金本阪神が注入した「野村克也の教え」

 金本阪神が首位戦線を順調に戦っている。ペナントレース開幕前、「期待の声」はあったが、現実になるとは誰も予想できなかった。実は、この“春の珍事”には、『ノムラの教え』が注入されていた。しかし、快進撃の裏では『金本批判』もくすぶっている。
 「この成績でよく首位になれたな、という声も聞かれます。阪神はチーム打率がリーグ2位、同防御率はリーグトップ。投手陣が好調なのは嬉しい誤算ですが、守備はいただけない。失策数32(数字は34試合時点)はワースト。うち捕手絡みのエラーも2つ含まれています」(ベテラン記者)

 チーム防御率2.82は12球団トップ。セ・リーグで2点台の防御率を維持しているのは阪神だけだ。エース・藤浪晋太郎がピリッとしないだけに、「どうして首位に?」の声は、やはりうなずける話だ。マテオ、ドリスの両救援投手の奮闘と、昨季、一軍登板のなかった桑原謙太朗がセットアッパーとして大きく貢献していることなどが上げられるが、勝因はそれだけではない。
 「梅野隆太郎が正捕手の座を掴みつつあり、周囲もその努力を認めています」(在阪記者)

 名将・野村克也氏(81)も、梅野を高く評価していた。5月7日、TBS系スポーツ情報番組『S☆1』にVTR出演した同氏は、同日に行われた広島戦を見ながら、「全く繋がりがないのに梅野はあいさつに来た。プロ野球にオレは60年いるけど、配球のことを色々と聞いてきたのは梅野だけだよ」と語っていた。
 ボヤキ、辛口解説の野村氏は、滅多に人を褒めないことで知られている。この称賛は梅野の励みにもなったはずだ。金本知憲監督(49)は桑原の覚醒を見出したものの、梅野の成長は“結果オーライ”だった。
 「梅野を選んだのは、消去法でした。右肩に不安を抱える原口文仁は、一塁にコンバートしてしまいました。バッテリー統括の矢野燿大コーチは、2年目の坂本誠志郎に期待していましたが、開幕前に右手親指を骨折し、梅野しか残っていなかったのです」(球界関係者)

 金本監督を始め、首脳陣は梅野に「打てるのなら、多少は我慢して使うから」という言い方だった。どういう意味かというと、オープン戦を終えた時点で、阪神打線はうまく機能していなかった。正三塁手を予定していた新外国人のキャンベルは、不振と故障でリタイア。FAで獲得した糸井嘉男も右膝を痛めており、得点圏に走者を進めても「あと1本」が出ない打線は、得点力が不安視されていた。
 その不安視された打線が絶好調なのは“嬉しい誤算”だったわけだが、チーム全体が「打てる」となれば、梅野に求めるものも変わってくる。より配球面が要求されるようになったのだ。
 「'99年から3季、野村氏は阪神監督を務めました。当時、野村氏が阪神に持ち込んだチャート表は、金本監督が指揮を執る今日までずっと継承されているんです」(前出・関係者)

 矢野コーチも現役時代、試合中の配球を記録し、相手打者の苦手コースを分析するチャート表で鍛えられた。その矢野コーチが今、“野村式チャート表”を梅野に伝授しているのだ。
 「野村氏は『接点がないのに配球を聞きにきた』と言っていますが、阪神バッテリーから見れば、同氏はチームのチャート表を作ったカリスマですよ」(同)

 このように『ノムラの教え』が注入されたわけだが、その舞台裏では金本批判もくすぶっていた。
 「金本監督と鳥谷の関係は険悪になっていく一方です。キャンプではそれまで練習させなかったのに、オープン戦途中でいきなり三塁にコンバート。端から見れば、嫌がらせです。金本監督があえて嫌われ役を買って出て、鳥谷の心理をうまく逆利用したのならまだしも、決してそうではない」(阪神OBの1人)

 両者の不和を口にするOBは少なくない。
 今さらだが、鳥谷敬は将来を嘱望された幹部候補生だ。現役時代の金本監督も弟分のようにかわいがっていた。両者の間に遺恨はない。しかし、指揮官と幹部候補生になると、しっくりとはいかないようだ。
 「昨季の大不振は、金本監督が原因です。少なくとも、周囲はそう解釈しています。特に若手に対して顕著で、金本監督は『強くバットを振れ』と指導し、ウエートトレーニングを奨励してきました。でも、鳥谷の打撃はパワーではなく、シャープに振るかどうか。軟らかさが信条です。金本監督の打撃論と合わず、鳥谷の長所を殺してしまった、と」(前出・ベテラン記者)

 12日のDeNA戦、鳥谷は試合を決定づける今季第1号を放った。長距離タイプではないが、33試合目での初アーチは遅過ぎる。「出塁と走者進塁に徹した結果」と後輩たちは見ているが、金本監督の言葉には“毒”があった。
 「外野手の頭を越えたのは初めてだろ?」

 阪神には、前半の独走態勢をひっくり返され、優勝を巨人にさらわれた'08年のトラウマも残っている。近年は終盤戦に失速する傾向もある。今季も首位陥落となれば、金本批判は一気に爆発するだろう。

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