楽天とSBにあって巨人と阪神にない、「育成力」の差

江本孟紀氏が楽天と巨人、阪神の『育成力』の差を指摘 交流戦では『パ高セ低』

記事まとめ

  • 江本孟紀氏が巨人の補強を無駄使いと述べ、注目度が高くて若手を使えぬ事情にも触れた
  • 江本孟紀氏は対比として、楽天のFAで岸孝之を獲得した『量より質』の補強を挙げた
  • また、元巨人の大田泰示は日ハムでレギュラー定着し中田翔以上の6本塁打を放っている

楽天とSBにあって巨人と阪神にない、「育成力」の差

楽天とSBにあって巨人と阪神にない、「育成力」の差

由伸監督の苦悩は続く

 プロ野球・交流戦の開幕カードとなる楽天との初戦に、巨人は満を持してエース・菅野智之(27)をぶつけた。ところが5回8失点と打ち込まれて屈辱のKO。

「菅野は交流戦開幕まで、8試合に登板して3連続完封を含む6勝1敗、防御率1.58とセの球団相手には抜群の安定感を見せていましたが、この日は浮いたボールを狙い撃ちにされ、防御率も一気に2.26にまで下がった。出鼻をくじかれた巨人は3連敗を喫しました」(スポーツ紙デスク)

 リーグを代表するエースを打ち砕いた楽天は今季、12球団トップのチーム打率.283(5月31日終了時点、以下同)。32勝12敗でパ・リーグ首位を快走中だ。対する巨人は借金生活で6月を迎え、パの新興球団とかつての球界の盟主の明暗が分かれた格好である。

 パで楽天を追う2位ソフトバンクも、交流戦開幕カードではセの最下位・中日を相手に連日、圧倒的な力の差を見せつけた。

 近年、交流戦のたびに指摘されるのが「パ高セ低」だ。2005年の導入以来、過去12年間の通算成績はパの925勝821敗54分け。

 プロ野球のデータに詳しいジャーナリストの広尾晃氏は「DH制があるため、強打者の多いチーム編成となるパが有利になりやすい。メジャーのインターリーグ(交流戦)でも、DH制のあるア・リーグが2730勝2434敗と大きく勝ち越している」と制度の違いに言及する。

 その上で、巨人とパの上位球団の間には「育てる力」にも大きな差があると指摘した。

「ここ数年、巨人でチーム内から新戦力がほとんど出てこないのと対照的に、戦略的に厚い選手層を誇るのがソフトバンクです。

 育成選手が23人もいて、二軍に上がるのも大変という状況を作り、競争を勝ち抜かせる。今季は2013年ドラフト4位、上林誠知(21)が一軍に定着し、打率.316、8本塁打と大活躍。それでも8番ライトの定位置を守るのに必死という状況に置かれ、ハングリー精神は失っていない。WBCでブレイクしたエースの千賀(滉大、24)も育成あがりです。

 一方の巨人もソフトバンクを上回る育成選手を26人も抱えますが、結局、オフのたびにFAや外国人選手で補強してしまい、生きのいい若手が上がるチャンスが失われている」

◆太田よ、帰ってこい!

 辛口評論で鳴らす江本孟紀氏が巨人の現状について指摘する。

「カネがありすぎるから、無駄使いばかりになるんじゃないですか。今季も30億円かけて補強したのに、全く戦力になっていない。

 高橋(由伸)監督も気の毒だと思いますよ。結局、本気で若手を育てようとしたら、広島みたいに“20年くらい優勝できませんが、それでもいいですか?”というくらいの気構えが必要。巨人でそれは許されない。補強した大物が二軍に落ちた時だけ若手を使って、“すぐ結果を出せ”といっても、それは酷な話です。

 阪神もよく似ていて、若手を使うのはベテランがガス欠でヘタってきた時くらい。金本(知憲)監督は超変革を掲げて頑張っているほうだとは思いますが」

 阪神の場合、マスコミからもファンからも注目度が高いぶん、負けが込み始めると“我慢して若手を使う”という姿勢を貫きづらくなる。広島に首位を明け渡して交流戦開幕を迎えた金本監督も、シーズン前半にして正念場を迎えている。

 セ・パの人気球団の間では、若手にとっての「土壌」が全く異なる。

 象徴的なのは巨人の2008年ドラ1・大田泰示(26)だ。将来の4番候補と期待されながら、補強組とポジションを争う三塁や外野で定位置を掴めず、8年間でわずか9本塁打。それが昨オフにトレードで日本ハムに移籍すると、「失敗していいから思い切って振っていけ、という指導が肌に合った」(担当記者)といい、7番レフトでレギュラーに定着し、不調の主砲・中田翔(28)を上回る6本塁打を放っている。江本氏が続ける。

「日本ハムの使い方が取り立てて上手いというわけではありませんよ。すぐに結果を求められるわけではないからのびのびプレーできていることに尽きます。巨人に戻したら、またダメになると思いますよ」

 対する楽天は選手の年俸総額リーグ最少だが、それだけに補強は巨人と違って「量より質」を追求する。

 今季は西武からFAで岸孝之(32)を獲得。エース・則本昂大(26)との2枚看板となって連敗を回避し、躍進の原動力となっている。

「チームの先発陣のなかで安楽智大(20)をはじめとする若手が柱に育つまでの間、チームを引っ張っていく存在としてピンポイントの補強をしたわけです。巨人のように『FA市場で他球団が欲しがる戦力は獲っておけ』という考え方とは全然違うから、結果に差が出て当然」(江本氏)

※週刊ポスト2017年6月16日号

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