投手と野手の垣根を越え――和田毅が抱く、井口資仁への思い

投手と野手の垣根を越え――和田毅が抱く、井口資仁への思い

ソフトバンク和田毅(左)とロッテ・井口資仁(右)【写真:藤浦一都】

8月27日に実現した“運命の一戦”、「井口さんは昔からオーラは変わらない」

 運命に導かれた試合となった。8月27日、ヤフオクドーム。ソフトバンクとロッテが戦ったゲームは、記憶にも記録にも残る一戦となった。

 今季限りで現役を引退するロッテの井口資仁内野手。この翌日の28日に出場選手登録を抹消され、ユニホームを着て勇姿を見せるのは、9月24日の日本ハム戦(ZOZOマリン)だけに。このヤフオクドームでの一戦は、プロ入りから8年を過ごした福岡でのラストゲームだった。

 この一戦に、いつも以上に気持ちを込めていたのが、先発した和田毅だ。かつてダイエー時代にチームメートだった井口の存在は、和田にとって特別なものだった。この日が左腕にとって左肘手術からの復帰戦。だが、それ以上に、意識は井口との対戦に向いていた。試合後も、福岡でのラストゲームで先発マウンドに立ち、3度の勝負を繰り広げられたことを、何よりも喜んでいた。
 
 井口資仁とはどんな存在だったのか。自らも球界に名を残す投手となった和田は、運命の一戦を終えた後、こう語っている。

「井口さんは昔からオーラは変わらない。味方の時はチャンスで井口さんが打席に立つと打ってくれるなというイメージでした。対戦するようになってからは、ピンチの時だと甘いところに投げたらやられるなという、ずっとそんな感じで対戦していましたね」

「投げる時は必ず打ってくれるというイメージしかない。日本シリーズもそうですし、シーズン中でも常に打ってくれるという、そんなイメージしかない」

「井口さんの振る舞い、姿にはすごく勉強させてもらいました」

 今でも鮮明に覚えているのは、2003年10月27日の日本シリーズ第7戦。日本一をかけて阪神と対戦し、3勝3敗で迎えたこの試合。先発マウンドに上がったのが和田だった。初回2点を奪ったダイエーは、3回に井口が2ランを放ち、リードを広げた。これ和田が守り抜き、9回2失点で完投勝利。胴上げ投手となった。その年のシーズンでも109打点を挙げた井口。今も変わらぬここ一番での勝負強さは、若かりし和田にとっても鮮烈だった。
 
 1997年に青山学院大からダイエーに入団した井口と、2003年に早稲田大から入団した和田。同じ大卒出身者ということもあり、投手と野手の垣根を越え、左腕にとって井口はプロとしての振る舞い、姿勢をも見習うべき存在だった。 

「同じ大卒というのもありますし、井口さんにはすごく声をかけてもらいましたし、井口さんの振る舞い、姿にはすごく勉強させてもらいました。井口さんは背中で語る方だったので、全ての面において真似じゃないですけど、プロはこういう風にするんだというのを勉強させてもらいました。今ほど全部教えてくれるわけではないので、見て盗むというか。そこから色々話すようになって、よくしていただきました。食事にも何回も行きましたし、公私ともに可愛がってもらいました」
 
 ともにメジャー挑戦もした同志でもある井口と和田。井口の日本球界復帰後はロッテとソフトバンクという敵となり、相まみえることとなったが、2人の間に出来た絆は変わらない。井口が和田から現役最後の安打となるかもしれない左前安打を放ち、和田は通算1500奪三振という節目の三振を井口から奪った。不思議な縁によって、感動の物語が刻まれた一戦。そこには、和田の井口への思いも込められていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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