メルセデス交代への大きな疑問 それにしても中田翔はよくない【柴田勲のセブンアイズ】

メルセデス交代への大きな疑問 それにしても中田翔はよくない【柴田勲のセブンアイズ】

先発するも5回で降板したC.C.メルセデス(巨人)

 巨人にとっては実に痛い引き分け、いや実質的には負けとなった。2試合連続逆転負けで迎えた5日の阪神戦(甲子園)、序盤で6点差をつけてリードしながら、阪神の追い上げにあって終わってみればドローだ。

 首位再浮上はならず、これでゲーム差は1.5のままとなった。伝統の一戦、確かに面白いゲームをやってくれたが、5日の引き分けはいただけない。直接対決の1勝は1.5勝と思っている。阪神はこの3連戦を2勝1分で、引き分けの0.5勝を引いて4勝分くらいの価値があったとみる。


■勝負の流れを阪神に渡した


 解せない点が二つあった。先発したC.C.メルセデスを5回限りで降ろし6回から継投に入り、そして6回の守備から坂本勇人を下げたこの2点だ。

 メルセデス交代には、思わず、「なんで代えるの?」と大声を出してしまった。普段、テレビの前では黙って観戦している方だが、この時ばかりは黙っていられなかった。原辰徳監督の采配が自軍に向いている流れを変えると思ったからだ。

 川上(哲治)監督はよく、「自分のチームに流れが来ている時は流れを変えるな。相手に流れが行きそうな時は流れを変える」と話していたものだ。勝負事の鉄則だ。

 メルセデス、5回を終えた時点での球数は69だった。被安打は5ながら1回1死一、三塁のピンチでジェフリー・マルテを遊ゴロ併殺打に仕留めるなど粘りの投球だった。5回には岡本和真の35号3ランが飛び出しており試合の流れは巨人に傾いていた。

 メルセデスの交代は勝負の流れを阪神に渡したようなものだ。中4日の先発だったが、勝ちたいから先発させたわけで、代えるなら例えば6回に1、2点を失ったとき、7回にスコアリングポジションに走者を背負ったときとかだったらわかる。流れを変えるからだ。

 中4日を考慮して5回までと話し合っていたのか、そこのところは不明だが、いずれにせよ勝ちたいと思っての先発起用で、球数が69ということを考えれば続投の一手ではなかったか。


■坂本は主将であり守備の要


 そして坂本だ。試合前に原監督やコーチに例えば腰の張りがあったとか、足がどうのこうのと言っていたのかもしれない。首脳陣にすればケガをされたら困る。大事を取っての交代だったのかもしれない。長期連戦中で6連戦の最終戦、東京五輪に出場して疲れがたまっていることも考慮したのか。

 だが坂本は主将であり守備の要である。阪神は2試合連続逆転勝ちをして勢いに乗っていた。そこに遊撃に入った若林晃弘、廣岡大志の二つのエラーが出た。野球にエラーは付き物ではあるが、チームの重しがベンチに下がった巨人とは対照的に、阪神に流れがグッと傾く結果になった。

 原監督、序盤で6点差をつけて、きょうはいけると判断したのだろう。メルセデス、坂本の交代が6点差を追いつかれた分岐点になった。

 それでも一方で、よく引き分けたと見る。9回、阪神はチアゴ・ビエイラを攻めて1死一、三塁とした。梅野隆太郎が打席に入ったがスクイズをやると思った。一瞬、連夜のサヨナラ負けが頭をよぎった。巨人は無警戒だった。

 でもビエイラはコントロールがいまひとつで荒れていた。球威もある。梅野は果敢に打ちにいって浅い右飛に倒れた。ビエイラ、その後2死満塁としたが近本光司を中飛に打ち取った。2試合連続失点していただけに、立ち直りのいいきっかけとなった。


■エースの菅野は本格復調


 それにしても中田翔はよくない。いや、ダメだね。打ちたい、なんとかしたいという気持ちが先走って手先だけで打っている。これでは速い球に詰まり、緩い球には泳ぐ。たまに打つのは真ん中あたりに入ってきた甘いスライダーぐらいで、いまは内角を徹底的に攻められて、外角のフォーク、スライダーといった変化球にやられている。

 バックスイングをもっと大きく、ゆったり取って投手のモーションに対して、球を迎え打つことだ。タイミングが取りやすくなる。自分のポイントに合わせやすい。

 岡本和はバックスイングをしっかり取っている。前に足が突っ込まず、右腰に重心が残り余裕がある。

 中田はまだ32歳、老け込む年ではない。パワーがあるし、打点王だって3回獲得している。これからだ。不振を脱出してほしい。

 エースの菅野智之が本格復調してきたのは大きい。1日のヤクルト戦(京セラドーム)で8回108球を投げて1安打8奪三振の好投で無失点、4月23日の広島戦以来の白星をつかんだ。単なる1勝ではない。勝負所の9月に入っての復調だ。復調が本物なら、今後の戦いに向けてこれ以上ない好材料だ。

 コントロールが良かったし、なによりも外角、それも低めへの球が多かった。どの投手も一緒だが、やはり外角低めは基本中の基本だと改めて思った。

 さて、巨人にとってこれからも厳しい戦いが続く。阪神は7日から甲子園にヤクルトを迎えての3連戦、星の潰しあいとなる。巨人は横浜でDeNA3連戦だ。下位にいても打撃陣は元気だ。決して侮れない。阪神ショックを吹き飛ばしてもらいたい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月7日 掲載

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