角居勝彦調教師 先々を見すえた選択による秋のGIトライアル

角居勝彦調教師 先々を見すえた選択による秋のGIトライアル

秋のG1シーズン到来

 秋華賞トライアル・紫苑Sに続く週はローズステークス(阪神 芝1800メートル)と菊花賞トライアルのセントライト記念(中山 芝2200メートル)、さらに翌週は神戸新聞杯(阪神 芝2400メートル)と続く。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、どんな将来を考えて秋の3歳GIトライアル出走を選択するのかについて解説する。

 * * *
 トライアルとはいえ、3レースともに本番とは違う競馬場で距離も異なります。また菊花賞は3000メートルという距離もあって、春のクラシックに比べて絶対的目標の感が薄く、トライアルも出走権を取りにいくだけではない多様性があります。「この馬はどの路線に進むか」という意味合いも大きいのですね。

 もちろん王道を突き進む馬もいます。2013年のエピファネイアは皐月賞2着、ダービー2着のあとで神戸新聞杯を完勝。完全に菊花賞照準で、本番では2着に5馬身差の圧勝でした。ダービーでしのぎを削ったライバルたち(キズナやロゴタイプ、コディーノ)が不在だったとはいえ、強い競馬を見せてくれました。

 その一方でトライアルに使わずに条件戦で古馬と戦う道もある。やはりトライアルを重視するのか、条件戦の価値を重く見るのか。トライアルのほうが賞金は高いものの、そこで落ちていくよりは条件戦を一歩ずつ進んでいくほうが良策のときもある。

 力があるとわかっている馬ならば、むしろ古馬と走って勝ち上がっていくほうがいい。今は古馬とのレースのほうが厳しくなっていて、3歳だけで競った馬と、古馬にもまれた馬はやはり違います。

 逆に力量が定まっていない馬ならばトライアルに使う。GI路線に進むか、時期尚早と判断して引き下がるかの物差しにするわけですね。

 特に牝馬は夏場によく走る。500万クラスでも3歳牝馬が古馬の牡馬に勝ったりすると、トライアル馬よりも強く思えます。

 そういった意味ではカイザーバルは秋華賞を狙いたい。去年9月の阪神で新馬勝ちし、3月の君子蘭賞で2勝目。7月末の道新スポーツ賞(札幌 芝1500メートル)は1番人気だったものの6着でしたが、古馬にもまれた経験に期待したいところです。

 そして、春のクラシックで苦杯をなめたリオンディーズは神戸新聞杯に出走予定です。しかし目指すのは菊花賞ではなく2000メートルの天皇賞・秋です。本番に出ないのにトライアルに使うなよという声が聞こえてきそうですが、阪神2400メートルで折り合えるかどうか見てみたい。折り合えるとなれば種牡馬価値も上がります。圧勝するよりも折り合って勝ってほしいと期待しています。

 その先、ジャパンカップに行くのか有馬記念を目指すのか。距離が少し長いということになれば香港も視野に入ります。秋のトライアルは多様性が楽しみだといえます。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。

※週刊ポスト2016年9月30日号

関連記事(外部サイト)