最下位に沈んだ長嶋巨人を応援した『週刊読売』の独創性

最下位に沈んだ長嶋巨人を応援した『週刊読売』の独創性

弱い時こそ応援するのが本当のファン?

〈ふえるふえる 弱い巨人にファンがふえる〉──これは、かつて読売新聞東京本社が発行していた『週刊読売』の1975年5月17日号の見出しだ。

 同誌は43年に創刊され、2008年に休刊。1975年は、開幕6試合目から最下位に沈み続けた長嶋巨人を“あの手この手”で応援していた。

 球団史上ワーストの13連敗を喫した今季の由伸巨人と1975年の長嶋巨人に符合する点は多い。ただ、当時の『週刊読売』のようなメディアは今はない。とにかく、何が何でも巨人を応援するという凄まじい熱意が誌面から溢れているのだ。

 冒頭の記事では、著名人の巨人ファン5人による応援メッセージを掲載。数学者の岡潔氏は、10勝16敗3分け(5月17日時点)の巨人について〈“燃えよ長島”今シーズンの優勝は間違いない〉と断言している。

 その“根拠”は独創的だ。たとえば新加入の球団初の外国人助っ人・ジョンソンの不振について、〈打つ打たないは別として、私は彼をなかなか見所のある男と思っている。日本語の練習を一生懸命やっていると聞いたからである〉と、野球に全く関係のない話を持ち出して擁護している。

〈私、大好きです、すばらしいチームをつくる人〉と長嶋監督を評した歌手の天地真理は、〈長島さんは明るい性格だから、明るいスポーツをしてくれさえすれば、当面、勝負にこだわらないように、と私は考えています〉とする。たとえ勝てなくても〈すばらしいチーム〉だったのである。

 その次のページからは、〈アンチ巨人の諸氏もいう「あの負けっぷりが気に入った!」〉と題して、“巨人嫌いが弱い巨人を好きになってくれたから、それを前向きに捉えよう”と訴える。記事中で阪神ファンのイラストレーター・山藤章二氏は〈長く苦しめば苦しむほど、強い巨人が出来るんじゃないかと思うのですよ。そして、強く成長した巨人を阪神が倒す。こんな楽しいことはないじゃありませんか〉と語っている。

 愛する巨人のため、複雑な論理構成に挑んでいる。8月2日号は〈特集 弱いジャイアンツに愛をこめて〉と見出しに打ち、〈ヤケクソ・フレーフレー座談会 いまからでも間に合う!巨人逆転優勝の妙手〉と題した座談会を開催。このとき、28勝43敗4分け、首位とのゲーム差10.5(8月2日時点)である。

 元総評事務局長・岩井章氏、参院議員・コロムビア・トップ氏ら豪華メンバーによる座談会では、足腰を鍛えさせるために、〈いっそ、巨人の選手に木登りをさせちゃおうか〉などと真顔で(?)語り合われている。1975年当時、「報知新聞」で長嶋番を務めていたジャーナリスト・柏英樹氏の話。

「あの頃の報知は巨人が負けたら1面から外してしまうことが多かったが、あれだけたくさん負けているとそうもいかない(笑い)。

 開幕3連戦では王(貞治)さんが欠場して連敗スタート、ジョンソンが8打席連続三振を喫して“ジョン損”と揶揄されるなかで、明るい材料をなんとか見つけて記事を書いた。評論家やファンの声を集めて打開策も載せても、打開策が追いつかないスピードで負けていきましたからね(苦笑)。あの頃の『週刊読売』も我々と同じような苦労をしてたんだと思いますよ」

※週刊ポスト2017年7月21・28日号

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