新人王候補の中日京田を変えたもの 打撃の転機、そして“同期”からの刺激

新人王候補の中日京田を変えたもの 打撃の転機、そして“同期”からの刺激

中日・京田陽太【写真:荒川祐史】

攻守で活躍の中日ルーキー遊撃手・京田、プロ入り後に腑に落ちた恩師の教え

 シーズンも佳境を迎え、ペナントレースと共に各賞の行方も話題に上る。その中でも、早くからセ・リーグ新人王最有力候補と注目されているのが、中日のドラフト2位ルーキー、京田陽太内野手だ。広い守備範囲を誇る新人は開幕から遊撃を任され、ここまで117試合に出場。盗塁数はリーグ3位の21、打率も.270という数字を残すなど攻撃面でも大活躍するが、意外にも大学時代はバッティングに全く自信がなかったという。そんな京田を変えたものは何だったのかー。ルーキーに話を聞いた。

 自信がなかったバッティングに対する意識が変わったのは、大学4年時に日米大学野球の日本代表に選ばれたことがきっかけだったという。同世代のトップが集まる場。プロを目指す選手も多く、彼らの話は新鮮だった。

「いろいろな選手と話をして『このままじゃだめだ』と思いました。パフォーマンスはもちろんですが、みんな意識が高く、自分なりの考えを持っていて、バッティングに関しても初めて聞くような話がたくさんありました。プロでレギュラーを張っていく選手はバッティングがいいのはもちろん、守備もよくて走れる。3拍子揃っていると思います。守れるだけでは出場機会は減る。バランスのいい選手にならなければいけないと思いました」

 京田自身、当時からプロの世界で勝負していきたいと考えていた。日米大学野球をきっかけに、それからは黙々とバットを振る日々が続いた。日大の仲村恒一監督は「通常の合同練習以外に、毎晩1〜2時間は室内練習場で打っていた」と、当時の様子を話す。

 バッティングへの取り組みは「それまでは、何も知らずに打席に立っていて、0に等しい状態からスタートした」という。仲村監督の指導は「左足に体重を乗せて早くタイミングとる」というものだったが、京田は自分にはレベルが高くて難しすぎる理論だと感じていた。しかし、プロに入った今、当時言われたことが分かってきたという。

不調を救った恩師の教え、実践した日に5打数5安打

 8月9日の本拠地広島戦では、5打数5安打3打点と打席で大暴れ。プロ初の1試合5安打を記録した。それまで調子を崩しており、いろいろ考えて練習に臨んでいたというが、この日の試合前の練習で大学時代の恩師の教えをふと思い出して試したところ、「これはいけるな」という手応えをつかんだ。

「『1、2の3』という間が取れるようになりました。間が取れることで自分のポイントで打つことできて、ボール球にも手を出さないようになりました。うまく間が取れていたので5本打てたのかな、と思います。ナイターが終わって、遅い時間だったんですけど『やっと仰有っていることが分かりました』と仲村監督に連絡をしました」と、嬉しそうに話す。

 DeNAの濱口遥大投手とともにセ・リーグ新人王の有力候補と目されているが、ここまでの結果には「自分が一番びっくりしています。出来すぎだと思います」と謙遜する。

「周りの方からも『開幕1軍目指して頑張れよ』とか『ケガしないように頑張れよ』と言われていたんですけど、正直無理だと思っていました。2月のキャンプでレベルの違いを感じて『できるかな』と不安で。まずは代走や守備固めで試合に出られれば、と思っていました」

 それが、今では遊撃レギュラーだ。4月こそ打率は2割前後を推移したが、5月から徐々に上昇。6月上旬からは打率.270を割ることは、ほとんどない。しっかり結果を残してきたことで、対戦投手の攻め方も変わってきているという。

「最初は甘く見られていたところもあったと思うんですけど、今は厳しいところにきます。相手も研究している。それに対応していかなければいけないと思っています。やっぱりプロのピッチャーは違いますね」と、プロの世界の厳しさを実感しているようだ。

パ新人王最有力候補の西武・源田に刺激

 盗塁は田中広輔内野手(広島)の「29」、大島洋平外野手(中日)の「23」に次ぐリーグ3位の「21」盗塁を記録しており、盗塁王も狙える位置につけているが、タイトルは「将来的に取れればいいと思う」と話す。

「新人王や盗塁王というタイトルよりも、試合に出られているので、その中でどうやってシーズンを戦っていくか勉強しなければいけないし、今勉強できています。自分のできるプレーをしっかりするだけです」

 それでも、パ・リーグ新人王最有力候補、西武の源田壮亮内野手には、特別な思いを持っているようだ。自身と同じ遊撃手で俊足と守備が持ち味のルーキー。リーグは違うが、大いに刺激を受けているという。

「向こうはフル出場していますし、盗塁数もリーグトップです。ナゴヤドームでの交流戦で、ショートを守っている時に源田選手がセカンドに盗塁してきたんですけど、その時のスライディングがすごく速かったです。守備もよくて『あそこに飛んだらアウト』と周りから思われている。見ていて勉強になりました」

 攻守にわたる堂々たるプレーぶりを見ていると、新人であることを忘れてしまいそうだが、まだ大学を卒業してから半年も経っていない。生活環境が変わったこともあり、シーズン当初は、移動や初めての球場でのプレーに苦労したという。何よりも大きな違いを感じているのが、1年間野球をプレーし続けるスケジュールだ。遠征先では先輩たちに美味しいものを食べに連れて行ってもらい、食事はしっかり摂っているそうだが、それでも痩せてしまうことが悩みだと苦笑いする。

「疲れはないと言ったら嘘になりますが、チャンスをもらっているので、疲れている中でどうやって試合をするか考えています。疲れを取るためには、よく寝ることを心がけています。

 それでも、会う人会う人に『顔がげっそりしたね』って言われます。大学は春と秋のリーグ戦だけなので『プロは毎日試合ができて楽しいだろうな』と思っていましたが、そう甘くはなかったです」

 プロに入るため、プロで生き抜くために試行錯誤した大学時代。「あの大学日本代表の経験がなければ、今の自分はないと思います」。そう言い切る京田の表情に、代表経験を積んで以降、誰よりもバットを振り、練習を積み重ねてきた自信が伺えた。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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