高校野球担当記者たちの甲子園“反省”座談会 「全試合、継投パターンを貫いた花咲徳栄・岩井監督がすごい」

高校野球担当記者たちの甲子園“反省”座談会 「全試合、継投パターンを貫いた花咲徳栄・岩井監督がすごい」

波乱続きだった今年の甲子園を総括!

今年の主役ともされた清宮幸太郎(早実)不在で盛り上がりが心配された夏の甲子園だが、新怪物・中村奨成の出現というニューヒーローの出現が話題をさらった。

その中村を擁する広陵を破って、埼玉県勢として初めて頂点に立ったのが強力打線の花咲徳栄。大会新記録となる68本のホームランが乱れ飛んだ今大会だが、直前予想で展望座談会に参加した取材記者3人が波乱続きのこの夏を数々の予想外れの反省を込めて総括する。

=スポーツ紙アマチュア担当記者、=高校野球ライター、=高校野球専門誌編集者

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 優勝した花咲徳栄と準優勝の広陵。それぞれ大会前に優勝候補の一角には挙げられていたが、さすがにこの決勝戦のカードを予想できた人はいないだろうな。

 終わってみれば、花咲徳栄の投打の力強さが際立っていました。前橋育英(3回戦)、盛岡大付(準々決勝)、東海大菅生(準決勝)と決して楽ではない相手を次々にねじ伏せていきましたからね。今年で3年連続出場ですが、過去2年は一昨年の東海大相模、昨年の作新学院と優勝校に敗れています。その経験からこれまでどちらかというと投手を中心とした守りのしっかりしたチームを作ってきた岩井隆監督が「甲子園では打線の破壊力がないと勝てない」と方針を転換させ、その結果が甲子園での6戦すべて9得点以上という強力打線でした。

C その上、今年の花咲徳栄には胴上げ投手になった清水達也というプロも注目するエースがいた。なおかつ2番手の位置づけだった馬力のある綱脇彗(つなわき・すい)を予選を通じて一本立ちさせたことで、清水が消耗が少ない状態で準決勝、決勝のマウンドに上がることができた。広陵のエース平元銀次郎もそうでしたが、ベスト4くらいまでくると、どのチームも投手がへばってくるから、これだけ打力が向上している時代にとてもじゃないけどひとりだけじゃ抑え切れない。

A 1回戦から決勝戦まで全試合先発・綱脇、リリーフ・清水の継投パターンを貫いた岩井監督がすごいよ。普通は対戦相手のレベルが上がると「打たれて試合が壊れたら」と不安になってエースを先発させる、いわば安全策≠取ってしまうものなんだけどな。

B 一方、広陵は夏の甲子園は4度決勝進出もいずれも準優勝。10年前の佐賀北との決勝戦もそうでしたが、最後に勝利の女神に見放されたような負け方をしますよね。

C 今大会はとにかく組み合わせが偏ったからね。広陵は秀岳館、横浜、中京大中京と強豪が詰め込まれた“死のゾーン”に入って、試合のたびに消耗も激しかったと思う。でも、そこを勝ち上がったことで勢いがつき、中村のホームラン記録への注目が高まったこともあって、追い風に乗った感じがありましたが。

B その“死のゾーン”で初戦から潰し合い、まず消えていったのが横浜でした。プロ注目のスター選手を揃え、豪快なホームラン攻勢で神奈川を制してきただけに期待も大きかったのですが、思いのほか脆(もろ)かった。

A 横浜には「東の横綱」というイメージがあるから初戦敗退は寂しいよ。やはり以前よりも野球が粗くなったことは否めない。若い平田徹監督には失礼だが、渡辺元智監督×小倉清一郎部長コンビの偉大さをあらためて確認させられる結果になってしまったな。

 その横浜に圧勝した秀岳館も2回戦で広陵にあっけなく敗れました。心配されていた鍛冶舎巧監督の体調ですが、大会中も表情が精彩を欠いているように見え、選手の士気にも影響があったのではと。ただ、今大会限りで退任ということですが、本人は監督業にまだ意欲満々です。これだけ短期間で結果を出したことを評価する声も多いので、また違ったユニフォームで甲子園にやって来るかもしれません。

 大会前、横浜、秀岳館、大阪桐蔭が「3強」と評されていましたが、始まってみたら大阪桐蔭の力がズバ抜けていましたね。その大本命が3回戦で姿を消したことで、優勝戦線が全く読めなくなりました。

