金本阪神が目論む広島モデルのチーム再建

阪神タイガース金本知憲監督がシーズン終了報告で、広島モデルを理想像として掲げる

記事まとめ

  • 阪神の金本知憲監督が電鉄本社で、シーズン終了のオーナー報告を行った
  • 会談で金本監督は古巣でもある広島モデルをチーム作りの理想像として掲げた
  • 坂井信也オーナーからも「そこを目指して欲しい」と同調されたという

金本阪神が目論む広島モデルのチーム再建

金本阪神が目論む広島モデルのチーム再建

2年契約の金本監督。来季が勝負だ。(写真・黒田史夫)

 阪神の金本知憲監督(48)が5日、大阪市内の電鉄本社を訪れ、坂井信也オーナー(68)にシーズン終了のオーナー報告を行った。坂井オーナーは、金本監督に対して、「この戦力で苦労をかけたね。こういう時期にお任せして申し訳なかった」と労った上で、「今年と同じように若手を育てながら、方針を変えずにぶれずに勝て!」と、来季への注文をつけた。

 この日の会談では、今季の反省だけでなく今後の阪神が進むべき方向性についても意見交換が行われた。

「(若手の育成には)時間がかかります。ドラフトから逆指名や自由枠がなくなり制度が変わったのは07年。そこから広島も(優勝するまで)何年、かかっているのか。ヤクルトは1年早く昨年優勝して生え抜きだけで勝てるチームになったけど、(生え抜きだけを育てて優勝するのは)1年、2年では難しいと思う。でも、目指すのは、そういうところだと思っている。いい素材をとってきて鍛えて育てること」

 金本監督が、古巣でもある広島モデルをチーム作りの理想像として掲げると、坂井オーナからも『そこを目指して欲しい』と同調された。

「僕は、そのために(監督に)選ばれたと思っている。でも広島でも10年近くの時間がかかった。。そういうことを考えれば、広島以上の練習、鍛えることをしないといけないと思う」

 広島は、生え抜きの若手に、ジョンソン、ジャクソン、ヘーゲンズ、エルドレッドらの外国人でチームのウイークポイントを埋め、そこに元阪神の新井、メジャーから復帰の黒田という“特効薬”を加えて、25年ぶりの優勝を手にした。レギュラーメンバーの年数を見ると、センターラインを固めた“菊丸コンビ”は、菊池が5年目、丸が9年目。「1番・ショート」に定着した田中が3年目、“神っている”ブレイクを見せた鈴木誠也も4年目。ピッチャーに目を向けても、最多勝&最高勝率のタイトルを獲得した野村は5年目、ストッパーに育った中崎も6年目。菊池、田中、野村らは、即戦力として大学、社会人からドラフト指名されたが、それでも5、6年という時間がかかっている。

 確かに、金本監督が言うように、1、2年で結果につなげることは容易ではないが、生え抜き育成は、ファンの支持を受けるし、チーム強化の形としては、理想であることは間違いない。

 元西武、ヤクルトで監督を務めた広岡達朗氏も、「素材重視のドラフトで選手を獲得して、教え方を知っているコーチが、正しく指導して徹底して鍛えあげる。広島は、そのスタイルを貫いた。ひとつのチーム作りのモデルケースを示した。かつての巨人のようにFAなどでとっかえひっかえ人を集めるのではなく、広島のようなスタイルが恒常的にチームを強くするし、無駄なお金もいらない。阪神も、広島モデルを追うのはいいことだと思う」と、広島モデルが、日本球界では、チーム作りの理想だという。
   

 広島モデルを実現するには、ドラフト戦略が非常に重要になってくる。
 
 坂井オーナーは、この日、報道陣に取材に対して、「ドラフトに関しては、監督の力も借りていかないといけない」と語り、「選手を見る目。慧眼でもあるし、そのあたりはフロント、スカウト陣と意見を合わせて、今年は、ウェーバーのドラフト順位も、真ん中付近になるし、他チームの情報にあまり振り回されず、監督の力を借りて、信念持ってやりましょうということです」と、付け加えた。
 
 昨年のドラフトでも、金本監督が1位の高山、6位の板山については最終決断を下した。高山は、坪井の作った歴代最多安打記録を更新、得点圏打率はリーグ2位で、一時、プロの壁にぶつかったが見事に克服して、新人王の最有力候補となった。板山も40試合1軍に抜擢され可能性は示した。

 20日に迫っているドラフトでも金本監督の慧眼に頼ろうというわけである。

 しかし、優勝という結果につなげるには、広島でも、ウイークポイントを埋めるのに、外国人、ベテランに依存したように効果的な補強は必要になってくる。金本監督も、「昨年オフは、できるだけ若い選手にチャンスを与えて育てなけれなならないので『補強は要りません』ということだった。だが、今年は『どの選手が来年、どれくらいやれる、時間がかかりそうだ』と、はっきり見えてきた。足りないところというか、選手の入れ替えの時期なので、外国人を含めて、補強は必要になってくる。打つ方であり、投手でいえば、先発よりは後ろを任せられる投手」と、フロントに補強を要望していることを明らかにした。

 FAでは、オリックスの糸井嘉男(35)、外国人では、三塁手を守れる長距離砲、ブルペン強化につながるパワーピッチャーにターゲットを絞った大型補強を水面下で進めている。

「育てながら勝っていく。勝負を度外視して育成なんて思ったこともない」

 金本監督は、そう宣言した。

 広島モデルを土台に、本社、フロントの支援をバックに、“補強”という特効薬を使って、広島が25年かかった時間を一気に短縮する新しい歴史を刻む決意である。

 (文責・駒沢悟/スポーツライター)