日本シリーズで激突した「人間対コンピューター」

日本シリーズで激突した「人間対コンピューター」

柳田悠岐

 主砲対バッテリー、「動」対「静」、そして、人間対コンピューター。これが、今年の日本シリーズのキーワードとなっている。
 日本シリーズ第2戦は広島東洋カープが勝利し、対戦成績を1勝1分けとした(10月28日)。広島が勝てば、34年ぶりの日本一となるが、初戦を引き分けたとき、関係者はイヤなことを思い出していたという。

〇1975年 阪急3−3広島
〇1986年 広島2−2西武

 日本シリーズ初戦での引き分けは、今年で3度目となる。奇しくも、全て広島絡みとなったが、その引き分けで始まった過去2回の日本シリーズは、全て広島が敗れている。
「この25日のドラフト会議で、広島とパ・リーグ代表の福岡ソフトバンクは、1位指名の入札でも競合しています。抽選の結果、広島が意中選手を引き当てたので、『ツキがあるのは、広島のほう』と見ていたんですが」(プロ野球解説者)
「ツキがどうの」で勝敗が決まるものではないが、勝負師・プロ野球選手はゲン担ぎを好む。「気持ち」の問題なのだろう。しかし、そんな「ツキ」とは関係ない、数値と解析の激突も展開されていた。

 第2戦の4回表、一死一・三塁という好機で4番・柳田に打席がまわってきた。広島バッテリーは内角球を使って、簡単に2ストライクまで追い込む。1球遊んで、4球目に内角の膝元へ直球(ツーシーム)を投げ込む。空振りの三振だ。
 現地入りしていたプロ野球解説者の一人がこう言う。
「柳田はフルスイングが代名詞のパワーヒッターです。その柳田を腰砕け状態で空振りさせたんですから、その精神的ショックは相当なもの」
 広島捕手の石原の配球テクニックによるものである。日本シリーズに進出するチームは、例外なく、相手チームを研究する。主砲、エースの攻略法を見つけ、徹底して攻めるのが短期決戦の必須事項だからだ。

 その裏ではスコアラーが対戦チームの試合に乗り込み、さまざまなクセや特徴を調べて持ち帰るのだが、そこから先のやり方が広島だけ異なるのだ。
「他11球団にあって、広島だけにないもの。そういう機材があるんです。『トラックマン』を広島だけは使っていないんです」(球界関係者)
 トラックマンとは弾道測定器のことで、近年、急速に普及した。対戦投手の分析では、ボールのリリースポイント、回転数、変化球の曲がり幅など全てを数値化している。たとえば、速球派投手と対戦する場合、「スピードはたしかに速いが、ボールの回転数が少ないのでフルスイングすれば負けない」といった攻略法を、その数値から見つけ出しているという。

 その最先端マシンを広島が導入していない理由は「必要ないから」だという。要するに、自軍スコアラーが「対戦チームの主力バッターの苦手コースを見つける」「相手投手の配球の傾向を探す」といったアナログ式なのだが、今季のペナントレースも独走したところを見ると、「人間の感覚」も、コンピューターで編み出した数値にも劣らないものがあるようだ。その一つが、フルスイングの柳田を腰砕けにさせた石原の配球だった。
「ホークスの工藤監督は第2戦で打線を組み換えるなど『動』の指揮官です。対照的に、緒方監督は動かないタイプ」(前出・プロ野球解説者)

 広島には“人間力”で過去2回のジングスも打ち破ってもらいたいが…。(スポーツライター・飯山満)

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