伊藤将司は毎年1月1日に監督宅へ押しかけ打撃練習をおねだりした【虎の「伏兵」身上調査】

伊藤将司は毎年1月1日に監督宅へ押しかけ打撃練習をおねだりした【虎の「伏兵」身上調査】

新人王級の活躍を見せるオールドルーキー(C)共同通信社

【虎の「伏兵」身上調査】#3

 伊藤将司(1年目・投手・25歳)

 ◇  ◇  ◇

 ストレートの最速は146キロながら12日現在、8勝7敗、防御率2.67。JR東日本からドラフト2位で入団したルーキーがチームに欠かせない歯車になっている。

 横浜高で伊藤を指導した小倉清一郎元野球部長はその成長に驚きを隠しきれない。

「球が遅かったので、一塁牽制に見せかけた特殊な投げ方を教えました。甲子園には2度出ましたが、それでも高校3年時の球速は130キロほど。プロなんて夢のまた夢だと思っていた。六大学も厳しいだろうと、彼の実家から通える国際武道大に進ませたんです。それが今や8勝でしょ。投げる時に指をしっかり引っかけているから、球が低めで少しブレるんです。打者にとって打ちにくいボールを投げられるようになっています。予想以上の、考えられない成長ぶりですよ」

 伊藤は千葉県の九十九里浜に面した小さな田舎町、山武郡横芝光町に3人兄妹の長男として誕生。元高校球児の父の影響から小学生になると同時に、今はなき地元の少年野球クラブ・横芝フェニックスの門を叩いた。

 同クラブの監督として小、中と伊藤を指導した宮園博香さんは「天性の野球小僧でした」と、こう振り返る。

「テレビゲームよりも野球をしている方が好きな子だった。元日に突然電話がかかってきたと思ったら、『ティーを上げてほしい』『打たせてほしい』と言って、自転車で私の家まで押しかけてきたことが何度もあります(笑い)。ウチの敷地には子供たちが練習できるように、ネットで仕切った打席が4つありますからね。休みの日に練習しに来る子はちょくちょくいましたが、元日に来たのは後にも先にも伊藤だけです」

 中学を卒業してからも宮園さんとの交流は続いている。横浜高やJR東日本時代は帰省するたびに宮園さんに一報を入れることを欠かさなかった。成人式の式典に臨む直前には、正装で宮園さんの自宅まで挨拶に出向いたという。

 二十歳を越えてからはお酒を酌み交わし、一緒にゴルフをプレーする間柄だ。

「『連れて行ってください』と誘ってくれるんです。可愛いですよ。ただ、コロナ禍で今は会いにくいし、我々の行きつけだった牛タンのおいしい居酒屋『花たば』はマスターが亡くなり、閉業してしまいました。ドラフトが終わってすぐの、昨年12月のことです。このマスターは伊藤が小学生の頃から応援してくれていた地元の方で、店の大黒柱には伊藤の身長の記録が刻まれているんですよ。こんなに活躍することになるとは……。マスターと一緒にその姿を見たかったですね」

 宮園さんはこう言って、感慨に浸った。

(次回は及川雅貴投手)

▽伊藤将司(いとう・まさし) 1996年5月8日、千葉県山武郡生まれ。名前の由来は、プロゴルファーを目指していた父が憧れていたジャンボ尾崎の本名(将司)から。横浜高時代に2度の甲子園を経験。国際武道大、JR東日本を経て、2020年ドラフト2位で阪神に入団。178センチ、85キロ。左投げ左打ち。

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