【鬼筆のスポ魂】山本臨時コーチで藤浪再生となるか

【鬼筆のスポ魂】山本臨時コーチで藤浪再生となるか

安芸キャンプで藤浪(右)を指導する山本臨時コーチ(水島啓輔撮影)

 安芸のブルペンが活気にあふれている。主役は矢野燿大監督(50)でもなければ、主力投手でもない。臨時投手コーチの山本昌氏(54)が縦横無尽に動き回り、投手たちを指導。特に今季0勝に終わった大型右腕、藤浪晋太郎(25)の再生法が注目され、2人の“師弟関係”がホットな話題となっている。

 山本氏は阪神の高知・安芸秋季キャンプ(10月31日〜11月19日)に初めて臨時コーチとして参加した。中日の現役時代にバッテリーを組んでいた矢野監督に指導を請われて快諾。タイガースの帽子を被ってグラウンドに登場するや、藤浪の肩をポンポンとたたき、そこから二人三脚の再生プランが始まった。

 「投球がスッポ抜けるのはリリースの時に右手首が寝ているから。手首を立てて、縦のラインを崩さなければボールは散らばらない」と話した山本臨時コーチは自らの現役時代に有効だったチェンジアップの握りを伝授。チェンジアップを投げることで手首が自然と立ち、直球を投げるときにも手首が寝ない…という“副産物”が生まれると熱心に説いた。

 藤浪も真剣に耳を傾けて(1)手首を立たせる(2)リリースの時にボールを縦にたたく−というテーマで連日の熱投。2人の間に流れる充実した空気感だけを見れば、やっと藤浪復活の糸口が見えたか…と胸が熱くなる。

 「山本教室」は藤浪や阪神にとって絶妙なタイミングだった。今季の1軍登板はわずか1試合。右打者の頭部にスッポ抜ける制球難が克服できずにいた。10月に行われたフェニックス・リーグでは平田勝男2軍監督(60)の方針で短いイニングを投げながら感覚を取り戻す作業を行っていたが、結果を求められた10月26日の韓国・ハンファ戦で先発したが、4回102球の9四球。平田2軍監督も「せっかく積み上げたものが最後に…残念」と絶句していた。

 藤浪やチーム関係者は深い失意に沈んでいた。プロ入りした2013年から3年連続の2ケタ勝利を飾った右腕がこのまま消えてしまうのか…。球団関係者も「最後は自分自身ではい上がってくるしかない。プロの世界は良くも悪くも本人次第だ」と話し、再生に導けない現状にいらだちの募る心境を明かしていた。そんなタイミングで救世主の如く山本臨時コーチが現れた。

 山本臨時コーチは中日一筋29シーズンで、219勝165敗5セーブ。最多勝3度に最優秀防御率1度、最多奪三振1度で沢村賞も1度。日本プロ野球史上で初めて50歳での登板を花道に現役を引退した。ドラゴンズの大功労者なのだが、古巣での指導歴はない。中日の与田剛監督(53)は1965年生まれの同級生。現役時代は通算8勝19敗59セーブと実績ではかなりの差があり、中日関係者は「山本昌を指導者で起用したいのは山々だが、与田監督とのバランスが取れない。監督も使いにくい。なので呼べなかった」と話した。ドラゴンズの事情を知り抜いている矢野監督は山本臨時コーチを一本釣りした。

 阪神OBのひとりはこう漏らしていた。「山本昌が藤浪に言っていることを福原や金村両投手コーチも今まで散々言っていたはず。でも金村の言ったことは耳に入らなくても、昌の言ったことはうなずける。これが実績というヤツ」。

 早くも球団内には来春キャンプでの山本臨時コーチ“続投”を検討する声が出ている。これで藤浪復活なら大ヒットの人事。さて結果はどうなるだろうか−。

(特別記者)

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