広陵・中村奨成の本当のスゴさとは? 古田や城島級の“スーパー捕手”になる可能性

広陵高等学校・中村奨成は古田敦也氏、城島健司氏のような"スーパー捕手"になる可能性

記事まとめ

  • 広陵・中村奨成は、清宮幸太郎が不出場に終わった今大会の新たなスターとなった
  • 巨人・小林誠司と比較するメディアもあるが、高校時点での能力と素材は中村が上だとも
  • 近年のプロ野球は古田敦也氏や城島健司氏のような"スター捕手"がいないという

広陵・中村奨成の本当のスゴさとは? 古田や城島級の“スーパー捕手”になる可能性

広陵・中村奨成の本当のスゴさとは? 古田や城島級の“スーパー捕手”になる可能性

準決勝で6本目の本塁打を放ち、大会記録を更新した広陵の中村。今秋のプロ野球ドラフト会議で、複数球団から1位指名を受ける可能性もありそうだ

「逆方向へのホームランは初めてだったので、うれしかったです。今まで打ったホームランの中で一番気持ちがよかったです」

広陵(広島)の強肩強打の捕手・中村奨成(しょうせい)は鈴なりの報道陣を前に、晴れ晴れとした表情で語った。

初出場となる全国高校野球選手権大会の1回戦で、中村は2本の本塁打を放ってみせた。しかも、2本とも逆方向であるライトへの本塁打だ。その後も本塁打を打ち続け、準決勝の天理(奈良)戦で大会記録を更新(6本)。清宮幸太郎(早稲田実)が不出場に終わって「目玉不在」といわれた今大会の新たなスターとなった。

広島大会では右手首に死球を受けた影響もあり、打率は1割7分6厘と低調だった。しかし、痛みが消えてから、右手の感覚にある変化が生まれたという。

「手首がいい状態になってから、右手の使い方がちょっと強くなった感じがあります」

この右手の押し込みの強さが甲子園での大爆発につながったのかもしれない。

甲子園の初戦を終えた段階で、ある球団スカウト幹部は「ドラフト上位で消えるでしょう」と話していた。だが、その後の爆発ぶりを見る限り、ドラフト1位でないと獲得できない存在になったと見るべきだろう。同校OBで今年のWBC日本代表の正捕手を務めた小林誠司(巨人)と比較するメディアもあるが、高校時代の小林は9番打者。高校時点での能力と素材は中村のほうがはるかに上だ。

そして、中村の魅力は打撃だけではない。最大の武器は肩の強さだ。遠投120m、二塁送球平均タイムは1秒85だが、実際には数値以上の「すごみ」がある。1回戦の中京大中京(愛知)戦では、こんなプレーがあった。

打者がバントし、三塁線寄りに勢いの死んだゴロが転がる。次の瞬間には、中村が右手で打球をつかみ、無駄のない動きで二塁へ送球。ボールは地面をはうような軌道を描き、遊撃手の高田桐利(きり)のグラブを突き上げる。一塁走者のスタートも悪くはなかったが、間一髪でアウトになった。

中村は「体が勝手に反応した」と事もなげにふり返ったが、おそらく中村以外の高校生捕手ならば、投げることすらできない難しいタイミングだった。そして中村は、こうも語っている。

「バント処理で二塁アウトにするのは、3試合に1回くらいあります」

最初に聞いたときは「本当にそんな捕手がいるのか?」と疑問に思ったが、複数のチームメイトに聞いても「そのくらいはあります」と話す。そして実際に2試合後の聖光学院(福島)戦では、まったく同じようなバント処理でダブルプレーを成功させている。頻繁(ひんぱん)にこのプレーを繰り返せるのは、中村がただの強肩ではなく、50mを6秒0で駆け抜ける俊足でもあるということが要因になっている。まさに打ってよし、守ってよし、走ってよしのスーパー捕手なのだ。

近年のプロ野球はディフェンス型の捕手が目立ち、かつての古田敦也(元ヤクルト)や城島健司(元マリナーズほか)のような攻守に輝きを放つ“スター捕手”がいない。もしかしたら、中村奨成がその流れに風穴を開ける救世主になるかもしれない。

(取材・文/菊地高弘 写真/大友良行)

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