ソフトバンク工藤監督に謝りたい 選手は監督を映す鏡です

ソフトバンク工藤監督に謝りたい 選手は監督を映す鏡です

ソフトバンク・工藤監督

 【君島圭介のスポーツと人間】子は親を映す鏡という。少し前の話だが、あるドラマの撮影現場で工藤阿須加さんと雑談をする機会があった。「お父さんの現役時代に担当記者だったんですよ」と伝えると、阿須加さんは「そうなんですか!」と目をキラキラさせて喜んでくれた。

 何てさわやかな青年だろう、と気分をよくして帰路に就きかけると、マネジャーらしき男性に呼び止められた。こんなとき、よくあるのはあのコメントは使うなとか、こういう感じで書いてくれという要望だ。ところが、男性の口から出た言葉は違った。

 「工藤が先ほどは突然のことでお名前を伺うことを忘れてしまい失礼しました、と。お会いしたことを父親に報告したいということなので、よろしければお名刺をいただけませんでしょうか」

 こちらが恐縮してしまった。父の顔をつぶせないという阿須加さんの心遣いなのだろう。また、息子にとってそういう存在であるソフトバンク・工藤公康監督に感心した。

 そんな子育てが出来る人間がいい指導者になれないはずがない。工藤監督が指揮を執ってきたソフトバンクの選手たちを見れば分かる。内野ゴロにも一塁まで全力疾走を怠らない(デスパイネまで!)。審判の判定にあからさまに不満な態度を取らない。取材に対して横着な振る舞いをしない。7年間で5度の日本一を達成したことより、彼らのような野球に真摯な選手たちを育てた功績こそ大きい。「選手は監督を映す鏡」なのだろう。

 工藤監督が今季限りで退任するという。まだ本人の言葉として語られてないので断定は避けるが、現役時代の唯我独尊を地で行くような姿から、こんな素晴らしい指導者になるとは想像していなかった。正直、人格者である王貞治氏、秋山幸二氏の後を継ぐと知ったときは少し意外でもあった。

 ここで全面的に謝罪したい。工藤監督は適任だった。尊敬すべき指導者であり、父親だ。(専門委員)

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