戦力差だけじゃない 巨人がソフトバンクに一蹴されたワケ

戦力差だけじゃない 巨人がソフトバンクに一蹴されたワケ

4戦目に負け投手になった菅野(央)は拙守に足を引っ張られて降板した(C)日刊ゲンダイ

【権藤博の「奔放主義」】

 一方的になった今年の日本シリーズを見ていて複雑な気持ちになった。

 セを制した巨人が、パ2位のソフトバンクに0勝4敗。チーム力に差があったのは事実だが、それだけではないと思う。頂上決戦に臨む両チームの立場の違いが、これほどまでに明暗を分ける原因になったとみている。

 ソフトバンクはパの優勝候補筆頭に挙げられながら、レギュラーシーズンでは西武の後塵を拝した。一度は死んだ身で、失うものは何もない。敗者ならではの開き直りが、選手のプレーに出ていた。投手は、一発長打を浴びても構やしないとばかりに、内角をどんどん攻めた。打者は打者で、三振なんか気にしないとでも言うように、いつも以上の迫力あるフルスイングをしていた。

 対する巨人は5年ぶりにセのペナントレースを制し、メディアは7年ぶりの日本一だ! と大いにあおった。そもそも、日本一を最大の目標とする伝統球団だ。今年はそこへ、チームの顔である阿部引退という、さらに負けられない要素が加わった。チーム全体が、有終の美を飾らせてやろうと意気込んだ。CSでは、それがモチベーションになって阪神を圧倒したものの、勝ちたいという思いの裏には常に、プレッシャーという敵が頭をもたげているものだ。

 シーズンで強力打線を牽引した坂本勇人、丸佳浩の不振、続出した若手内野陣の守備のミスの背景には、間違いなく重圧もあったろう。負けてもともとのチームと、勝たなければいけないというチームが戦うと、得てして前者が力を発揮するということがあるのだ。

 過去の例を見てもそうだ。2007年に現在のCSが導入されて以降、今年までの13年間でレギュラーシーズン2位以下のチームが日本シリーズに進出した例は6度あるが、そのうち4度はシーズン2位以下のチームが日本一になっている。巨人を下したソフトバンクはこれで、2年連続の“下克上”である。

 敗れた巨人は気の毒としか言いようがない。143試合を戦った末に勝ち取ったリーグ覇者の栄光が、パでV逸したソフトバンクに圧倒されたことでかすんでしまった。今コラムで何度も書いているが、私はCS制度をよしとしていない。本来、最も価値のあるはずのペナントレースがCS、日本シリーズ進出の予選になっているのが現状だ。

 素晴らしい戦いをしたソフトバンクの日本一にケチをつける気は毛頭ないが、本音を言えば西武と巨人の日本シリーズが見たかった。ソフトバンクに一蹴された巨人の無念を思うと複雑である。

(権藤博/野球評論家)

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