「差は今後も開く一方」 広島独走に巨人OB高橋善正氏が嘆息

「差は今後も開く一方」 広島独走に巨人OB高橋善正氏が嘆息

対照的な2チーム(C)日刊ゲンダイ

 2日の阪神戦を落とした広島の球団史上最短マジック点灯はお預けとなったが、2位に10ゲーム差をつけて首位を独走している。

 原動力は総得点525、チーム打率.279、本塁打数106と、いずれもリーグトップを記録する打線の破壊力。交流戦で今年もセ・リーグに勝ち越したパのある選手は、「広島だけはパの選手にひけをとらないスイングの強さと迫力がある。それに比べて巨人の打線は……」と話していたが、その強力打線を形成する野手が若いのも広島の武器である。

 例えば1日の阪神戦のスタメン野手はこうだ。

@田中(28=13年3位)
A菊池(27=11年2位)
B丸(28=07年高校生3位)
C鈴木(22=12年2位)
D松山(31=07年大学・社会人4位)
Eエルドレッド
F安部(28=07年高校生1位)

G会沢(29=06年高校生3位)

 2日の試合こそベテランの石原(37)が先発マスクをかぶったが、出場試合数が多い会沢を正捕手とし、外国人のエルドレッドを除くと、レギュラーの平均年齢は27.6歳。ライバル球団の関係者が、「しばらく広島の黄金時代が続く」とため息を漏らすのも当然だ。

 巨人の鹿取GMが6月に就任した際、キーワードに挙げた「スカウティング」と「育成」が、くしくも広島の強さにつながっている。広島の球団関係者がこう明かす。

「高校生のいい選手を取るというのが球団方針というか根底にある。即戦力の大学や社会人出身と違って、球団の色がつけられる。ノビシロが大きく、爆発力を秘めています。ドラフト対象選手を数値化している球団もあるようですが、うちはアナログ。特徴は担当スカウトの意見が重視されること。他球団はスカウト部長が視察した試合で活躍しないと、指名が見送られたりしますが、うちはスカウト会議で担当が推薦したら、意見を尊重してもらえる。逆に他球団が評価している選手でも、担当が『自分は○○なところを評価していません』と言うと、『なるほど。そういうことか』と、そういった意見も反映される。たとえ指名を見送った選手が他球団で活躍しても、上から『どこ見てるんだ』と叱責されたりはしない。もちろん反省はしますが、これがないから萎縮することがない。周りと同じような無難な選手を推すことなく、意見が言える」

 この関係者が続ける。

「あとはうちの厳しい練習に耐えられるだけの体力と根性があるかも重要視する。これまでフィーバーを起こした人気候補が何人もいましたが、うちは人気に流されることはありません。補強ポイントに合った選手で実力ありきが大前提です」

■安易な強化策で巨人はじわじわと腐っている

 スカウティングと育成が好循環で回っているから今の広島は二軍も強い。2日現在、ウエスタン・リーグの首位。別の球団関係者が話を引き取る。

「昨秋のドラフトで指名した6選手中、高校生は4人。現段階での有望株は、4位の坂倉(19=日大三)です。ウエスタンの打率2位と安打を量産していて、鈴木誠也の1年目より成績が良く、三振が少ない。いずれは正捕手を狙う、誠也に続くブレーク候補筆頭です。高橋昂(18=花咲徳栄)、アドゥワ(18=松山聖陵)、長井(18=つくば秀英)の3投手も順調。6位の長井はすでに150キロを計測しています」

 そこへいくと巨人はどうだ。OBで評論家の高橋善正氏が嘆息する。

「広島と比較すると、巨人に対する危機感を覚えずにはいられません。チームづくりをFA補強と即戦力ドラフトに頼った結果、チームの根幹を担うべき育成がボロボロになった。人を育てる意識も力も失い、それをまた補強でカバーしようとする悪循環。スカウトの眼力、二軍以下の指導者の能力もこれでは衰えていく一方だと思う。広島のように、きちんとした目利きがしっかりとした素材を仕入れ、それを腕利きの料理人が調理して客に出すという循環は、今の巨人がやろうと思ってもとてもじゃないが一朝一夕にはできない。広島との差は今後、開く一方という気がします」

 昨2日、巨人はヤクルトに10―4で快勝した。先発のドラフト2位ルーキー畠世周(23=近大)が6回3失点で2勝目を手にしたものの、この日のスタメン野手の平均年齢は32.7歳。38歳の阿部が3安打3打点1本塁打、12月で37歳になる村田が3安打4打点2本塁打と爆発したが、果たして彼らが3年後もチームにいるかどうか。代わりの若手が育っていない現状を考えれば、ベテランの活躍はむしろ、ファンの不安を増大させる。

「補強が機能して一時的に優勝することはあっても、それは継続的なチーム力にはつながらない。むしろ、球団が行ってきた安易な強化策は、チームをじわじわと腐らせてきた気すらする。若手には諦めムードが漂い、チームそのものには勝てばいいんだろうという空気が蔓延。巨人の中堅・若手が野球賭博に手を染めたのも、FA選手が酒に酔って人をケガさせたのも、そんなチームづくりと無関係ではないと思う。選手教育を含めて素質のあるアマ選手を集め、鍛え、本当の意味での常勝球団をつくるなら、現場も球団も2、3年は優勝しなくてもいいというくらいの覚悟を持って、ことにあたるべきだと思う。先日、鹿取GMと話をして彼からは育成に注力する強い思いを感じたが、球団や親会社がその我慢をできるか。そこが最も大きな問題でしょうね」(高橋氏)

 今のままでは10年経っても広島の後塵を拝す可能性が大ではないか。

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