DeNA筒香嘉智「僕はコツコツやる練習が苦にならない」

DeNA筒香嘉智「僕はコツコツやる練習が苦にならない」

4年連続で本塁打20号以上の大台を突破

「自分はプロ野球選手なので、シーズンが終わった時に、それが良かろうが悪かろうが、自分の成績に責任を取らなければなりません。でも、個人の成績より大切なことがある。それは優勝するためにチームが勝つこと。僕はそこにしか興味はありません」

 しゃべり方は謙虚だが、言葉の端々に自信が溢れ出す。昨季、セ・リーグの二冠王(本塁打・打点)に輝いた横浜DeNAベイスターズの主砲・筒香嘉智(25)。今年3月のWBCで侍JAPANの4番打者も務めた彼が、現役日本人最強打者であることに異論を挟む野球ファンはいないだろう。

「調子のいい時も悪い時も、僕は常に“もっと良くなろう”と考えている。だから二冠王になった時も、そこまでメチャクチャ嬉しいという感覚はなかった。タイトルを獲ることよりも、自分がもっと野球が上手くなることの方に興味があったからです」

 現役最強打者は、何を考えながら、どんな精神状態でプレーしているのか。打席での集中の仕方などを聞きたくて、どんなイメージを持って投手と相対するのか質問した時、興味深い答えが返ってきた。

「普段よく使われる“集中する”という言葉は、本当の意味がはき違えられていると思う。自分の視野や精神を一点に凝縮させている状態を指すような意味で使われますけど、それは集中ではなく、ただ入り込んでいるだけ。広い視野ですべてを捉えること。それが本当の意味での集中している状態だと思います」

 筒香が、少年時代から松井秀喜に憧れていたことは有名な話だが、実はその松井も現役当時、「試合全体で集中しているので、打席の中だけ集中するという意味がよくわからない」という感覚を持ってプレーしていたそうだ。

「何かをイメージする段階は、試合前のバッティング練習や、ピッチャーの映像をチェックする時に終わっています。だから、試合に入れば状況に応じて自分の頭を整理して打席に向かうだけ。打席に入って打ち方がああだこうだと考えていたら、打てるものも打てなくなってしまう。そういう感覚です」

 身体が無意識で反応できるようにならなければ、試合で使える技術とは言えない。そして、それを身につけるためには「繰り返すしかない」という。

「反復練習が辛いか? そんなことはありませんよ。僕は飲んだらすぐに効く特効薬のようなものは好みませんから。長く続けて、少しずつ上達することによって深い部分で自分のものになる。ちょっとやって、パッとできるようになっても、浅い部分でやったことにしかならない。だから、僕はコツコツやる練習が苦にならないんです」

 不器用だからこそ謙虚になれる。だから繰り返し練習できて、自分の身になる。これは侍JAPAN前監督の小久保裕紀が現役時代に貫いた練習スタイルでもある。

「勝つ喜びを感じること。ファンの方の声援の中でプレーすること。それが野球をやっていて楽しい瞬間ですね。ファンの皆さんがいなかったら、僕たちは試合をする価値がないですし。これだけ毎試合スタンドを埋めてもらって、僕らベイスターズの選手たちは本当にやりがいがあると思っています」

 先ほどの松井や小久保をはじめ、イチロー、金本知憲、青木宣親、井口資仁、城島健司……これまで何人もの名選手の話を聞いてきた。野球に対する考え方はそれぞれだったが、自己鍛錬へのストイックさ、勝利のためにプレーするプライド、ファンへの想いは共通していた。それは好打者を超えた大打者の佇まいと言ってもいいだろう。25歳の筒香にも既に、彼らと同じような風格を感じる。

 歴代の強打者たちに肩を並べつつある彼が、今後目指す打者像とは──。

「その答えは……わかりません。現役を引退して野球を終えるころ、自分が一人の人間として、どういう考えに至っているのかは定かではありませんけど、現時点では単純に野球が上手くなりたいという思いが一番強いですね」

 若き主砲は、どれほどの高みに上っていくのか。歴代最強打者への道のりは始まったばかりだ。

【PROFILE】つつごう・よしとも/1991年11月26日生まれ、和歌山県出身。横浜高卒業後、2010年ドラフト1位で横浜に入団。1年目から頭角を現わし、二軍の本塁打王と打点王の二冠を獲得。翌2011年にも二軍の本塁打王を獲得した。同年夏頃から一軍に定着して中軸打者として活躍。2012年には日本代表に招集される。2016年には44本塁打、110打点という好成績を残して二冠を獲得。2017年、WBC日本代表の4番打者を務めた。

●撮影/スエイシナオヨシ 取材・文/田中周治

※週刊ポスト2017年9月15日号

関連記事(外部サイト)