く持てるか。特に短期決戦はそこが重要になるからね。日本がいい結果を残せることを祈っているよ」

中畑氏「『時の運』っていうのもある」

 2004年のアテネ五輪では監督代行として指揮を執り、日の丸の重みを誰よりも知る元巨人・中畑清氏(※6)は選手、関係者の本音を代弁しているようだった。

「でも、世界で勝つのは『時の運』っていうのもあるしな……。『絶対に勝てる』というのがあれば、誰もがそれをやるわけだし……。だけどそれが結果に確実に結びつくかわからないというのがね……。今でも本当にいい試合をしていると思うから、このまま頑張って欲しいね」

「それに『メダルを獲ることがすべて』とも思わない。もちろん『勝つこと』は大事。でも結果までの過程において必死でやる姿勢を見せてくれればいいと思う。甘いかもしれないけど……。それだけの重圧の中で選手たちは懸命にやっている。周囲の我々もしっかりサポートしてあげたいよな」

 侍ジャパンの動向には日本中が注目する。普段、野球にあまり関心がなくとも、オリンピックなどと同様、結果を求める。そんな中でプレーする選手たちには、とにかく故障なく、最高のパフォーマンスを発揮して欲しいものだ。

 最後に、「浪速の春団治」川藤幸三氏(元阪神※7)が締めてくれた。

「もうね……、リタイアしてから30年以上経つのに、何が打ってみたいやねん(笑)。そんな大それた考えもっとらせん。だから今の連中がどんどん成長して高いレベルの野球をするのを見るのが、わいの夢みたいなもんや。その中で、たまに世界一になったりしてくれる。それで十分やで」

 日本球界を見守る優しい好々爺の視線がそこにはあった。

※1:屋鋪要(元大洋、巨人)
右投両打。NPB通算1628試合出場、4263打数1146安打、58本塁打、375打点、327盗塁。

※2:西山秀二(元南海、広島、巨人)
右投右打。NPB捕手通算1145試合出場、守備率.995、盗塁阻止率.374。ベストナイン2回、ゴールデングラブ賞2回。

※3:水野雄仁(元巨人)
右投右打。NPB通算265試合出場、39勝29敗17セーブ、防御率3.10。

※4:元木大介(元巨人)
右投右打。NPB通算1205試合出場、3397打数891安打、66本塁打、378打点。

※5:ランディ・バース(元阪神)
右投左打。NPB通算614試合出場、2208打数743安打、202本塁打、486打点。三冠王2回(85、86)。

※6:中畑清(元巨人)
右投右打。NPB通算1248試合出場、4838打数1294安打、171本塁打、621打点。

※7:川藤幸三(元阪神)
右投右打。NPB通算771試合出場、895打数211安打、16本塁打、108打点。(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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