混沌ドラフト“隠れ1位”の熱視線を集める立正大の153キロ右腕黒木

混沌ドラフト“隠れ1位”の熱視線を集める立正大の153キロ右腕黒木

隠れ1位候補として注目されている立正大の黒木。179cm、80kの恵まれた体格から直球は最速153キロをマーク。

 投手が近年稀に見る大豊作の今秋ドラフト。

 超目玉右腕・田中正義(創価大)や、今春から赤丸急上昇の佐々木千隼(桜美林大)、夏の甲子園優勝投手・今井達也(作新学院)に「高校ビッグ3」寺島成輝(履正社)、藤平尚真(横浜高)、高橋昂也(花咲徳栄)らの逸材が揃う中、"隠れドラフト1位候補"に挙げられているのが、最速153キロの東都No.1右腕・黒木優太(立正大)だ。既に巨人、オリックス、地元横浜のDeNAなど全12球団が調査書を提出。また先週11日に行われた拓大1回戦(府中市民)には、阪神、巨人、広島など8球団のスカウトが視察に訪れた。

 この試合、日没につき延長11回引き分けで勝敗こそ付かなかったものの、先発の黒木は、9回を投げ切り今春秋通じて最多の147球、5安打8奪三振1失点と力投した。

「よく調子がいいときほどなるんですけど、右ふくらはぎがつりかけた」という9回には、一打サヨナラのピンチを招くもアウト3つを全て空振り三振。要所で雄叫びを上げるなど気迫のこもった投球で、絶対的エースとしての意地を見せつけた。

 この日の最速は147キロながら、球威で押した。縦横のスライダーなど変化球とのコンビネーションを駆使した投球に、セ・リーグの某スカウトは「この秋、一番の出来」と唸った。
ドラフト前の最終登板となった13日の拓大3回戦では、5回5失点のワースト失点で終わったが、ネット裏には、阪神、横浜DeNAら5球団のスカウトの姿があった。

 橘学苑時代、強肩かつパワーヒッター型の遊撃手だった黒木は、自身の志願により2年秋から投手に転向。3年夏にはMAX146キロの本格派右腕として、プロ注目の存在にまでなった。しかし、惜しくも指名漏れ。
 黒木は、当時のドラフトをこう振り返る。
「対戦経験もある選手が何人か指名されてたので、やっぱり悔しかったです。夏の初戦で自己最速出したときには『プロあるかな?』と、ちょっと期待してたんですが…監督さんからも『行ける!』という後押しがあったので」

 さらに「今の自分があるのは、高校時代に指名漏れしたお陰だと、今なら言えますね。ずっと反骨心だけで、やってきた。同じ世代として、大谷や藤浪に負けたくない思いはずっとある」と率直に胸の内を語った。
   

 一方で、最初は「何言ってるんだ?(苦笑)」と思ったという黒木のプロ入りを熱心に勧めた石黒滉二監督は、こう語る。

「入学当初から地肩が強くてバネがあるなと。背筋も強く、そのフィジカル面だけでもプロに行けると思い『将来、野球でメシ食えよ!』と、度々ハッパかけてました。実は内野手として、下位指名を検討してる球団があったので。当時は(投打)どちらでも行けると思ってましたね」

 立正大では、1年秋から早くも主戦を任されるなど登板機会に恵まれ、2年秋には自身初となる150キロの大台をマーク。3年時には東都選抜に選出。今春オープン戦では、最速153キロを叩き出すなど、ほぼ順調な成長振りを見せている。

 最大の武器は「馬力がある」「スピードボールが魅力」などと、各スカウト陣がこぞって絶賛する直球だ。
 立正大進学後、その出力が上がった理由を黒木に尋ねた。

「オフ期間中の下半身強化の成果ですかね。単に瞬間的な球速だけを上げるのではなく、アベレージを上げるために。具体的には、投球動作を取り入れたウェイトや、両足にチューブを付けて中腰の体勢のままカニ歩きするトレーニングの2つです。毎オフやってましたが、より力を入れるようになったのは、3年秋終わってからですね」

 特筆すべきは「趣味の釣りで自然に鍛えられた」という、リストの強さを生かしたクイックモーションだ。プロでも1.2秒を切れば合格点と言われるが、黒木は最速1.1秒と、それを上回っている。またクイックでも、球威やスピードが落ちないのも、大きな強みだ。

「場合によっては、クイックの方が球速出ます(笑)」

 ちなみに高校時の持ち球は横スラとフォークの2種類。
 現在は縦スラ、バックドア、カット、カーブ、チェンジアップなど格段に増え、直球で押すだけでなく、器用さも併せ持つ。遊撃手出身ゆえのフィールディングの巧みさや、そのゆったりしたフォームから、ロッテのエース・涌井秀章を彷彿とさせる伸びシロ十分の逸材右腕だ。

 満を持してドラフト上位候補として臨んだ4年春リーグ戦では、負けなしの3連勝。
 ところが、好事魔多しとはこのことか。
 5月3日青学大1回戦の終盤、一塁ベースカバーの際に打者走者と交錯。激しく転倒したものの、アクシデントを物ともせず完投し4連勝。しかし翌日と翌々日は、ブルペン投球のみで登板は無し。このカードを落とした後に右肩亜脱臼と診断され、4季振りの2部優勝に王手をかけながら、寸前で逃すこととなった。

「実は(転倒した)次の日から急に右肩が上がらず、キャッチボールすらままなりませんでした。でも優勝争いの最中だったので、相手を欺くためにも、痛みを堪えて連日ブルペンには入りました(苦笑)」

 なかば"手負いの状態"ながら、その実力が認められた形で、黒木は6月の日米大学野球代表選考合宿に初参加。「前週にブルペン入ったばっかり」という"ぶっつけ本番"での登板だった。

 しかし、まだ試合勘が戻ってなかったのか。2回を3連打含む5安打2失点の内容だったが、今秋ドラフト候補かつ大学ジャパンの常連・佐藤拓也(立大)には、得意の縦スラで空を切らすなど計4三振を全て空振りで奪う力投を見せた。

 また球速は、投手陣20人中最速タイの152キロ含め大台を7度もマーク。ケガからの回復振りをアピールしたものの、残念ながら、初の大学日本代表には選ばれなかった。

 さぞかし悔しかろうと思いきや、
「(3連打されて)レベルの高いシート打撃をやってるようでした(苦笑)。でも、逆にコレで秋のリーグ戦へ万全の調整ができると、直ぐに切り替えられましたね」

 芯は負けず嫌いな東都No.1右腕の目標は、パ・リーグ屈指のエース、楽天・則本昂大だ。

「大学選手権で20奪三振(参考記録)したときの映像をYouTubeで見て、初めて『敵わないな』と。生で見たいと思って、高3のときに神宮大会見に行きました。実際目の当たりにして、『こういう投手がプロで活躍するんだろうな』と。自分も、則本投手のようなストレートや横スラを投げてみたいですね」

 立正大から直接ドラフト指名された選手は、94年西口文也(元西武)を筆頭に、07年田中慎太朗(元阪神)、10年南昌輝、 13年吉田裕太(ともにロッテ)の計4名(※田中は育成)。前評判通りドラフト1位指名されれば、同校初の快挙だ。

 10月20日─── 運命の扉は、間もなく開かれる。

(文責・写真・徳吉刑事/フリーライター)