日本シリーズが最後となる完全燃焼「黒田引退」と「4番新井」

 最後の喝を入れる。

 広島東洋カープが25年ぶりのリーグ優勝を飾った。その牽引役は投打の両ベテラン、黒田博樹(41)と新井貴浩(39)と言っていい。
 「新井はMVPに選ばれる可能性が高い。彼の活躍について聞くと、フロントも毎度お馴染みのフレーズとなった『まさか、ここまでやるとは』の声が返ってきます。シーズン中盤までは親しみを込めた言い方でしたが、最近は本当に尊敬しているというか…」(スポーツ紙記者)

 4番・新井、先発・黒田。優勝を決めた9月10日、敵地・東京ドームのスタンドは真っ赤に染まっていた。オールドファンは1975年、リーグ初優勝を決めた舞台が後楽園球場だったことを思い出していた。
 「'75年も巨人の本拠地・後楽園で優勝を決めました。敵地にもかかわらず、その日も広島ファンのほうが多かった」(ベテラン記者)

 黒田にとっては、プロ生活初の優勝である。自身の登板日が優勝を懸けた大一番になったのは“巡り合わせ”だ。「マジック1」のままでの足踏みがしばらく続いた。しかし、黒田の寡黙に投げ続けた姿は、広島ナインに「最後の喝」を入れたという。
 「前日(9月9日)、試合のなかった広島ナインは、遠征先のホテル近くの飲食店で巨人とヤクルトの一戦を見守っていました。グラウンドで勝って胴上げをするのが一番ですが、どんな形でもいいから優勝したいという雰囲気でした。と同時に、翌日の先発が黒田だから勝てる、といった確信のようなものを選手たちは抱いていました」(関係者)

 別方面からは、こんな声も聞かれた。
 「終盤戦に入り、ベテラン新井を4番に定着させました。緒方孝市監督を始め、首脳陣がエルドレッドの故障後、誰を4番にするかを話し合って新井になったんですが、交流戦でブレイクした4年目の22歳、鈴木誠也を推す声もあったんです。新井に決めたのは、25年ぶりの優勝に相応しい4番は誰かなのかを考えた結果です」(前出・ベテラン記者)

 『4番鈴木』は、まだ時期尚早と判断されたわけだ。しかし、「1番・田中広輔、2番・菊池涼介、3番・丸佳浩」と続く今年の広島打線に、日本人の、それも生え抜きの新4番が定着すれば、カープは長期政権を築ける。それが今後の課題だ。
 「新井は『広島に拾われた。救われた』の思いが強い。その恩返しができたとも考えています。黒田にしても同様で、広島に帰還した理由が『このチームで優勝したいから』。引退も示唆した昨年オフにあえて踏みとどまったのは、後輩投手たちに『生発ローテーションを託された重み、責任感』を、言葉ではなく自らの態度や背中で教えるためでした」(前出・関係者)

 リーグ優勝で、投打のベテランは「自らの役目を終えた」と判断している。
 「広島が首位に立った直後、選手たちは対戦投手のマークが厳しくなり、それを苦痛に感じていました。でも、新井はエース対戦を楽しんでいたというか…。広島の若手はクライマックスシリーズの最終ステージ、日本シリーズの舞台を経験していません。両ベテランはあの独特の緊張感を乗り切るサポートをしたら、役目を終えたと思うでしょうし、いつまでも、両ベテランに頼っていてはいけないと若手も自覚するはずです」(同)

 CS、日本シリーズで、広島は黒田を軸としたローテーションを組むと予想される。メジャー時代、「中4日、100球」の登板間隔で投げていたので、調整は問題ないだろう。緒方監督は「日本シリーズ進出なら、初戦は最多勝(候補)の野村祐輔、第2戦と第7戦は黒田。7戦前に決着が付くようなら、救援も」と考えているそうだ。

 緒方監督は優勝に相応しい4番として新井を指名したように、黒田を胴上げ投手に選ぼうとしている。当然、その雄姿が後輩投手にも響くことを願っている。
 「広島は'75年に初優勝したときのチームスタイルに回帰していきます。もともと育成のチームでしたが、近年の主力選手は育ててもFAで出て行ってしまうので、首脳陣は育成のピークを何年後に設定すればいいのか分からなくなっていました。今の広島選手はFAでの国内移籍を考えていないので、鈴木のように4、5年後を見据えてじっくり育てることができます。今秋ドラフトから高卒選手の大量指名が見られるかも」(前出・ベテラン記者)

 その教育係に苦労人の黒田、新井は相応しい。黒田の男気と「4番・新井」は今季が見納めのようだ。

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