【内田雅也の追球】岩崎温存の阪神流管理は理解した 「10・8」からは「異常采配」を

【内田雅也の追球】岩崎温存の阪神流管理は理解した 「10・8」からは「異常采配」を

<D・神(25)> 逆転2ランを浴びた及川(右)を慰める岩崎(撮影・大森 寛明)

 ◇セ・リーグ 阪神3ー4DeNA(2021年10月7日 横浜)

 阪神は1点リードの8回裏になぜ岩崎優を投入しなかったのか、という批判がある。代えて起用した及川雅貴が逆転2ランを浴びたからだ。

 優勝を争うヤクルトが同点でも清水昇とスコット・マクガフをともに3日間連投させ、サヨナラ勝ちしたから余計である。

 阪神は救援陣が登板過多にならぬよう相当に配慮、管理している。今年に限らず、近年の傾向である。今季のセットアッパー・クローザーでいえば、

 岩崎54試合(36ホールド)

 ロベルト・スアレス55試合(38セーブ)

 に対し、ヤクルトは

 清水63試合(43ホールド)

 マクガフ58試合(26セーブ)

 となっている。

 岩崎登板となれば3日間連投(5日で4試合)だった。今季過去2度あるが、当時の疲労は目に見えていた。だから8回裏に入る時点で、岩崎温存、及川起用と予測していた。違和感は感じなかった。

 結果は裏目と出て、継投ミスの声もあがる。しかし、球団の財産でもある選手を壊してまで行う用兵は避けるべきだ。

 他に選手もいる。監督・矢野燿大はだから自ら決断、信頼して送り出した及川に珍しくマウンドまで出向いて激励し、そして打たれて敗れた。相当に堪える敗戦だが、指揮官としては結果は受けいれるしかない。

 敗戦後、岩崎と先発勝利が消えた伊藤将司がともに及川の肩を抱き、慰めていた。全員野球という言葉を使うなら、阪神は全員で勝ちにいき、全員で敗れたのである。

 ただし、いまの阪神に悲しんでいる暇などない。試合後の深夜、横浜スタジアムから東京都内のホテルまでバスで移動した。きょう8日からヤクルトと直接対決3連戦を迎える。以前、原稿で予告のようにして記した優勝を占う天王山である。ヤクルトが勝ちまくっている現状では3連勝がほしい。「マスト・ウィン・ゲーム」の3連戦である。

 時は「10・8」である。あの1994年10月8日、巨人―中日、史上唯一の最終戦同率優勝決戦の日である。

 巨人監督・長嶋茂雄は槙原??己、斎藤雅樹、桑田真澄の先発3本柱を投入した。中日は今中慎二の後、いつもの継投策を貫いた。「あの年の中日はあの連中でつないできたシーズンだったんです。(中略)だから、それでいこう、と……」と中日監督・高木守道が後日談で打ち明けている。鷲田康の『10・8 巨人VS中日 史上最高の決戦』(文春文庫)にある。

 そして中日は敗れた。高木はさらに反省の弁を述べている。

 「ああいう試合を普段通りに、いつも通りにやろうという考えは大間違いでした。やっぱり、あの試合は(中略)特別な試合だったんです」

 特別な試合には特別な用兵。阪神はそんな特別を出す時にきているようだ。

 「10・8」が来れば、矢野もヘッドコーチ・井上一樹も思い起こすことだろう。当時は2人とも中日の若手だった。ベンチの片隅で激闘を肌で感じていた。あの殺気立つ闘志がいまはほしい。そして異常な采配をふるう時である。 =敬称略= (編集委員)

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