A 大阪桐蔭は強豪同士が潰し合うのを尻目に初戦は米子松蔭を一蹴。“近畿の新旧横綱対決”となった、続く智辯和歌山戦も2−1の辛勝とはいえ、現在の力の差を見せつけるような勝ち方で突破。正直、負ける要素が見つからなかった。これは春夏連覇か!と誰もが考え始めた矢先、次なる刺客の仙台育英が「本能寺の変」よろしく主役を奪ったが…。

 今の大阪桐蔭に真っ向勝負を挑んだら、優勝した花咲徳栄も含め、日本中で勝てるチームはないでしょう。単なるスター選手を集めただけじゃなく、チームとしての戦術をしっかり浸透させている。1点でも多く取って、失点を最小限に食い止めるという本当に隙のない野球をしていました。だから、あのチームに勝つにはロースコアの接戦しかないんです。それと数少ない不安要素が主力に左打者が多いことだった。仙台育英の左腕・長谷川拓帆(たくほ)が上手く攻めて左打者を封じていました。劇的なサヨナラ劇に目がいきがちですが、バッテリーの踏ん張りが勝因ですね。

 8回まで仙台育英は仕掛けても仕掛けても点が取れなかった。試合の流れからしたら、完全に大阪桐蔭の逃げ切りです。あの9回裏は、まさに一瞬の隙を突かれた格好になりました。

C 大阪桐蔭を倒し、これは2年前に成し遂げられなかった東北初の全国制覇か!と期待された仙台育英も翌日の準々決勝で広陵に完敗。明智光秀より早い「一日天下」に終わってしまいました…。

B 横浜に圧勝した秀岳館、大阪桐蔭を倒した仙台育英、どちらも大きな山を越えた後、待ち構える広陵に敗れ去りました。ホッとしたわけではないでしょうが…。もし逆の結果になっていたら優勝戦線はどうなっていましたかね?

A それがトーナメントの醍醐味(だいごみ)だよ。強いチームが勝つんじゃなくて、勝ったチームが強い。前橋育英も初戦(山梨学院戦)を観て、「これは優勝もあるぞ!」と思ったんだが。2回戦で敗れた明徳義塾の馬淵史郎監督が「強かった」と脱帽していたからね。だから3回戦の花咲徳栄との関東対決は中盤のヤマ場だった。この試合、初戦で147qを出したエース・皆川喬涼(きょうすけ)を先発させなかった。その先の連戦を意識しての温存だったかもしれないが、結果的には裏目に出たわけだ。勝った花咲徳栄がそのまま突っ走ったが、もしあそこを勝っていたら、とは今でも思ってるけどな。

 そういう意味では、花咲徳栄にとっての大きなヤマ場は準決勝の東海大菅生との延長戦でしょうね。9回の土壇場に追い付かれる苦しい展開だったが、なんとか振り切って決勝戦に進出した。

C 東海大菅生も優勝していても不思議ではない、投打ともハイレベルな総合力の高いチームでした。西東京大会で日大三高、早実と連破して出てきたのも頷(うなづ)けました。

A 準決勝で敗れた東海大菅生、天理は若林弘泰監督、中村良二監督と、ともに以前プロ野球に在籍した監督が率いることでも注目を集めたが、両監督ともしっかりとしたチーム作りをしているという印象があったな。

 これまでどちらかというと淡泊なイメージだった天理が、準決勝の広陵戦で大量リードされても最後まで諦めずに戦う姿勢には感動がありました。試合後の中村監督が「そこは厳しく言い続けてきた」と話していました。元プロというのは技術指導が前面に出がちですが、やっぱり高校野球で成功するのはこうしたタイプの指導ができる人ですね。

C そういえば大会前の展望座談会で「小粒」と酷評した東北勢ですが、仙台育英だけでなく、広陵を苦しめた聖光学院、強力打線でベスト8に進出した盛岡大付と大健闘でした。各チームにお詫びしなくては(笑)。

 聖光学院の11年連続出場は尋常じゃない記録だけど、東北はどこの県も「王者」として君臨する高校があって、おのずとそこに人材が集まってくる。そうやって甲子園出場を繰り返すことで、そこら辺の伝統校よりも“甲子園慣れ”してきている気がする。今回、花咲徳栄は埼玉県勢として初の日本一だったが、東北ももういつどこが日本一になっても驚かないという状況ではあるな。

★後編⇒高校野球担当記者たちの甲子園“反省”座談会「中村奨成(広陵)は出来過ぎだった気もするが…」

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