元選手が先生を指導? NPBが主導する「ベースボール型授業研究会」とは

元選手が先生を指導? NPBが主導する「ベースボール型授業研究会」とは

「ベースボール型授業研究会」の様子【写真:広尾晃】

小中学校で「ベースボール型」授業を行うための手助けに

 日本野球機構(NPB)は、今、小中学校の先生を対象として「ベースボール型」授業を行うための手助けとなるように、「捕る」「投げる」「打つ」の指導方法および簡易化したゲームを教師に伝える研究会を全国で展開している。

 2011年度より全面実施された学習指導要領において「ベースボール型」が全国の小中学校の体育授業で必修化された。学校教員は、「ベースボール型」の授業をしなければならない。しかし、20代、30代の中には野球、ソフトボールの経験がなく、基本動作さえ身についていない教員も多い。

 そこでNPBが中心となって、全国の教員に対し、教員のための「ベースボール型授業」研究会を開催しているのだ。

 8月23日には、岐阜市立中央中学校で岐阜県内の小中学校の53人の先生を対象に「ベースボール型授業研究会」の講義が行われた。

 講師はNPBと研究会を共催するJSA(日本ソフトボール協会)の元競技者と、元中日の遠藤政隆、元ヤクルトの河端龍の両氏。2人はともに現在は球団職員だ。プロの第一線で活躍した二人の元選手が、小中学校の先生に野球の「いろは」を手ほどきした。

 ボールは柔らかいソフトボール大のもの。これを最初は自分で上に投げて両手でキャッチする。キャッチするときには「ぱくっ」と声に出して言う。転がしたボールのキャッチ、近い距離でのキャッチボール、少し離れてキャッチボール。さらには、ティーバッティングと進む。

 先生の野球経験値はばらばら。難なくこなす先生もいれば、バットにボールが当たらず、ティーの部分を叩く先生もいる。時折、水分補給をしながら、講義は試合形式に移行する。4つのチームに分けて、2チームごとの対抗戦だ。

1、攻撃側がボールを投げて走り、守備側はボールを確保した仲間のもとに駆け寄り、全員集まったところで「アウト」をコールするゲーム

2、攻撃側はティーに乗った球を打って走り、守備側は打球捕球後、素早く本塁に投げ返すゲーム

3、攻撃側はティーで打ったら走り、守備側は走者の動きを見て判断し、走者が進む先の塁に送球すればアウトとなるゲーム

先生にも好評「自分が楽しいと思わなければ、子どもには伝わらない」

 この三段階のゲームを体験した。バットを使うゲームは、危険防止のためにバットを所定の場所(サークル内)に置くと1点が入るというルール。ハッスルして塁を回るときに転倒したり、バットを置き忘れて右往左往したり、体育館は歓声に包まれた。

 3時間の体験だったが、概ね先生たちの評判は良かったようだ。岐阜市内の国立大付属中学の女性教員は「特に女子は経験をしてこなかったので、ボールはほとんど投げられません。そういう生徒にこういう動きをすると自然に肘が上がるとか、具体的に教えてもらったのが良かったです」と感想を述べた。同じく岐阜市内の公立中学の男性教員も「私自身は野球の経験は全くないけど、やってみて本当に楽しかった。授業できっかけ作りができたら」と話した。

 講師を務めた元中日選手の遠藤政隆、元ヤクルトの河端龍の両氏は、「技術、知識を学んでもらうことも大事だが、終わった後に楽しかったなと思っていただけるのが大事、自分が楽しいと思わなければ、子どもには伝わらない」と口をそろえて語った。

 主催者の日本野球機構・野球振興室、室長補佐の松嵜勝久氏は、「2012年からこの授業研究会を始めましたが、当初は関東の球場に先生に来ていただいていました。しかし、それではリーチできる先生の数、地域が限られているので、私たちが全国に出向いて、講義をすることにしました。2016年は23回開催して約千人、今年もすでに22回開催して千数百人の先生に体験してもらいました。今年はあと数回予定しています。NPBもJSAもアマチュア野球界も、みんな危機感は持っています。この試みの経験、成果をみんなで共有できればと思っています」と話す。

 中学校では休みなし、残業補償なしの「ブラック部活」が問題になっている。ただでさえも授業、部活と時間に追われ余裕がない先生が、「ベースボール型授業」のために割くことができる時間は多いとは言えない。しかし、こうした地道な努力を重ね、すそ野を広げることが重要だ。あまり知られていないが、2500万人の観客動員を誇るNPBは、一方でこうした活動を始めているのだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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