緒方カープの舞台裏 4番・新井の打点が表す「育成の強さ」

 ペナントレースが開幕した当初、プロ野球ファンの注目度がもっとも高かったのは阪神タイガースだった。ドラフト1位の高山俊(23)がトップバッターを務め、横田慎太郎(21)が続く。この初々しい打線は「何かやってくれるんではないか?」との期待を持たせた。しかし、交流戦を終えたころ、阪神は首位戦線から脱落し、広島東洋カープが混戦状態から抜け出した。

 巨人、DeNA、ヤクルト、阪神、中日は、なぜ、広島に敵わなかったのか…。興味深いデータがある。広島が優勝を決めた9月10日の試合終了時点でのチーム別対戦データを見ると、広島は2位巨人と11勝11敗、3位DeNAには13勝11敗。4位ヤクルトには15勝8敗、5位・阪神とは17勝6敗、最下位・中日とは15勝6敗1分け。Aクラスのライバルチームとはほぼ互角で、Bクラスチームから確実に貯金を上げていた。もっといえば、最大のお得意サマは「貯金11」を稼いだ阪神ということになる。

 阪神との戦い方が違っていたら、広島は独走態勢を築けなかったのではないだろうか。

新井貴浩 打率3割4厘 本塁打18 打点98
福留孝介 打率3割9厘 本塁打9 打点51

 両チームの4番バッターの成績を比較してみた。本塁打数こそ違うが、打率ではほとんど差がない(同日時点)。新井の打点98はリーグトップ。得点圏打率は福留が3割5厘なのに対し、新井は3割4分5厘。出塁率は福留のほうが上。大きく違うのは「打点」だ。打点は「得点圏打率の高さ」でも証明されているが、こうも解釈できる。前打者が出塁し、得点圏まで進まなければ、打点は稼げない。「打点の差」は打線(全体)にあるのではないだろうか。1番から3番のバッターを比較してみた。
 
田中広輔 打率2割7分2厘 本塁打13 盗塁26
菊池涼介 打率3割2分 本塁打13 盗塁13
丸佳浩 打率2割9分2厘 本塁打19 盗塁21

 田中は全試合出場(同時点)、菊池、丸も130試合以上出場している。広島が1番、2番、3番を固定できたのに対し、阪神は1番を務めたバッターが計10人、2番は11人、3番は13人。1番をもっとも多く務めたのが高山俊の55試合だから、広島打線のような安定した得点力は望めない。
 「阪神は世代交代の真っ最中。高山、横田、北條、原口らの若手が成長すれば…」(在阪記者)
 阪神も広島のお得意サマにされたままでは終わらないだろう。

 今年の広島は逆転勝ちが多かった。82勝(同時点)のうち、42試合がそうだった。4番新井の前に走者をためることのできる打線の力も大きいが、見方を変えれば、「先発投手陣が先に失点するケースが多かった」ということになる。巨人、DeNAは故障者続出で苦しんだ時期があった。中日は世代交代に進まない。ヤクルトは絶対的な守護神を失い、戦い方を変えなければならなかった。ゲーム差は大きく開いたが、広島は圧倒的な強さを誇ったわけではないが、1、2、3番を託せる選手を育てた。そして、上位打線を固定させた。この得点能力を高めた野球が優勝に引き寄せたのではないだろうか。

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