スカウトが注目する“PL学園最後の大物”ーー東洋大・中川圭太が全うした、今ではありえない責務

スカウトが注目する“PL学園最後の大物”ーー東洋大・中川圭太が全うした、今ではありえない責務

昨春のリーグからチームの4番として活躍する中川。同年のユニバーシアード競技大会では、首位打者と打点王に輝く勝負強さも見せた。

「最後のPL学園出身ドラフト指名選手」になるかもしれないーー。その選手の名は、東洋大学4年の中川圭太。多くのスカウトが「今岡 誠(現・今岡真訪[まこと]/元阪神ほか)がだぶって見える」と語るほどの右の強打者だ。

今岡といえば、PL学園、東洋大を経てドラフト1位で阪神に進み、首位打者1回、打点王1回を獲得したかつての名選手。現在はロッテで2軍監督を務めている。中川にとっては高校、大学と同じキャリアを歩んでいる先輩というだけでなく、プレースタイルも似通うロールモデルのような存在なのだ。

周知の通り、PL学園の硬式野球部は2016年夏の大阪大会を最後に休部となった。春夏合わせて甲子園優勝7回、甲子園通算96勝という輝かしい実績を誇る名門野球部の休部は、野球界にとって衝撃のニュースだった。

部内暴力など数々の不祥事が休部につながったのだが、中川の野球人生もその荒波に翻弄(ほんろう)された。

中川が高校1年時の2月、2年生による部内暴力が発覚し、PL学園は6ヵ月の対外試合禁止処分を受ける。当時の監督は辞任し、夏の大会は出場できない。そんなどん底の時期に主将になったのが中川だった。

新たに監督に就任したのは、野球経験のない校長。選手たちは中川を中心に自分たちでサインを決め、継投のタイミングは中川が指示した。そんな現代高校野球では考えられないハンデを背負いながら、PL学園は秋の大阪大会で準優勝し、近畿大会出場を果たす。春のセンバツ出場には届かなかったが、快挙と言っていい奮闘ぶりだった。

名門の主将として、主力選手として、そして監督代わりとして…。そんな異常な責務を全うした高校球児は、中川以外にいないだろう。

進学した東洋大では、入学直後から中心打者として活躍している。下級生時はDHとして出場し、3年以降は二塁手に定着。3年時には大学日本代表に選ばれるなど、今や大学球界を代表する内野手に成長した。

そんな中川には“華”もある。180cm、75kgと均整の取れた体格と、程よく力の抜けた打席での構え。そして何よりも絵になるのが、ボールをとらえた後の形、つまりフォロースルーだ。歌舞伎役者の「見え」のようにバシッと決まり、美しさすら覚える。球場で観戦する機会があれば、ぜひこの中川のフォロースルーを見てみるといいだろう。

しかし、進路のかかる大学ラストイヤーで、中川はスタートからつまずいた。東都大学リーグの開幕節は3試合で13打数2安打。あるスカウトが「打席で迷いが見える」と指摘したように、ボールにバットを“当てにいく”スイングが目立ち、本来の美しいフォロースルーが影を潜めた。

開幕戦では最終打席で代打を送られるシーンもあった。しかし東洋大の杉本泰彦監督は、「点差も離れていたので。直前の打席では四球の選び方もよかったし、あまり心配はしていません」と中川への変わらぬ信頼を口にした。

本来の美しいスイングを取り戻し、東洋大を勝利へと導く活躍を続けていけば、“今岡 誠の再来”といわれる中川がプロの世界で躍動する日もそう遠くはないはずだ。

(取材・文/菊地高弘)

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