“最後のシーズン”を戦う宮里藍――その最大の魅力はどこにあるのか?

“最後のシーズン”を戦う宮里藍――その最大の魅力はどこにあるのか?

サントリーレディスで2回のチップインバーディーを決めるなど、持ち味を十分に発揮した宮里。メジャー初制覇をかけた最後の戦いに挑む

衝撃的な引退発表後、初の国内試合であるサントリーレディスを26位で終えた宮里藍。その余韻に浸る間もなくアメリカに渡り、今後は“格と難度”が高いメジャー大会を軸に、米ツアーに出場することになる。

現時点で出場可能なメジャー大会は、全米女子オープン(7月13〜16日)とツアー最終戦のエビアン選手権(9月14〜17日)のふたつ。残る全英リコー女子オープンと全米女子プロ選手権の出場権を得るために、そして自身が「悲願」と掲げるメジャー初制覇を成し遂げるために宮里が“最後の夏”を戦う。

ここ数年、思うような成績を残せていなかった宮里だが、引退発表を機にその功績が再認識されている。

高校3年のときに、2003年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンをアマチュアとして優勝すると、直後にプロ転向を宣言。今では珍しくなくなった“JKプロゴルファー”の先駆けとなった。

05年には女子ゴルフのワールドカップでチーム優勝し、日本の最高峰の試合である日本女子オープンを当時の最年少記録(20歳)で制覇。さらに同年の暮れには、米女子ツアーの出場権を得るための予選会をトップで通過し、活躍の舞台を世界に求める若き女子プロ選手の道筋を作った。

米女子ツアーに参戦してからは苦しい戦いが続いたが、09年に(メジャー大会になる前の)エビアン・マスターズで初優勝を果たすと、10年には年間5勝を挙げ、男女通して日本人初の世界ランク1位に輝いている。

その輝かしい功績やインタビューでの明快な受け答えのイメージから、プレー面でも優等生的で安定感があると見られがちだが、実はそうではない。彼女の最大の魅力は、見る側をヤキモキさせる“ドキドキ感”にある。

身長155cmの宮里は、大柄な欧米の選手と比べるとかなり小さいため、ゴルフにとって最もアドバンテージとなる飛距離で圧倒的な不利を強いられる。そこをアプローチとパッティングの“小技”でしのぎ切るというプレースタイルは、見る側にとってこたえられないモノがあった。

トーナメントで彼女の組について回るギャラリーは、「藍ちゃん、またショットを曲げた。アカンなぁ」とボヤいた後、アプローチで挽回してグリーンオンし、少し距離のあるパットを沈めるのを「ヨシ! さすが藍ちゃん」と拍手をして、また次のホールに向かう。その姿はまさしく、ひと昔前の阪神タイガースファンのソレだった。

今から3年前、極度の不調に陥り、生命線だったパッティングも決まらなくなって絶望の淵に立たされたとき、宮里は後輩ゴルファーにこんな言葉を発したという。

「どんなにつらくても、私は目の前の試合から、自分のやっていることから逃げない。調子が上がらないときも、絶対に逃げない。逃げちゃダメ」

世界の頂点に立ったことによる周囲の期待と重圧、その後のスランプにも真正面から向かい合ってきた。31歳での“早すぎる”引退決断が、その壮絶さを物語っている。

宮里藍が「逃げずに」戦う最後のシーズン。ファンはこれまでと同様にドキドキしながら、残りの試合を見守ることになる。

(取材・文/古屋雅章 撮影/スエイシナオヨシ)

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