清原は大魔神から本塁打… 仙台開催のオールスターは何かが起きる 過去3回の名場面

清原は大魔神から本塁打… 仙台開催のオールスターは何かが起きる 過去3回の名場面

田中将大投手(サーモン/Wikimedia Commons)

 プロ野球オールスターゲームが2年ぶりに帰ってくる。2021年の夢の球宴の舞台は、昨日16日に埼玉西武ライオンズの本拠地・メットライフドーム、本日17日に東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地・楽天生命パーク宮城で開催される。後者の球場で開催されるのは今年で4回目なのだが、実は過去3度の開催時、いずれも名場面が生まれたり、珍事が起きたりしているのだ。

 最初に仙台でオールスターが開催されたのは92年7月21日、第3戦だった。まだイーグルスが誕生する前で、12球団の本拠地や準本拠地以外の地方球場での初開催、同時に東北でも初となった。

 なぜ最初に仙台が選ばれたのか。同球場は73年にロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)の準本拠地に、74年から4年間は本拠地となり、年間40試合以上が行われていた。仙台2年目の74年にロッテはリーグ優勝したのだが、収容人員不足が原因で日本シリーズが行われなかったのだ(代わりに後楽園球場が使用された)。つまりこのときの“貸し”がようやく返されたのだ。

 地元のファンが待ちに待った夢の球宴。杜の都が熱気に満ちるなか、試合は1-0と全パがリードする展開に。だが、8回表に全セが一気に4得点し、逆転に成功する。その直後の8回裏から全セのマウンドには仙台市出身の“大魔神”佐々木主浩(元・横浜ベイスターズなど)が上がった。そして9回裏に全パの主砲・清原和博(元・西武ライオンズなど)との初対決が実現したのである。

 高校時代からのライバルでもあり、親友でもある2人。佐々木は公式戦なら決め球“フォーク”を交えるところだが、「投げる気がしなかった」と男気をみせ、ストレートだけの真っ向勝負を挑んだ。

 結果は右中間スタンドへのソロ本塁打。それでも2回をこの1安打のみに抑え、三振も3つ奪い、セーブをマークしている。こうして全セは4-2で勝利したのであった。


■仙台のファンの気合が入りすぎ…


 2度目に開催されたのは07年7月21日、第2戦である。なんとこのときは55年以来、52年ぶりのデーゲームでの開催となった。

 というのも、この日はアジアカップサッカー選手権準々決勝に日本代表が進出した場合の試合日に当たっていたからだ。翌日に試合が雨天などで延期された場合には参議院選挙が予定されており(結果的には翌週の29日になった)、テレビ放送の日程調整という問題が生じた。このため選手たちは第1戦終了後の20日深夜に、新幹線を借りきって移動したのだった。

 珍事はもうひとつある。この年は05年にイーグルスが誕生してから、初めての開催ということもあり、仙台のファンは気合が入っていた。そのためこの時点でチームはリーグ5位に沈んでいたにも関わらず、ファン投票でパ・リーグ12枠のうち、8枠も占めてしまったのだ。先発投手でこのとき新人だった田中将大、中継ぎ投手で松本輝(ケガにより出場辞退)、抑え投手で福盛和男、捕手で嶋基宏(現・東京ヤクルトスワローズ)、二塁手で高須洋介、外野手で磯部公一と鉄平、そして指名打者で山崎武司(両リーグ最多得票)といった面々である。想定外の事態に、当時チームを率いていた野村克也監督が「オールスターダスト(=星くず)や」とボヤいたほどだった。

 肝心の試合は1回裏にいきなりイーグルスの選手が魅せる。当時38歳にも関わらず、前半戦で31本塁打を放った“おじさんの星”こと4番に座った山崎武司が先制の2ランをかっ飛ばしたのだ。7年ぶり3度目のオールスター出場となった山崎にとって、これが初のホームランというおまけつきであった。

 守ってはイーグルス期待のゴールデンルーキー・田中将大が全パの先発マウンドに。初回は3者凡退に抑えたものの、2回表に落とし穴が待っていた。読売ジャイアンツの阿部慎之助に痛恨の逆転3ランを被弾してしまったのである。結局、この回だけで6連打を含む7長短打を打たれ、6失点とプロの洗礼を浴びる形となった。

 試合はこのまま全セがリードを広げる展開となった。加えて雨が降りしきるなかの試合とあって、8回表の全セの攻撃中に降雨コールドが成立。全パは5-11で大敗を喫してしまう。これが三たびの珍事。夢の球宴史上初の降雨コールドゲームとなった。これによって割を食ったのがファン投票で選ばれたイーグルスの抑え・福盛である。第1戦で出番がなかった福盛は第2戦の9回表に登板予定だったが、出場なしに終わってしまったというわけである。

 そして3度目の開催となったのが11年7月24日、第3戦。この年の3月に発生した東日本大震災の復興支援の試合で、当初の東京ドーム開催分を振り替えて行われたのである。この試合の全パの先発投手は、北海道日本ハムファイターズの絶対的エース・ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)が予定されていた。ファン投票第1位で選出され、地元宮城県の強豪・東北高校出身なだけに妥当かと思われていたが、これに違和感を抱いたダルビッシュが、なんとも意外な行動に出たのである。イーグルスファンの気持ちに配慮して「ここは僕じゃない」とその座を譲ったのだ。

 このダルビッシュの申し出により、全パの先発はイーグルスの田中将大に変更され、全セの先発で仙台市出身のスワローズの豪速球右腕・由規との投げ合いが実現することとなった。地元の野球ファンにとって、これ以上ない豪華な対決となったのである。

 試合は1回裏に全パが稲葉篤紀(元・北海道日本ハムなど)の2ランで先制すると、その後も次々に得点を重ねていった。守っては先発の田中以下、8人の投手をつないで見事な完封リレーをみせ、5-0で快勝。その投手陣の中には2番手のダルビッシュ、4番手の摂津正(元・福岡ソフトバンクホークス)、抑えの岸田護(元・オリックス・バファローズ)と田中以外にも東北ゆかりの投手が3人顔を揃えていたのである(摂津は社会人野球のJR東日本東北出身、岸田は東北福祉大出)。

 負けた全セの先発・由規は稲葉に手痛い一発を浴びたものの、自身初めてのオールスターゲームのマウンドで躍動した。150キロ超えの豪速球を披露し、震災に沈む地元のファンを沸かせたのだった。

 仙台で開催される4度目の夢の球宴。果たして今回はどんなドラマが生まれるのだろうか。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年7月17日 掲載

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