22安打12得点でまさかの敗北を喫した横浜…ファンが驚愕した“歴史的珍試合”

22安打12得点でまさかの敗北を喫した横浜…ファンが驚愕した“歴史的珍試合”

2004年7月30日、阪神相手に本塁打を放つ阿部慎之助(巨人)

 シーズン終盤に入り、V争いも白熱してきたプロ野球だが、時にはセオリーどおりにいかないのも野球の難しさだ。打線が大爆発しても勝つとは限らないし、超貧打にもかかわらず、まさかのビッグイニングをつくってしまう試合もある。長年数多くの試合を観戦してきたファンでも「こんなのありか……」と目を白黒させるような本当にあった珍試合を振り返ってみたい。


■「わからん。オレにはわからん」


 打線が22安打と大爆発しながら、まさかの敗戦に泣いたのが、2010年の横浜である。4月3日のヤクルト戦、1回表に5連打で3点を先制した横浜だったが、その裏、先発・藤江均が7点を献上し、逆転されてしまう。

 だが、横浜も2回に2点、3回に3点とノーガードの打ち合いに持ち込み、7回に下園辰哉、藤田一也の連続タイムリーで11対10と逆転に成功する。

 そして、12対11で迎えた9回裏、守護神・山口俊は、先頭の相川亮二に四球を許したものの、後続2者を打ち取り、2死三塁まで漕ぎつけた。ところが、代打・川本良平をカウント1-2と追い込み、勝利まであと1球となった直後、155キロ直球が真ん中高めに入り、左越えに逆転サヨナラ2ランを浴びる悪夢のような結末……。

 9回まで22安打を記録しながら敗れたのは、史上初の珍事とあって、尾花高夫監督も「わからん。オレにはわからん」と天を仰いだが、翌4日のヤクルト戦は、わずか3安打で、ヤクルトに2対1で雪辱。22安打で勝てないのに、一夜明けると、3安打で勝ってしまうのも野球の不思議さだ。


■オールシングルヒットで勝利


 奇しくも、横浜の3安打勝利の日と同じ10年4月4日は、パ・リーグの試合でも珍事が起きた。ロッテが19安打を放ち、オリックスに10対4と大勝したが、19安打のすべてが“単打”だったのだ。

 1回、井口資仁、サブローの安打で2点を先制したロッテは、3回にも5安打を集中して5点を追加。7対2の6回にも、井口の通算1000安打となる、ショートへの内野安打など3連打と犠飛で8点目。さらに7回にも4連打でダメ押しの2点を加え、計19本オールシングルヒットで勝利した。

 地道にコツコツ得点を重ねた“ピストル打線”に、西村徳文監督も「これだけ点を取れば、普通は長打がある。何とかつなぐんだという気持ちの表れでしょう」と満足そう。この日、9番・今江敏晃とともに3安打を記録した8番・里崎智也も「僕とゴリ(今江)に打たせたらダメですよ。全員つながっちゃいますよ」とニンマリ。

この時点でレギュラー9人中3割以上が6人と打線好調のロッテは、最終的にシーズン3位ながら、CSと日本シリーズを勝ち抜き、史上初の3位からの“下剋上V”を達成した。


■まさかの“無安打で4得点”


 今度は貧打をめぐる珍事である。

 09年の阪神は、5月7日のヤクルト戦から3連敗を喫し、ヤクルト戦の3回から25イニング連続ゼロ行進が続いていた。5月10日の横浜戦にも敗れれば、07年以来の最下位転落危機となったが、この日も阪神打線は1、2回と無得点に終わり、連続無得点記録は「27」に伸びた。
 
 だが、横浜に2点を先制された直後の3回表、先頭の赤星憲広が7球ファウルで粘り、四球で出塁したことがきっかけで、「世にも不思議な物語」が幕を開ける。

 関本賢太郎も連続四球で無死一、二塁、鳥谷敬の送りバントを小林太志が捕り損ねて満塁とチャンスを広げたあと、金本知憲の一ゴロをジョンソンが後逸して、一挙同点。敵失に救われる形で28イニングぶりの得点を記録した。

 さらにボークに乗じて逆転に成功すると、1死後、林威助の遊ゴロの間に三塁走者・金本が生還し、まさかの“無安打で4得点”となった。

 思わぬ幸運で勢いづいた阪神打線は、4回に33イニングぶりのタイムリーとなる関本の右前安打で5点目。6回に鳥谷、7回に狩野恵輔の一発も飛び出し、終わってみれば、12対4の大勝だった。

 真弓明信監督は「結果はそう(敵失で得点)だけど、(赤星、関本の)1、2番が粘って四球を取ったところから。やっぱり粘り強い攻撃なんだと思う」と勝利を引き寄せた両チャンスメーカーに感謝しきりだった。


■阪神対巨人の“超偶然”


 最後は、阪神対巨人の甲子園対決3連戦で本当にあった何十万分の一の確率とも言うべき“超偶然”を紹介する。

 まず04年7月30日の第1戦は、巨人が清水隆行、阿部慎之助の本塁打などで8対1と大勝。実は11年前の同じ日、巨人は阪神に8対1と同じスコアで勝っており、この日の勝利は「偶然の一致」と報じられたが、これは、ほんの序曲に過ぎなかった。

 翌日の第2戦、前日の雪辱に燃える阪神は、4回に福原忍のタイムリーで逆転し、4対3で勝利した。11年前の7月31日も、延長11回に八木裕のサヨナラ打で、阪神が4対3で勝っていた。2日続きの偶然はあまりにも出来過ぎた話だが、2度あることは3度あった。

 8月1日の第3戦、巨人はプロ初先発の佐藤宏志が7回途中まで無失点に抑え、3対1で逃げ切った。そして、11年前の8月1日も、8回にモスビーの決勝2ランが飛び出して、巨人が3対1で勝っていたのだ。

 同一カード3連戦で、日付も球場も勝敗もスコアも11年前とまったく同じになった……こんな偶然は2度と起きないかもしれない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年9月10日 掲載

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